第207話 絶空。
サスケさんとロンの戦いが始まる少し前、本体の方でも戦いが始まろうとしていた。
「俺を殺しても問題無い? 勘違いするなよ? 俺が楽しむために手を抜いてただけで、あのギンジって野郎にも負けてない。こいつに邪魔されただけだ」
「危なかったと思うけど?」
あっ、威圧はもう解いてるぞ。
「とりあえずやるか、同時に2人で良いぞ。雑魚が2人居ようが変わり無いしな」
「調子に乗り過ぎだね」
「待て、俺がやる。次は絶対手を出すな」
リュウゼンにそう言われて肩をすくめ、離れるシオウ。
するとリュウゼンは、忍換装して忍者姿になる。
「手加減無しでいく」
「はいはい、お好きにどうぞ、手加減してもしなくても、結果は変わらん」
リュウゼンは、何も答えず少し間を空けると一刀領域を展開させ、素早く移動して前に姿を現し、直刀を抜きざまに振り下ろす。
が、奴の刃が当たる直前、溜気で弾き腕が上がった瞬間に、腹に蹴りを入れ、深撃でこちらに引き寄せ、顔面を含む上半身に1秒間に数十発の拳を打ち込み、最後は腹を殴って吹っ飛ばした。
「どうした? その程度か?」
吹っ飛んだ奴は、身体を回転させ何とか着地し、数メートル滑って止まると片膝を突き直刀を立てて身体を支える。
「っ……なぜ斬れない? 領域に入った者は、必ず斬れるはず」
「簡単な話だ。俺も展開して相殺させただけ、特別な事はしてないぞ。ほら、さっさと立て、まさかこれがお前の本気か?」
ダメージを回復させたのかスッと立ち上がるリュウゼン。
「思ったとおりお前は強い、これなら全力を出しても問題は無さそうだ」
「全力を出す前に死んだら面白くないもんなぁ」
「安心しろ、次で終わらせる」
「それは楽しみだ」
すると奴は、突っ立ったまま呟く。
「絶空」
その瞬間、周囲の景色が白黒になり、何かが全身に纏わり付くような感覚に襲われる。
ぜっくう?
ゼロみたいなユニークスキルか?
どんなユニークスキルか気になる。
しかも俺以外の時間が止まってるようで、全員固まった状態だ。
サスケさんとロンも止まってるし。
分身との感覚共有も止まってる。
……ぜっくうは『絶空』って意味か。
空間を断絶してる?
だから周囲の時間が止まってるのかも。
周囲を警戒してると離れた場所に立つリュウゼンの声が、耳元で聞こえてきた。
『終わりだ』
咄嗟に横へ跳び距離を空けるがそこには誰も居ない。
リュウゼンは変わらず離れた場所に突っ立ったままだ。
次の瞬間、左腕が熱く感じると肘から下が切断されていた。
『次だ』
また耳元で聞こえるが奴は動いてない。
そして右腕が斬り落とされる。
続いて左足、その数秒後に右足を切断されるが倒れる事なく、空中に浮いたままになった。
未だにリュウゼンは動いてないが、ふと周囲に奴の気配を感知。
明鏡止水で集中し、空間感知、気配察知、魔力感知を発動。
おかしいな。
斬られる前に危険察知が、まったく反応してない。
順番に四肢を斬られて浮いた状態とくれば、最後は首。
でもどうやって攻撃してる?
それにこの何かが纏わり付くような感覚。
そして切断された四肢から血が出てないのもおかしい。
……時間?
断絶された空間というか次元に入れられ、時間が経つごとに斬られてるな。
……なるほど、そういう事か。
『死ね』
奴の声が耳元で聞こえると首が落ち、地面に落ちて転がり絶命。
すると白黒の景色に色が戻り、サスケさん達も動き始める。
「まさか絶空の中であそこまで動けるとはな」
「そうか?」
「っ!?」
咄嗟に振り向くリュウゼンだがそこには、近未来的な忍者の姿をした俺が立っていた。
振り向くと同時に奴の頭が地面に落ちると首から血を噴き出し、身体がドサッと倒れて絶命。
危なかったよ。
あの空間の仕組みに気付かないとマジで死んでたわ。
たぶん絶空は、時間を止めるユニークスキルだ。
しかし、ただ時間を止めるなんてスキル、そんな強力なスキルは無い。
あるとすれば、かなりの制限があるはず。
そこで空間を断絶し、対象の時間を止めるが対象は、その空間では動けるのだ。
ただそこには、現実との齟齬がある。
多分だけどね。
周囲の時間が動いてないので気付けた。
あれで周囲の時間が止まってる=俺の時間が止まってる。
と考え、あの纏わり付くような感覚は、空気だと仮定し、斬られても血が出ない事でほぼ確定。
身体が浮いた状態で止まってたのは、リュウゼンが現実で俺の身体を浮かせていた? そこは分からないが、首を斬るまでに少し時間があったからな。
俺が助かったのは、首を斬られるまで時間があったから空蝉術を発動させ、首を落とされて数秒後、気付けば奴の背後へ瞬間移動してる事に気付き、すぐさま瘴気再生で四肢を再生し、忍換装して忍者になると直刀で奴の首を斬った。
瘴気再生は瞬時に再生できるので、こういう時便利だ。
ただ、魔力が結構減る。
やっぱりユニークスキルは、危険です。
油断したら余裕で負ける程の威力がある。
忍換装を解き、キジ丸に戻ると服に魔力を流し、修復機能を発動させて斬られた四肢の部分を修復し、斬られた足から靴を収納してインベントリから出して瞬時に靴を履く。
これは忍換装の応用だ。
そこにシオウが近づいて来て声を掛けてくる。
「まさかリュウゼンが負けるとはね」
「まあ、それなりに強かったよ。次はお前だ」
「君は僕に勝てないよ?」
「安心しろ、お前はじっくり苦しめて殺してやるから」
「人の話し聞いてる? 僕には勝てないと言ってるんだが?」
「お前も話しを聞いてたか? 苦しめて殺してやるってさ」
「……じゃあやろうか」
「その前に、サイはどこ行った?」
サスケさんの方でも聞いてるし、こいつなら何か言いそう。
「サイ? あぁサスケの息子ね……ある人を追いかけてどっか行ったよ」
おお、答えてくれた。
これが本当の事なら良いんだが。
……ん?
「そう言えば、暗黒街のトップは居ないのか?」
するとシオウは、ニヤっと笑みを浮かべ答える。
「目の前に居るでしょ」
「お前が? ……リュウゼンが武双連合のトップでロンが魏王一家、でお前が暗黒街のトップなら、女神の懐のトップは?」
「それも目の前に居るでしょ」
「ん? 掛け持ち?」
「さあ、そんな事よりさっさと殺し合いを始めようか」
まさかの組織の掛け持ちとはねぇ。
……本当か微妙だが。
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