第15話 兄弟姉妹で対決するのは楽しいかも


 朝食後、別館の大広間に兄弟姉妹皆が集合していた。

 とはいえ、マスミお姉さまとヘレン、ティアマトは帰っていったので今は居ない。

 そこに、サクラお母様とサダコお母様も加わっている。


 「さて、みんな集まったな。」

 

 トキワお兄様が話し合いを始めた。


 「まぁ、ディーナとシャルルが帰ってきたのはタイミングが良かったと言えるけど、さて」

 「トキワ兄、俺からいいかな?」

 「ハーグ、いいよ。」

 「えーっとだな、ディーナとシャルルがコアの再封印をしたい、というのはよくわかるんだ。」

 「ハーグお兄様……」

 「でもなぁ、それをできるのって、何も二人だけじゃないと思うんだよ。俺達にも可能性はあるんじゃないかって、な。」

 「でもでもハーグ兄様、力だけで言えば私が一番だと思うの。だから、それは私が!」

 「ネージュの魔力は、確かに俺たちの中では抜きん出ている。けどな、こと対モンスター戦や封印となると、な。」

 「えー、イケると思うんだけど!」

 「だけど、実際闘いってなると、、ディーナ姉様もシャルル姉様も含めて、みんな同じくらいじゃないかな。」

 「メグの目から見てもそうだ、というなら、実際そうなんだろうな。ハーグはまぁ別格としても、だ。」

 「まぁ、俺は魔法はてんでダメだからなぁ。」

 「つまりだ。」


 トキワお兄様は、皆が静まるのを待って一言。


 「ここに居る全員が、再封印ができる可能性を持っている、かも知れないってことだな。」

 「そ、そうなのですか?トキワお兄様?」

 「いや、あくまで可能性の話だ。」

 「潜在能力、というか、真の力に関して言えば、ディーナとシャルルが飛びぬけている、とは思うの。でも」

 「スペリア姉様?」

 「トキワ兄とヒバリ姉、私とギニー、ヘレン以外は、私からすれば遥かに人間を凌駕していると感じるのよ。」

 「それは、まぁ、そうかも知れないけどね。」

 「とは言っても、俺はトキワ兄と手合いしても、トキワ兄に一度も勝ったことないけどな。」

 「トキワお兄様はぶっちゃけお父様の一番弟子でもあるし、ねぇ。」

 「それで言えばアドニスもかなりの強者だけどな。ハーグとアドニスの強さは拮抗してると思うぞ。」

 「ねぇ、それで結局、強さで再封印の役目を決めるの?」

 「結花、ある意味ではそうなんだけど、膂力だけじゃたぶん解決しないと思う。それに……」

 「それに?」

 「単純な力だけでも、事は進まない、とも思うんだ。いわゆる戦略眼も必要なんじゃないか、ってね。」


 そんな喧々諤々の様子を見ているサクラお母様とサダコお母様。

 少し呆れ気味にも見えるけど……


 「なぁ、サクラよ。何となくじゃが、この子達は少し目線がずれて来てはおらぬか?」

 「え、ええ、そんな感じではありますが、もう少し様子を見守りましょう。みんな真剣な事には変わりありませんもの。」

 「うーん、まぁ、主様に似て賢しらな子達じゃからな、何か考えがあるんじゃろう、きっと。」


 ひとしきり言い合った後、トキワお兄様が纏めとばかりに意外な事を言った。

 

 「てことでだ、皆の実力を推し量る為に、全員総当たりで勝負しようじゃないか!」


 全員、その場で固まった。

 

 「………のう、サクラ……」

 「え、えーと……」

 

 困惑する私達を他所に、トキワお兄様は話を進めてしまう。


 「勝負は一対一での総当たりだ。勝ち星の数が一番多い者が勝者だ。上位2名が、封印を行う。いいか?」

 「ちょ、ちょっとお兄様!勝負って!?」

 「それなら誰も文句はないだろう?」

 「で、でも私達で戦うなんて……」

 「闘いなんて、私は……」

 「あー、何もドツキ合いするって訳じゃないぞ。そんなものは兄弟げんかだけで充分だ。」

 「じゃ、じゃあ、何を?」

 「これで勝負だ!」


 トキワお兄様が取り出したのは、リバーシ、という盤ゲームだ。


 「……お兄様?」

 「さっきも言ったろう?単純な力だけじゃダメなんだ。戦術、戦略といった頭脳も必要なんだよ。」

 「とはいえ、何故これ?」

 「まぁ、そんなに時間をかける気はないし、これでもかなり先見の明が必要な頭脳戦なんだぜ?」


 何となく、だけど。

 トキワお兄様は単純に皆を納得させることが目的のような気がする。

 私とシャルル以外で事を成す可能性がある者はいない、とはトキワお兄様本人が、私たち二人に言った事なんだし。

 でも、これで私とシャルルが負けたらどうするんだろう?


 「あー、サクラよ、トキワはあれじゃの、ホンに主様のお子じゃの。」

 「え、ええ。す、少し無理やりな気もしますけどね……」


 「丁度いい事に、母さん達が居る。審判をやってもらおう。ちなみに、俺とヒバリは棄権だ。」


 こうして、何故かゲーム大会が開催されることとなった。

 で、その日の夕方。


 「な、なんでぇー?」

 「結局、こうなるのね。」

 「ま、こうなった以上、俺はもう何も言えないな、うん。」


 シャルルが優勝、私が準優勝という形で戦いは幕を閉じたのだった。

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