第205話 サスケVSロン1

俺達から離れたサスケさんとロンが、10メートル程離れて対峙していた。

あっ、サスケさんの対人戦をちゃんと見た事無いので、サスケさんの影に分身を潜ませて観戦させてもらってます。


最初に口を開いたのは、ロンである。


「里に居た頃から私に勝てた事が無いお前が、私に勝てるのか?」

「お前も言ってただろ? あの頃とは違うと、わたしも違うぞ」

「ほう? 私に勝てると?」

「良いマスターを見つけたのでな」

「お前がマスターと認める者か、どんな奴か見てみたいものだが、今はお前がどれ程強くなったのか少し遊んでやろう。ほれいつでも良いから掛かって来い」


マスターってたぶん俺の事だよな?

もう見てるぞ~。

それよりこいつ、昔はサスケさんより強かったのか。


「うむ、既にやったが?」


ロンはサスケさんの言葉を理解出来ないようだ。

するとロンの左腕の肘から先が、地面に落ちる。

話してる最中サスケさんは、隠蔽した魔糸を巻き付け、答えると同時に切断した。

ちなみに魔糸は、俺が教えたぞ。

いろいろ使えるから便利なんだよね。


「っ!? ……ククク、面白い。まさか腕を斬られるとはな」


奴はそう言って腕を拾い、切断面をくっ付けると数秒で元に戻り、手を閉じたり開いたりして感覚を確かめる。


「なに、ちょっとした遊びだが楽しんでもらえてなによりだ」

「なら次は……こちらの番だ」


その瞬間、サスケさんの足元の影から棘が一瞬で生える。

サスケさんが横に跳んで避けると棘が更に伸び、避けたサスケさんを追う。

影の棘が途中で分裂し、逃げるサスケさんを追い続けるが、逃げていたサスケさんは縮地で距離を空けると立ち止まり、迫る棘を全て刀で弾くと霧のように四散して消滅。


「っ!? やるではないか」

「以前は、影を操るのが上手かったが、魔力制御が甘いな」

「ほう、ならこれはどうだ?」


サスケさんの影が5本に伸び、人の形を作るとロンへと姿を変え、手にもつ直刀で襲い掛かる。

が、全員の直刀がサスケさんに当たる直前、直刀が弾かれて腕が上がった状態になると、一瞬で5体の影分身を斬り裂き消滅させた。


今のは俺が教えた溜気で弾いたのだ。

流石サスケさん、使いこなしてるな。


「確かに、以前のお前とは違うようだ。だが、どれだけ強くなろうが私には勝てない」

「うむ……1つ聞きたいのだが」

「なんだ? 昔のよしみで答えてやるかもしれんぞ?」

「サイはどこ行った?」

「あぁ、お前の息子か……今頃死んでるかもな」


うん、サイが出て来ないのがずっと気になってたけど、ここには居ないようだ。


「ここには居ないか……どこ行った?」

「言っただろ? 今頃死んでるかもしれないと」

「死んでるならお前は、確実に死んでると言うはず。だが死んでると言うって事は、お前もどうなってるのかは知らない。しかし、どこへ行ったのかは知ってるはずだ。その理由は、それがお前の性格だからな」

「ククク……よく分かってるな。ああ、お前が言ったとおり、サイが向かった先は知ってる、が……教える訳無いだろ?」

「昔のよしみで素直に答えれば、楽に殺してやるぞ?」

「ハハハハ!!! 言うようになったな。だが……調子にのるなよ?」


スッと無表情になるロン。

次の瞬間、ロンが姿を消し、サスケさんの目の前に姿を現すと先程まで普通の直刀だった刃が塗りつぶされたように真っ黒になり、ロンの胸から腕と手も真っ黒になっていた。


振り下ろされる直刀、サスケさんは刀で受け流し、斬り返すが真っ黒になった素手の右手でサスケさんの刃を掴んで受け止めると、そのままグイっと引き寄せ、サスケさんの腹に膝蹴りを入れ、くの字に浮いたサスケさんに向かって直刀を振り抜く。


サスケさんはなんとか刀を引いて直刀を受け止めるが、踏ん張りが効かず吹っ飛ばされ、すぐさま回転して着地すると数メートル滑って止まる。

刃を手で掴むとは、あの黒い手や腕はなんだ?

直刀も影を纏ってるのか?

影を操るのが上手いって言ってたもんな。



ロンは吹っ飛んだサスケさんに追撃する事なく、胸から両腕と直刀が真っ黒な状態でその場に立っていた。


「出したな。硬質化」

「この状態の私にボロボロにされた事を思い出したか?」


なるほど、あれはマナによる硬質化ね。

そりゃ手で受け止められるはずだ。

マナによる硬質化は、閻魔鉱に近い状態になる。

だが閻魔鉱の黒さは、不純物を含んでいるからで、マナだけで硬質化してもあれ程黒くはならないはず。

……わざと何かを混ぜてる?

それでより硬くしてるのかも?


面白いなぁ。

強い奴はいろんな戦い方や技を持ってるから、それを見るのが実に面白い。

まだまだやれる事があるって知れて良いね。


「以前マスターに教えてもらった事がある」

「ほう、何をだ?」


何を?


「どんなに硬くとも、斬れないものは無いと」


あぁ、確かに言った。

人は鉄さえ斬れるのだ。

『斬る』という一点を突き詰めれば俺は、星だって斬れると思ってる。

まあ、斬ったら自分も死ぬんだけどね。

だから斬らないぞ?

確かそんな感じの事を言った記憶がある。


「いくらやってもこの状態の私を斬れなかったお前が? 出来るものならやってみろ」


サスケさんは、ゆっくり納刀し、居合切りの構えを取った。


「マスターにはいろいろ教わったよ。強くなるという一点に置いてマスターは、神すら凌駕するとわたしは思う」


それは照れるな。

まあ、最強になるのが目標だからね。


「ハハハハ!!! 神を超えるか、大きくでたもんだ」

「そんなマスターを見てわたしもいろいろやったよ。その結果がこれだ」

「来い、斬れるものなら斬ってみろ!!」


数瞬間を空けるとサスケさんは、一閃抜刀。

すると10メートル以上離れたロンの胸の当たりと両腕に線が入り、血を噴き出す。

まだ浅いな。


「浅いか」

「っ!?」


ロンは斬られた事に驚いてるようだ。

切断まではいかなかったが、あの状態で斬られたのが余程ショックなのかな?

しかしロンは、すぐさま冷静になり、腰のポーチからポーションを取り出して飲み干す。

回復魔法や遁術は使えないのか。


「まさか、この状態の私を斬れる者が現れるとはな」

「マスターなら切断出来ただろう。わたしもまだまだだ」

「ならば私も本気でやってやろう」


遊びじゃなかったんかーい。

本気になってんじゃん。

それにサスケさんは、まだ本気じゃないぞ?

そんな事にも気付かないとはな。


「キジ丸を始末するために準備したが、ついでにお前もこれで始末してやろう」


俺を殺すため?

準備するって言ってたが、逃げるためじゃなかったんだな。

何を用意してくれたのかじっくり見させてもらいましょう。

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