第16話 決まった事に異論はないでしょう?
「納得いかない!敗者復活戦を要求する!」
やっぱりというか何というか、ネージュは駄々をこね始めた。
実力としては、ネージュは兄弟姉妹の中で魔法能力は断トツの実力者ではある。
何しろ、シヴァ様直系の子でお父様の血を引いているんだもの。
ネージュそのものが、精霊を宿したお父様そのものと言ってもいい。
でも。
「まー、ネージュの気持ちはよく解るんだ。でもな、その、お前に封印は無理なんだよ。」
「トキワ兄様、なんで?」
「なんでって、お前の魔法は攻撃魔法特化型だろ?治癒の魔法とかその他は、てんでダメじゃん。」
そう、今の所ネージュの魔法は攻撃魔法だけしか身についていない。
ただ、それは今だけの話でゆくゆくは雪子お母様やシヴァ様と同じく、全ての魔法を取得できるはず。
戦闘経験とかは私達と同じで殆ど無いから、いかに強力な魔法でも適切な使い方をしないとその利点も活かせないんだって。
「ぶーぶー!」
「あはは、そうムクれんなよ。それもあるけどお前に危険な事はしてほしくないってのが一番の理由なんだからさ。」
「えー、危険じゃないよぅ。」
「ま、他のみんなもそう思ってるし、だからこそ、ディーナとシャルルは決意したんだよ。」
「でもでも、それじゃディーナ姉とシャルル姉が危険なんでしょ?私はそれが嫌なの!」
「ネージュ……」
結局のところ、考えている事は皆同じってことなんだろうね。
特にネージュは、シヴァ様、雪子お母様の意志も直結しているから、みんなを守りたいと思う気持ちも兄弟姉妹の中では一番強いんだろうな。
だって、お父様の記憶全てを、雪子お母様経由で受け継いでいるんだもの。
「まー、そういう訳で、じゃ。これで皆の総意は揺ぎ無いものになった、という事じゃな。」
「サダコお母様……」
「で、じゃ。」
「そうですね、あなた達がこれからすべきことは、私達母親と同じです。ディーナとシャルルを、可能な限り補助する事に全力を注ぐべき、です。」
「でもサクラお母様、補助っていったって、何をどうすればいいの?」
「ディーナとシャルルが、帰ってきた時に安心して寛げる、英気を養える場所を守る事、ですよ。」
「じゃぁ、ここで……」
「ただ場所を確保するだけじゃありません。せめて、このイワセ温泉郷周辺のモンスターは全て私達が対処して安全を守る事、も1つの役目でしょうね。」
「という事は……」
「あなた達にも戦いの基礎を叩き込む必要がある、という事です。」
「!!」
全員、とても驚愕している。
私とシャルルは、魔王様と龍王様の下で修業をするんだけど、お母様達の扱きはある意味それよりも怖い、らしい。
トキワお兄様とヒバリお姉様は、それを一番理解しているみたいだね。
笑顔が引きつってます。
「政務を行いつつ、私、リサお母様、アルチナお母様、シャヴォンヌお母様、フランお母様、ピラトゥスお母様、で、あなた達を鍛え上げます。」
「……は、はい。」
「せめて、モンスターを相手に怪我をしない程度には実力をつけませんと、ね♪」
そう言って、にっこりとほほ笑むサクラお母様。
こういう時のサクラお母様の笑顔は、とっても怖い。
そんな騒ぎも落ち着いて、シャルルとギニーとで部屋で寛いでいると
「ちょっと、いいかな、お姉ちゃん達……」
「ネージュ、どうしたの?」
「あの、その……」
さっきまでの駄々をこねていたヤンチャな様子じゃない。
あー、これは、あれ、だね。
ホントにもう、素直じゃないんだから。
「ネージュ、ありがとうね。ネージュの気持ちはちゃんとわかっているよ、だから、安心してね。」
「ディーナ姉……」
「そうよ、あなたのその想いも背負って、その上で決めた事なんだから、ね。」
「シャルル姉……」
「ネージュ、みんな気持ちは同じなの。だから、あんただけ気に病む必要はないんじゃないかな?」
「ギニー姉……」
すると、ネージュは大粒の涙をこぼしながら
「ごめんね、お姉ちゃん、私が、私がもっと強ければ、もっと力があれば!うえぇぇぇぇん!」
痛いほどよくわかるネージュの気持ち。
でもね、その気持ちだけじゃダメだったっていうのは、痛感したばかりなの。
だからこそ、あなた達にはやっぱり封印の役目はして欲しくないんだよ。
それに
「ネージュ、あのね、その想いは、これからは私達じゃなくて、世界中の人々へと向けて欲しいの。貴女はそれができるはず。それが、貴女の役目のはずよ。」
「グスッ、ディーナ姉……」
「私達お父様の子は、お父様の意志を継いで世界を守る事が役目だって、そう思うの。だから、ディーナも私も、決断したんだよ。」
「シャルル姉。」
「ま、あんたと私も、これから厳しい修行が待っているんだからさ。まずはそれに向けて気持ちを奮い立たせないと、ね?」
「う、うん。そうだね、ありがとう、ギニー姉。」
ちょっと泣き虫な所は、ちゃんとお父様を継承しているのね。
他人の為に涙を流せるっていうのは、それだけで充分、お父様の意志を継いでいるってことなんだろうね。
そんな所は少し、羨ましい、かな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます