第3章 修行の旅へ ~もう一つの世界編~

第31話 エルデ様の力で異世界へ行く事になりました

 デミアンを出て3日目の昼。

 無事、龍族の里に到着した。


 「ありがとうございました、マコーミックさん。」

 「ありがとうございました、あの、世界征服、頑張ってくださいね。」

 「あ、あはは、頑張ります。あなた方も、頑張ってください、応援していますよ。」

 「「 ありがとうございます。 」」

 「ウリエル様、ルナ様、お二人を、よろしくお願いします。」

 「お前に言われなくてもな、まぁ、任せろよ。」

 「貴様も道中気を付けて、な。」


 こうしてここまで私達を運んでくれたマコーミックさんとお別れした。

 なんというか、不思議な人だったけど、いい人?よね、たぶん。

 下車した大通りから、火山の麓にある城まで歩いていく。

 やはりここはあまり人間がいない。

 龍族、そしてその眷属の方たちが殆どで、それに混じってハーフの人が散見されるくらいだ。

 とはいえ、ここの人達もかなりフレンドリーなのよね。


 「おや?シャルルちゃんじゃないか。来てたのか?」

 「あ、オヤジさん、今きた所なんだよ。」

 「ディーナちゃんも一緒か。マリュー様の所へ?」

 「うん、ちょっと用事があって、ね。」

 「そうか、用事が済んだら来てくれよ。ご馳走するからな。」

 「うふふ、ありがと、オヤジさん。」


 ここに来ると必ず立ち寄る屋台の人だ。

 こんな感じで、ここの人達もデミアンと同じ、みんな親切で温かいんだ。

 わりと早めに龍王の城へと到着した。

 門ではマリュー様の側近の方が出迎えてくれた。


 「遠い所お疲れ様です、シャルル様、ディーナ様。さぁ、王がお待ちですよ。」

 「「 ありがとうございます、カナンさん。 」」

 

 マリュー様の側近筆頭であるカナン様は、小さい頃からよく遊んでもらった。

 とても美しい人で、実力はピラトゥスお母様に迫るほどらしい。

 でも、そんな事を感じさせないくらい優しくて素敵な方なんだ。

 直系のシャルルだけじゃなく、私にも同じように接してくれてたなぁ。

 そんなカナン様の案内で、マリュー様の所まで来た。

 マリュー様の私室だ。


 「お久しぶりです、マリュー様。」

 「お久しぶりです、大叔母様。」

 「うむ、ほんに久しいな二人とも、疲れたであろう、さ、座るがよい。」

 「「 はい。 」」


 歳など関係ないような、いつ見ても美しいマリュー様。

 本当は凄く厳しいお方だけど、シャルルやティアマトや私にはとても甘い、ってお母様達は言う。

 それに、お父様にもかなり甘く優しかったらしい。


 「うむ、久しぶりに見たが、二人とも見違えたな。エイダムの所でかなり厳しい修行をしたのであろう?」

 「はい。でも、まだまだ実力不足だと思います。」

 「そうじゃのう、おぬし達が為そうとしている事を考えれば、じゃがなぁ。」

 「ところで大叔母様、ここではどういった修行を?」

 「うむ、それなんじゃが、実はわらわ達がどうこう、という事ではなくてな、二人には別の空間で修練を積んでもらう事になるのじゃ。」

 「別の空間、ですか?」

 「それって……」


 ここにはいわゆる“聖地”がある。

 以前お父様がそこから異世界へと旅立ち、サダコお母様と出会い、連れてくる事ができた、言ってみれば異世界への扉だ。

 でも

 

 「大叔母様、でも、そこはかつてお父様が暴れて破壊したんじゃ……」

 「うむ、あの時は周囲の構造物を破壊したがな、神殿自体は無事だったのじゃ。」

 「そう、なのですか。でも、お父様はなぜそんな事を?」

 「そうか、聞いておらぬのか。まぁ、あ奴自身も話したくないのであろうが、いい機会じゃ、教えようぞ。」


 マリュー様の話では、その時に自分が元居た世界が壊滅したことを知り、錯乱状態になったんだって。

 自分の周りにいた人達全てを失ったと知ったお父様がそうなるのは、仕方がない事なのだろう、というのがマリュー様達の総意だったって。

 それにしても、人間どころか龍族が暴れたところで壊れるような建造物ではないはずの神殿が、いとも簡単に破壊されたというのがとても信じられなかったそうだ。

 そんな、自我を失ったお父様を取り押さえるマリュー様やお母様達も、信じられないけれど。


 「で、じゃ。その神殿から異世界へ行くにあたってはな、エルデ様が力を貸してくれるそうじゃ。」

 「エルデ様が?」

 「うむ、今回のそなた達の行動はな、エルデ様にとっても必要になるやもしれぬ、と仰せじゃったがな。」

 「私達が、必要?」

 「うーん、何というか、じゃ。そなた達のそういう行動というか、もはや運命と言っても良いのか、そんなところは父親そのままの様じゃのぅ。」

 「運命、ですか?」

 「かつてタカヒロ殿もな、まるで何かに導かれるように、次から次へと色々な事が起こって、それを一つずつ打開していった。その結果が今この世界なのじゃ。

 そう考えると、そなた達が今している事の一つ一つが、世界の未来へと繋がっているのかも知れぬな。」

 「……」


 お父様がこの世界へやってきてから、人を救い、国を救い、魔族を救い、星の危機を救い、コアを封印した。

 そんな一つ一つの出来事が全て連なって、今を形作ったんだ。

 それは私達家族だけじゃなく、かかわった者全てが知っている事、なんだけど。

 改めてそう言われると、確かに不思議な感じはする。

 でも、それでも。

 私達がそんな大それたことを成し遂げるとは思えないし、コアの事自体、星の消滅に比べればそれほど問題でもないような気もする。

 

 「とはいえ、じゃ、このままコアの封印が消滅すればどうなるかは明白ではある。故に、そなた達の決意、その意志は、タカヒロ殿と同じといっても良い。」

 「そう、かも知れません……」

 「ただ、じゃ。それをそなた達に頼らざるを得ないわらわ達は、少し情けないと思うのじゃ。」

 「マリュー様……」

 「それ故、こうしてわらわ達にできうる事は、何を置いてもすべきじゃと、わらわを含めた関係者全員が思っておるのじゃ。」

 「ありがとうございます、大叔母様。」

 「まぁ、そうでなくともわらわ個人としてはそなた達に何でもしてやりたいんじゃがな。ところで、じゃ。」

 「はい?」

 「ウリエル殿とルナ殿も一緒なのであろう?」

 「そうです。あれ?さっきまで一緒だったのに?」

 「居ない?」

 「まぁ、よいじゃろう。さて、今日の所は長旅で疲れたであろう、ゆっくり休むがよいぞ。明日一日で準備を整え、明後日に神殿へと向かおう。」

 「「 はい。 」」

 

 こうしてこの日はささやかな宴が催され、美味しい料理を堪能した。

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