第24話 特訓開始!


 試練の森に入って2日目。

 昨日は拠点を決めた後、さっそく体力増強のトレーニングと手合わせをした。

 夢中になって食事をするのも忘れ、疲れ果てて寝てしまったんだ。

 薄暗い森の中でも朝日が届いて、それに気づき目が覚めたのがついさっきの事。


 「うーん、おはよう、目覚めた?」

 「おは。ダルい。」

 「まぁ、そうよねー。寝ちゃってたんだね。」

 「ディーナ、お腹減ったよぅ。」

 「あー、ご飯も食べてなかったしね。じゃぁ、訓練がてら狩りでもしようか。」

 「そだね。さて、せめて歯を磨いて顔洗おうよ。」


 そう話した所で、早速襲撃者は襲い掛かってきた。

 寝起きで完全に体も目覚めていないので反応は遅れる。


 ピコン!

 スパン!


 また、叩かれてしまった。

 何とか除けて反撃しようとはしたのだけれど、体が付いてこない。


 「もー!また!」

 「悔しー!」


 昨日も夜までに3回程襲撃があったんだけど、全て叩かれて終わっている。

 進歩がないなぁとは思うけれど、うん、このままじゃダメなのはわかっているもの。

 精進するのみ、だよね。

 とはいえ

 ホントにこのままでステップアップができるのかなぁ。


 ひとまず身支度を整えた後、トレーニングを兼ねて狩りをし食料を調達した。

 早朝だったからか、野兎3匹を仕留め野草を集めて下処理を済ませて朝食を作る。

 とりあえずの空腹を満たして、食休みも程々にさっそくトレーニングを始める。


 「じゃあ、まずは走り込みだね。」

 「うん、あ、バラスト付けないとね。」


 ロープで括った石を背負い、走り込みを始める。

 その最中でも襲撃者は襲ってくると思うけど、ひとまずは木刀を持たずに走る。

 

 短期間でそんなに体力、持久力は身に付かないとは思う。

 でも、圧倒的に体力が足りないのは明白なのでこれは欠かせないんだ。


 一周2キロほどのサーキットを決めて、そこを走る。

 ひたすら走る。

 お日様が頂点に来るまで、延々と走りこむ。


 やっぱり、というか走っている最中でも、襲撃者は襲い掛かってきた。

 森中にピコン!スパーン!という音が何度も響く。

 でも

 走り込みの最中、疲労も限界に近いと思える状況で襲い来る襲撃者に対して、少しずつだけど反応できるようにはなってきたように思う。

 襲い来る時の気配、相手の武器の軌道、そして相手の隙、それらが何となくわかるようになったと思う。

 たぶん、気のせいかもしれないけれど。

 

 何しろ昨日始めたばかりなんだし、そんな急には変化も現れるわけもないよね。

 だけど、少しずつでも、前に進まないとね。

 とはいえ、攻撃を避ける事すら覚束ないのは、焦りを募らせるし何より悔しい。


 走り込みを終え、食事を摂って一休みした後は二人で戦闘訓練だ。

 他者の補助は禁止だけど、アドバイスは良いんだよね、きっと。

 だから


 (ほら!打ち込んで終わりじゃないぞ、次の動作も考えて繋げるんだ!)

 (イイですよ!今の受けはそのまま反撃に転化させるんです!)


 私達に宿ったままのフェスタ―様とムーン様が、的確なアドバイスをしてくれる。

 時にはシャルルの木刀が入ってとても痛いんだけど、それは反省点として体に蓄積しているように思う。

 シャルルも同じなんだろう、私の攻撃を受けても痛がりはするものの、怯むことは無い。

 次第に傷が増え血も流れ出し、青あざも増えていく。

 3時間程そうして手合わせを続けた。


 そのまま今度は瞑想の時間だ。

 傷だらけのまま、瞑想をする。

 目をしっかりと開け、それでいて思考を無にし、呼吸を深く、ゆっくりと行う。

 これはお父様がかつて姫神子様に教えてもらった訓練方法を聞いたのを、少しアレンジしたものだ。


 瞑想している最中も、襲撃者は襲ってくる。

 でも、この時は私達は身動きはしない。

 思考を無にした状態で、相手の動きを捉えて理解し、攻撃はそのまま受ける。


 襲撃者はここぞとばかりにピコピコハンマーとハリセンを連打するんだけど、なぜか叩くのを躊躇する時があった。

 無反応なので呆れたのかな。


 瞑想を終えて治癒魔法で傷を治し、水浴びをしたのちに夕食。

 そして、その後はまた少し走った後に手合わせだ。


 これらが終わるのは、もう日付も変わる頃。

 そして、疲れ果てたまま歯を磨いて寝る。


 これを、残り8日間のルーチンにするんだ。




 ―――――ちょっと離れた木の上。


 「なぁ、お前、今日何発やられた?」

 「オレ、5発入れられたな、見ろよこれ、青あざになってるぜ。」

 「俺は6発だよ。やっぱり青タンになってる……」

 「なぁ、あの方たち、反撃はしてなかったよな?」

 「してないのかどうかは判らん、けど、しなきゃこうはならんだろう。」

 「なんというか、おっかねぇな……」

 「瞑想中のアレ、本気で戦慄したぞ、俺。」

 「オレも、ちょっとビビった。」

 「まぁ、明日までは俺ら二人で、だからな。おっかねぇけど、続けるしかねぇよ。」

 「というかだ、段々と痛くなってくるんだけどなぁ。」

 「エイダム様直轄の俺ら相手に、だもんなぁ。」


 「とりあえず、今日はあと1回寝込みを襲って退却だな。」

 「お前、寝込みを襲うって……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る