第20話 実力推量で方針決定?

 魔王城の正門前まで来た。

 ここは今ではテーマパークも兼ねた公共の施設なんだ。

 実質の行政府は城の裏手にあるので、私達は裏手に回り裏門の前へと来た。

 するとそこには


 「いらっしゃい、ふたりとも。久しぶりですね。」

 「エヴァ叔母様!」

 「エヴァ様!」


 エイダム叔父様の妻であるエヴァ叔母様がお出迎えしてくれた。

 久しぶりに見るエヴァ叔母様、やっぱり綺麗ね。

 というか、出迎えてくれるなんて、何か申し訳ないなぁ。


 「お久しぶりです、叔母様。」

 「お久しぶりです、エヴァ様。」

 「あら?二人とも、ちょっと変わったかしら?」

 「え?」

 「何か、大きくなったというか、逞しくなったというか……」

 「そんな事ありませんよ叔母様、久しぶりだから、じゃないかな?」

 「そう?まぁ、元気そうで何よりだわ。さ、魔王様がお待ちかねですよ。」

 「「 はい。 」」


 エヴァ叔母様の後について、通称“魔王の間”へと進んでいく。

 魔王の間は一般人の立ち入りは禁止されている、エイダム叔父様が執務する部屋だ。

 叔母様と話をしながら歩いていると、あっという間に部屋の前に着いた。

 部屋の扉が開いた途端に


 「ディーナ!シャルル!会いたかったぞ!」

 「叔父様!」

 「魔王様!」


 二人纏めて、力強く抱き締められた。


 「お、叔父様!」

 「魔王様?」

 「おお、おお、たくましく、そしてさらに可愛くなったなぁ!」

 「えーっと、前に会ってからまだ3年しか経っていませんよ。」

 「そ、そうか。」


 手を離した叔父様は、私達を来客用のソファへ座るよう促して対面に座った。

 秘書の人かな、“ペッパー医師”とお菓子を出してくれた。


 「いやぁ、二人に会うのを楽しみにしておったぞ。」

 「叔父様、今回は手を煩わせてしまってごめんなさい。」

 「魔王様、すみません。」

 「良いのだよ、というかだ、他ならぬアルチナの頼みだしな。シャヴィ殿からもお願いされたしな。」

 「「 す、すみません。 」」

 「あはは、そういう謙虚な所はやはりアイツと同じであるな。それで、だ。」

 「「 はい。 」」

 「力を付けたい、という事であるな。」

 「そう、です。」

 「まぁ、その理由も聞いてはいるが、我の気のせいか、わざわざ修行しなくても二人とも既に相当強くないか?」

 「あ、あの、力は備わっているとは言われましたけど、その力の解放というか、使い方が出来ていないって……」

 「ん?ああ、そういう事であるか。そうなると、だ。」

 「魔王様、ひとまず現状把握が必要ですわね。あそこで。」

 「そう、であるなぁ。」

 「あそこ?」


 「わが魔王軍の鍛錬場があるのだが、その裏山には試練の森、というのがあるのだ。」

 「試練の森?」

 「うむ、軍に加入する前の候補者の実力把握と振るい分けする為の、いわば試験場であるな。」

 「試験場ですか?」

 「そうである。ちなみに、二人の兄トキワが一度そこを破壊してしまったのだよ。あの子はやはりアイツの血を強く引いているのであるな。」

 「破壊って……」

 「とはいえ、である。お前たち二人は、潜在的にはその上をいくであろう。我が見てわかるくらいだ、間違いない。そうであろう?ルナ殿?」

 「まぁ、な。」

 「ルナ様、何時の間に?」

 「今回は今まできちんと気配は消していたぞ?」

 「いや、きちんとって……」

 「とはいえ、である。それだけの力を出せない、使えないというのは、やはり問題であろう。お前たちが成そうとしている事を考えれば、特にな。」

 「はい。」

 「という事で、である。まずは二人の力が、今どの程度かを我も把握しておくべきであるな。しかるに。」

 「「え?」」

 「一休みした後で、我と手合わせをしようではないか。」

 「叔父様と!?」

 「魔王様と!?」

 「なに、我は手を出さぬ、その代わり二人は全力でかかってくるがいい。あくまで推量の為である。」


 こうして、私達はエイダム叔父様と手合わせをすることになった。

 ちょっと、というか、かなり怖いんだけど。

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