第68話 真実を話そう、とルナ様は言った
「シャルル!大丈夫!?」
「キュウゥー……」
シャルルは空腹過ぎて目が回っている。
地表に激突はしたものの、空間魔法とシルフィード様、グノーメ様のお陰で私達にダメージは全くない。
ただ、シャルルの空腹が限界なので今ここで食事を摂らないといけない、かな。
すると
「な、なんだ!こりゃ!」
「あ、あれ?もしかして、ディーナ?」
「え?ルナとウリエルも?」
「てことは、君たち帰って来たのか?」
なんと、やってきたのはお父様とカスミお母様、ローズお母様、フランお母様、それに、サダコお母様?、それと知らないおじさんだった。
「あ、おと、タカヒロ様!」
「おや、貴様がなぜここに?」
「そりゃこっちのセリフだよ、というか、この大きい龍って……」
「あ、あの、その、シャルル、です……」
「へぇー!シャルルちゃんって、龍の姿になれるんだねー、シャヴィみたいだ。」
シャヴィって、シャヴォンヌお母様の事、よね。
という事は……
「ていうか、大丈夫なのか?シャルルちゃんも、ディーナちゃんも。すっげぇ音したけど?」
「あー、大丈夫だ。アタイらはここに墜落したんだよ。」
「墜落って……、ん?てことは南米からここまで飛んで来たのか?」
「ああ、満タンだったんだが少し燃料が足りなかったようだ。シャルルの、な。」
「な、なるほど……」
ひとまず再会を喜ぶ前に、シャルルの姿を元に戻して食事をする事にした。
食材はバッグの中にたんまりあるので、ここでキャンプメシの如く調理をする。
「あ、あれ、そのバッグって……」
「あ!こ、これは!」
「……すまんが、これは見なかったことにしてくれ……」
「ルナ、そ、そうか。わかったよ。」
お父様に見られてしまった。
ど、どうしよう。
(気にすんな、何とかなる。それよりシャルルのメシだ。)
(は、はい、ウリエル様。)
気を取り直してバーベキューの準備を進める。
と
「よし!俺も手伝うよ。皆も頼む。」
「そうね、なんなら今日はここでキャンプだね!」
「まだ昼時じゃがな。まぁ、こういうのも楽しいの!」
「肉、いっぱいある。嬉しい。」
そんなこんなで、お父様達も巻き込んでの山頂キャンプになってしまった。
「はー、いきかえるぅー……」
「アンタ、もう、口の周り。」
「むぐむぐ!あ、ありがとうディーナ。」
肉汁とタレで口の周りをべとべとにしながら、満足げなシャルル。
ひとまずはよかったよかった、よね。
と、みんなが満腹になり人心地着いたところで、お父様が聞いてきた。
「結局南米大陸には行けたんだね、行きの船旅も大変だったみたいだし、無事帰ってこれたのは良かったよ。」
「タカヒロはね、ずーっとあなた達の心配してたのよ。」
「ロ、ローズ、それは内緒に……」
「あはは、アンタの顔みたら内緒も何もないって、ねぇフラン。」
「そう。でも、私も心配してた。無事でよかった。」
「で、成果はあったのかい?」
「は、はい。あった、というか、何と言うか……」
「目的は果たせた、といって良いかもしれません……」
「そ、そうなのか。それにしては納得いっていないみたいだね。」
「そうです、ね。でも、事実が判明したのでこれで良かったように思います。」
「事実?」
「あ、そう言えば、タカヒロ様はなぜここに?」
「ああ、それは……」
聞けば、お父様は姫神子様とシヴァ様との邂逅まで果たしていたそうで、その折りに“月の欠片”の話を聞いたんだって。
で、この山にあるかも知れない、という事でここにやってきたんだそうだ。
シヴァ様に逢うまでに、魔界も龍族の里も通ってきて、そこで魔王様、お母様、シャヴォンヌお母様とも知り合い、今お母様とシャヴォンヌお母様は行動を共にしているんだって。
「で、ここに来る前にさしろ、ああ、あっちの小さい山に行ったんだけどさ、そん時にこの子とも知り合って、ね。」
「うむ?おぬしらはもしやタカヒロ殿の……まぁ、それは野暮か。ま、よろしくな、サダコという。」
「は、初めましてサダコ様!」
「よ、よろしくお願いします、サダコ様!」
「う、うむ、よろしくな……」
「で、この山、加波山の天狗のおっちゃんから、コレを受け取ったって訳さ。」
「これって……」
「これが、月の欠片?」
「ああ、そうらしい。ただ。まだ何に使うのかは分かんないけどな。」
「じゃあ、貴方様が、天狗のおっちゃん様?」
「あはは、おっちゃん様ってなぁいいな。ま、そうだ。まさかここで1万2千年ぶりにタカヒロに再開するとは思わなかったがな。」
つまりはここはジパングの、お父様の故郷の山で、お父様はこの世界の月の欠片を手に入れられたって事みたい。
それに
必要な、会うべき人との出会いもほぼ達成できた、という事みたいだ。
そうなると……
「なるほどな、貴様もすべき事は順調に進められたって事だな?」
「すべき事?」
「幸いここにアルチナとシャヴィは居ないしな。貴様には事実を明かそう。いいな、ディーナ、シャルル。」
「大丈夫なんですか?」
「私は良いと思いますけど……」
「事実って?」
一時の静寂の後、ルナ様はお父様に事実を打ち明けた。
「このディーナとシャルルはな、貴様の子供だ。」
「「「「 !!! 」」」」
「……やっぱり、そうなのか……」
お母様達は驚きで声もでない。
でも、お父様はなんとなくわかっていて納得したみたいだ。
「貴様には今、9人の女性が一緒に居るな。貴様はその者達を妻に迎える事になる。」
「え゛?」
「「「「 ええー!! 」」」」
「この後、さらに3人追加されるがな。まぁ、それは私達の世界での事だ。ここでの貴様はどうなるかは知らん。」
「し、知らんって……」
ルナ様は、まず私達の事、私達の世界の事を説明した。
包み隠さず、全てを。
12000年前の流星群衝突の事。
それによって地球が二つの世界に分かれた事。
お父様がこの世界に来て、ラディアンス王国を元に戻した事。
もう一つの世界を救った事。
そして、“コア”を封印した事。
「俺が、そんな事を?」
「ああ、事実だ。」
「だけど、この世界はそれとは全く状況が違うみたいだよな。そうなると、俺がここに居る理由って……」
「貴様はまた違う形で、この世界を最適化する事が使命なのだろう。この星の意思が、それを話してくれるはずだ。」
「この星の意思?」
「それはシヴァに聞くと良い。コンタクトを取ってくれると思う。」
「そう、なのか……」
「決してお前がここに居る事が無意味という事はない。むしろ、この世界に来たからこそ、意味が、すべき事が発生したんだと言える。」
「それって、俺がここに来なかったら……」
「形は違えど、人類は滅亡とまでは行かなくとも最悪な状況に陥る可能性もあっただろうな。」
「だけど、そんな大それた事、俺にできるのか……」
「あまり無責任には言えないが、可能性は非常に高いだろう。その為の力や知恵は、すでに手にしているはずだ。」
「なるほどなぁ……納得はできないけど、理解はできたよ。」
「そう言ってもらえると、私も少し安心する。」
「ところで、さ。」
「ん?」
「話の内容からすると、ディーナちゃんとシャルルちゃんはこの後生まれるとして、ウリエルは今偽勇者と居る、となると、ルナは今どこに?」
「話せば長くなる。ただ、端的に言えば私だけはこの世界に存在しない。」
「存在、しない?」
「ああ、もう一つの地球が存在しない以上、私はこの世界の過去にも未来にも存在しない。」
「それって……」
「私はもう一つの世界の、もう一つの地球で人間全ての敵として存在していた。そんな私を消滅させ、もう一つの世界に転生させてくれたのは、他でもない貴様なんだ。」
「……」
何と言うか、悲しい様な、それでいて納得したような、何とも言えない表情になるお父様。
真実を告げたルナ様も、同じような表情をしている。
「…なるほどな。わかったよ、でも、ルナ。」
「ん?」
「ごめん、言うのも辛かっただろうな。無理に聞いたみたいで、本当にごめん……」
「いいんだ。事実なんだ。それに、貴様には伝えたかったことでもある。」
「それでも、だよ。ごめん。」
自分の事でいっぱいいっぱいのはずのお父様なのに、そうやって他人の気持ちを優先するところは、やっぱり凄い人だったのね。
「さて、ここからはこの世界の事を話そう。私達が南米で見聞きした事と、それから考えられるこの世界の事を、だ。」
内容はともかく、お父様とこうして話ができるのが何よりも嬉しい。
その夜は皆話が尽きなかった。
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