第208話 シオウの技。
10メートル程離れた位置に居るシオウを俺は、魔眼で確認する。
これはシオウが分身かどうかの確認だ。
魔力の状態からして本体だな。
「良いぞ、いつでも来い」
「馬鹿だね」
そう言うと姿を消し、一瞬で懐に現れると右拳を腹に打ち込んで来たので、腕で受け止めるが奴の拳が止まる事なくめり込み、腕の骨を折りながら力まかせに振り抜かれ吹っ飛ばされる。
「うおっ!?」
弾丸のように飛ばされながら体内に印を書き、腕を治すと回転して着地し、暫く滑って止まった。
今の攻撃、ただ力が強い訳じゃないな。
「へ~、腕を弾き飛ばすつもりで殴ったのに、折れただけとはかなり鍛えてるね」
「まあな」
魔力の流れは何も変化は無かったって事は、マナを使ったのか?
だとしたらかなり制御が上手い。
これは面白いね。
奴の攻撃の謎を解き明かしてやろう。
「じゃあ次は俺が……っ!?」
またも姿を消すと目の前に姿を現し、蹴りを放って来たので咄嗟にしゃがんで避けると蹴った勢いのまま回転し、逆の足で更に蹴りを正面から打ち込んで来たので腕をクロスして受け止めながら溜気を放つ。
その瞬間、腕と足の間から衝撃波が発生し、互いに弾かれる。
すぐさまバック宙して衝撃を逃がして着地。
シオウも回転して着地してる。
「はは! まさか君も僕と同じ『
「ましょう? 何だそれ?」
「今使ってただろ?」
溜気の事か?
別の呼び名があるとはな。
まあ、俺だけが使える技って事でもないがしかし……。
「さっき殴った時もその魔衝を使ってたのか?」
「あれ? 同じ流派と思ったけど違うみたいだね。でも魔衝を他の流派で使ってるのは聞いた事が無いけど……」
「俺が使ったのは溜気だ」
「溜気? 何それ?」
「知らないが、魔衝みたいな技だろ?」
するとシオウは少し考えてニヤっと笑いながら口を開く。
「……そうか、似てるけど違うようだ」
「答えろよ。殴った時も魔衝を使ったのか?」
「いや、あれは『
魔獣?
いや意味分からん。
ただ殴られた感覚では、かなり重い拳だったのは確かだ。
重い?
あっ、魔重か。
つまり重力系?
とにかく溜気とはまったく違う系統だな。
なるほど、確かに奴が言うとおり、これは面白い。
似てるのにまったく違う技。
溜気をもっと進化させられる。
俺は縮地で、考え込んでいるシオウの目の前に移動し、左拳を打ち込みながら溜気を発動。
シオウは手で拳を払おうとするが弾かれ、そのまま腹に拳がめり込み、奴を吹っ飛ばす。
これは今までの使い方と違う。
今までは攻撃が当たる瞬間に溜気で弾いていたが今のは、弾く力を纏った状態の拳を打ち込んだので触れようとした奴の手が弾かれたのだ。
だがこれだと殴った時、弾く力が半減してしまう。
魔重……溜気に重力属性を付けるとどうなるんだろ?
そう言えば今まで属性は付けた事ないな。
さっそく試そう。
吹っ飛んだシオウは、1度地面に叩き付けられるがすぐさま手を突いて跳び上がると着地。
どうやらダメージはそれ程無いようだ。
「すごいな。防御不可の攻撃か」
「ちょっといろいろ試させてもらうぞ」
「僕も試させてもらうよ」
そう言ってお互いニヤっと笑みを浮かべる。
魔重は、防御ごと相手を破壊する程の重さがある攻撃。
魔衝は、溜気のような攻撃だろう。
俺の溜気は、相手の防御ごと吹っ飛ばす攻撃なので、衝撃を逃がしやすい。
しかし魔重は、引いてもあの重さが迫って来そうなんだよな。
そこでシオウが地を蹴り、物凄い速さで迫り、右拳を打ち込んで来たので下がりながら左手で受け止めると、やはり手の骨が折れてしまうが、腕に衝撃は来なかった。
更に距離を詰めて来ると蹴りを放って来たので、右腕でガードしながら溜気でパンッ!! と弾き、回転回し蹴りを奴の脇腹に打ち込むと同時に、重力属性の魔力で溜気を発動。
すると奴の身体が横へくの字になりながら吹っ飛んで行く。
足がめり込んだ時、骨を何本か折った感触がある。
だが感覚的に奴の魔重とは違う。
まあ、別に同じにしなくてもいいんだけどね。
まだまだ改良出来そうだ。
吹っ飛んだ奴は、地面を転がると途中で体勢を整え片膝を突いた状態になり、腹に手を添えて回復しながら立ち上がる。
「まさか蹴りで魔重を使う奴が居るとは思わなかったよ」
「今のが魔重になるのか微妙だが、良い技を見せてもらった。お陰で更に強くなれる」
「フフフ、久しぶりに全ての技を試せそうだよ」
「俺もまだ試したい事があるから終わるなよ?」
「こっちのセリフだね。これに耐えられるかな?」
奴はそう言うと、治療が終わったのか腰を落として前屈みになるとその場から姿を消し、俺の右側に姿を現すと同時に顔面目掛けて蹴りを放って来たので、屈んで避けるとまたも回転して逆の足で真っ直ぐ蹴り込んで来る。
同じ手は通用しないぞと思いながら、身体を逸らして避けると一歩踏み込み、奴の顔面へ右拳を打ち込むが奴の左手によって逸らされ、腕を掴まれ引っ張られると右膝蹴りを腹に打ち込まれてしまう。
その瞬間、腹に違和感を感じた。
更に背中に肘を入れられるがそれにも違和感。
肘を入れられた反動で身体が仰け反り、身体を起こしたところで腹に蹴りを打ち込まれ吹っ飛ぶ。
この間約2秒。
吹っ飛ばされた俺は、地面に何度か叩き付けられた所で手を突き跳び上がると着地して体内に印を書き、傷を回復させながら服を捲って腹を見るとそこには、蹴られた跡がくっきり残っていたが、回復と共にすぐ消える。
今の攻撃は何だ?
魔衝でも魔重でもない別の何か。
殴られた時、蹴られた時のあの『熱さ』はなんだ?
身体の中が一瞬熱くなった。
手で逸らされた右手も、かなり熱い。
……火属性の魔力を流した?
ガードしても攻撃を受けても、体内を燃やす。
これこそ防御不可じゃん。
「面白い攻撃だな」
「でしょ? ガードしてもダメージは受ける。いずれ体内は黒焦げになるよ?」
そう言いながらニヤっと笑うシオウ。
溜気や流気に属性を付けるだけでこうも変わるんだな。
制御の訓練に夢中で忘れてた。
今後はいろんな属性に変換させるのも、訓練に取り入れよう。
可能性はまだまだ広がるね。
そこでロンが準備していた力を解放。
「あの馬鹿、使うのが早いだろ」
「俺を殺すために準備したんだって?」
「君だけじゃないさ。この場に居る全員を殺すためだよ」
「組織の連中も殺すとはねぇ」
「僕達の役に立って死ねるなら、十分生きて来た価値はあると思うけど?」
はぁ~、裏の忍びってやっぱ理解出来ないな。
「よし、面白い技を見せてもらったお礼に、今まで体験した事のない苦しみを味わわせてやろう」
「それってお礼になってるのかな?」
「決闘の邪魔をしたお礼だ」
「なら僕も、僕達の邪魔をしたお礼をしてあげるよ」
さてと、ギンジの戦いを見て試したい事があったんだよな。
これが上手くいけば、かなり強力だぞ。
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