第76話 まずはアマゾン大陸へ行かなくちゃ
オデッサに戻ってラミウス様へ事の顛末を報告した。
モンスターの戦術、統制役の存在、瘴気の事、漏らさず話した。
特に過去の話から、瘴気については最大の脅威であり注意が必要だと念を押して。
ひとまずの脅威は去ったんだけど、これで終わりじゃないのは明らかだし、その時対処できるかどうかが問題でもあると思う。
ロムリアの兵隊さん達も大打撃を受けた訳だし、短期間で再襲撃があれば大被害は免れないだろうし。
「うーん、ひとまずこれはトキワに応援要請をしないといけないかなぁ。」
「私達は南米大陸へ渡るつもりだけど、こっちも放ってはおけないね。」
「ねぇ、ラミウス様、イワセの討伐隊が到着するまで、私達が待機していた方が良いんじゃないかな?」
「いや、すまないけどディーナさん達にはカルメンへの対応を優先してもらいたいんだ。今の話だと、むしろあっちの方が危ない気がするんだよ。何より妹のナタリアが心配なんだ。」
「それはそうだけど……」
「こっちはこっちで何とかするさ。連邦各国の合同部隊を編成するなり、当面は凌げると思う。」
「でも、既に死者まででている状況だし……」
「で、あれば、だ。」
「ルナ様?」
「トキワへの応援要請と同時にマリューへも打診すべきだな。距離的には龍族の里の方が近いし2方向からの監視もできるだろう。」
「そう、ですね……」
そんな話をしていると、補佐官の一人が慌てて報告しに来た。
「大統領、ピラトゥス様がお見えになりました!」
「何?ピラトゥス様だって!?」
「え?ピラトゥスお母様が?」
もう一人の補佐官に案内され、ピラトゥスお母様とティアマトが執務室に入ってきた。
モンスター討伐に出る時の完全武装状態だ。
「ティアマトまで?」
「へへ、姉さん達、応援にきたよ!」
「まぁ、トキワからの依頼だよ。わらわとティアマト、あと龍族の討伐隊を連れてきた。」
「おお、ピラトゥス様、ご機嫌麗しゅうございます!それに、ご足労頂き申し訳ありません。」
「なに、こちら方面の脅威度が高まっているとは聞いていたし、元々来るつもりでいたのでな。」
「お母様……」
「実はな、モンスターの出現情報はほぼリアルタイムで監視しているんだ。無線での連絡網はほぼこの大陸を網羅しているからな。」
「それって、イワセの領事館に逐一情報が行っているってこと?」
「いや、直接われら討伐部隊の本部に全て入ってくる。」
「そういえば、私達って自分の所の組織編制って考えてなかったよね?」
「そ、そうだね。自分のウチの事なのに……」
「あはは、わらわ達もしっかりお前達に聞かせていなかったしな。もともとシャヴィを筆頭に編成された討伐隊なんだがな。」
「姉ちゃん達はそれとは別の遊撃隊だからね、管轄が違うっていっても良いから仕方ないけどね。でも……」
「うん、そうだな。連携は必須だったはずだな。これは私も失念してたよ。」
「仕方あるまい。ルナはこの子達の世話で手一杯だからな。」
「すまないな、ピラトゥス。」
「それじゃ、私達は」
「そうだな、安心してカルメンへと行けるだろう。」
これ以上ない援軍がロマリア連邦周辺を担当してくれることになった。
各国からの増援ももうすぐ到着するだろうし、他方面はシャヴィお母様や私のお母様などがそれぞれ対応するらしい。
ならば、私達は急ぎ南米大陸へと渡るべき、よね。
「ときに、ディーナさん達は南米まで船で?」
「いえ、直接飛んでいこうかと。」
「へ?」
「私が龍に変化してね。洋上飛行なら経験あるし早いしね。」
「おお、シャルルはそれができる様になったのか?」
「あ、でもまだお母様達程じゃないです。ディーナの補助なしだと厳しいですもの。」
「それでもさ、龍形態になれるだけでも凄いよなシャルル姉さん。」
「という事で、だ。私達はこのままカルメンへと飛ぶ。急ぐ必要もあるしな。」
「も、もう行かれるんですか?」
「いや、さすがに今すぐという訳にはな。明日早朝にでも出よう。いいな、二人とも。」
「「 はい! 」」
こうして物資の補充を済ませ、夜はちょっとした晩餐会となった。
ラミウス様とピラトゥス様、ティアマトは飲んで騒ぎつつもロマリア周辺の重要箇所の確認をしていた。
こういう所は飲んでいてもさすがは大統領と龍族の姫様ってところよね。
早朝。
準備万端で大統領官邸の庭に出た。
「忘れ物はないか?」
「大丈夫です、お母様。」
「なぁ姉さん、本気で飛んであっちまで行く気なのか?」
「そうだよ。ま、初めてじゃないしね、大陸間飛行って。」
「それにアトランタならパシフィカより距離は短いしね。」
「燃料も満タンなんだ。問題ないだろう、な、シャルル。」
「ルナ様、それは言わないで……」
「ははは、すまんな。まぁ、心配しなくても良い。もはやピラトゥス並みに飛べるからな。」
「そうだな、立派になったもんだ。今の姿を見ればシャヴィも喜ぶだろうな。」
すでにシャルルは龍形態になっている。
荷物も例のバッグに全て詰め込んであるので至って軽装だ。
「あ、そうだった、忘れる所だった、ディーナさん、これを。」
「ラミウス様、これは?」
「カルメン国王宛の書簡だよ。これを渡せば色々と便宜を図ってくれるよ。」
「ありがとう、ラミウス様。」
「それと、だ。お前達すまないがあちらの大陸の情勢を可能な限り調べておいて欲しいんだ。」
「お母様、わかりました。それじゃ。」
「行ってきます!」
「ルナ、ウリエル、すまない、二人を頼んだぞ。」
「ああ、心配するな。」
「任せとけよ。」
私達は気合を入れ直してオデッサを飛び立ったんだ。
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