第204話 進化?成長?覚醒?

空蝉術で避けたリュウゼンがギンジを斬り殺すと、次から次へと影からギンジが湧き出し、リュウゼンを追い込んで行く。


リュウゼンが縮地で移動して距離を離すと、移動した先の影からまたギンジが湧き出す。

咄嗟に跳んで空中へ逃げると、リュウゼンの影から湧いたギンジが連なるように、空中に居るリュウゼンに向かってギンジからギンジが湧き出し、途中で1人のギンジが自分を蹴って跳び上がり、空中に居るリュウゼン目掛けて斬り掛かる。


「調子に乗るな」


リュウゼンが空中で一刀領域を発動させ、範囲内に居たギンジが全員一刀両断。

斬り掛かっていたギンジも胴体で切断され血が飛び散り、リュウゼンが血を被ったまま地面に着地。


そこで大量に居たギンジがいつの間にか姿を消し、1人のギンジがリュウゼンの後方に突っ立っていた。

リュウゼンは振り向き、口を開く。


「もう増えるのは終わりか? まあ、いくら増えたところで俺には届かねぇぞ」


ギンジは何も答えず、背中の直刀を抜く。

あそこから何をする気だ?


「それがお前の限界のようだな。そろそろ終わらせるか」


リュウゼンの言葉を聞いて俺は、違うと感じた。

確かにリュウゼンにギンジの攻撃は届いてない。

だがリュウゼンの攻撃もまた、ある意味ギンジにのだ。

いくら斬っても全部ギンジの本体である。

俺でも今のギンジに勝つのは、時間が掛かりそう。


ギンジは、無言のまま直刀を片手で振り上げ、自重に任せて直刀を振り下ろす。

誰が見ても遅く、子供が直刀の重さに耐えられず落ちただけの振り下ろし。

俺もリュウゼンも、見ていた全員がそう思ったはず。


なのに次の瞬間、地面が抉れ、見えない大きな斬撃がリュウゼンに向かって行く。

リュウゼンは、直刀で払うように横へ振り抜くが地面が抉れるのは止まらず、もう一度直刀を振り抜くがやはり止まらない。


そこから素早く数回振り抜いて斬撃をぶつけるが、ギンジが放ったであろう大きな斬撃は止まる事も消滅する事もなく、リュウゼンに直撃。

リュウゼンは、直刀で受け止めるがそのまま押され、地面を抉りながら後方へ押されていく。


ゆっくり迫るものに対し、受け止められると思うとなぜ人は避けないのか。

リュウゼンもギンジの攻撃を見て相殺する事が出来ると思ったんだろうが、何度やっても消滅する事は無く、目の前に迫りようやく気付いたようだ。

ただの斬撃ではないと。


直刀に魔力を流し、斬撃を受け止めたリュウゼンは、数十メートル後退させられてようやく止まった。


「中々の攻撃だな。だが……っ!?」


遠くに居たギンジの姿が消え、リュウゼンの目の前に一瞬で移動したギンジは、普通に直刀を振り下ろす。

リュウゼンは受け止める事無く身体を逸らし避けると、後方へ向かって地面が抉れる。


続けてギンジは、直刀で何度も斬り掛かるがリュウゼンは全て避け、直刀で防ごうとはしない。

なんせ躱したギンジの攻撃は全て、地面を抉って離れた場所に居る構成員達を斬り裂いてるからね。


ギンジの攻撃が徐々に速くなっていくと、途中で動きに緩急を付けリュウゼンの意識を崩すと、軽くリュウゼンの胸に左拳を打ち込んだ。

すると次の瞬間、リュウゼンは血を吐き出しながら数十メートル吹っ飛ぶ。


すぐさま身体を回転させ着地すると、地面を数メートル滑って止まり、顔を上げたところで目の前に居たギンジの蹴りが、リュウゼンの横っ腹に入り、肋骨を折りながらも吹っ飛ぶ事なく、足を引っ込めるとスッと直刀を振り下ろした。


リュウゼンは斬られるが空蝉術で避け、ギンジの背後へ瞬間移動して直刀で首を狙う。

しかしその瞬間、ギンジの足場にクレーターが生まれ、リュウゼンが何かに弾かれ吹っ飛び、空中で身体を捻って着地したところ、足元の影から出て来たギンジが直刀を斬り上げるがリュウゼンは、なんとかギリギリ避けると直刀を振り下ろす。


が、刃がギンジに当たる直前、リュウゼンの全身が斬り刻まれ、大量の血を流しながら倒れる。

足元から出て来たギンジに気を取られてる間に、クレーターを作ったギンジが縮地で近づき、背後から直刀を一振りし、斬り刻んだのだ。



倒れたリュウゼンを2人のギンジが見下ろし、1体が口を開く。


「今度こそ終わりだ」

「はっ、まさか……この戦いの最中に、成長するとはな……まあ楽しかったから良いか」

「自分でも驚いてるさ……全力を出されれば僕は負けていた。なぜ全力を出さなかった?」

「はは……決まってるだろ? ……俺が楽しむ、ためだ」

「……そうか」


ギンジは2体で直刀を逆さまに両手で持ち、今にもリュウゼンに突き刺そうとした瞬間、2体のギンジの首が切断され、首から血を噴き出しながら倒れる。

するとその後ろに、姿を現したロンとシオウ。


2人とも全身黒い服を着てる。

ロンは、忍者部隊と似た格好で顔は隠してない。

シオウは、黒い上着を着て中には白いシャツ、首元に黒く長いマフラーのような物を巻き、少し顔を隠した状態だ。


そこでシオウが倒れてるリュウゼンを見て言う。


「リュウゼン、遊んでないでさっさと起きろ」


続けてロンも口を開く。


「あれだけ言って負けるとは、情けない」


リュウゼンは、全身の傷を癒し、身体を起こし立ち上がると着物姿に戻った。


「じゃあこの場に居る全員、始末して終わらせよう」

「そうだな。準備も整った事だし、遊びは終わりだ」

「チッ、邪魔しやがって」


ロンが俺を見て告げる。


「キジ丸、お前だけは私が……っ!?」


話していたロンに斬り掛かるサスケさん。

ロンは咄嗟に直刀で防ぎ、火花を散らすとサスケさんを弾く。

弾かれたサスケさんは、空中で回転して地面に着地すると静かに言う。


「ロン、お前は私が相手をしてやる」

「サスケ……あの頃の俺とは違うぞ?」

「ギンジ殿の決闘に水を差すとは、無粋な真似をする奴だ。あの頃と何も変わってないな」

「仕方ない、昔のよしみで少し遊んでやろう」

「やるなら離れた所でやれよ?」


シオウに言われてロンは、顎で方角を示して移動しようとサスケさんに提案すると、サスケさんも了承して移動した。


「さて、残った僕達はどうする? リュウゼンはもう一回そこのギンジ君と戦う?」

「いや、次はお前だ」


リュウゼンは俺を見る。

こいつらふざけてるのか?

……久しぶりにキレそうだ。


「お前ら2人共相手をしてやる」

「はい?」

「はっ? 何言ってやがる。俺とこいつをお前1人で……っ!?」

「っ!?」


リュウゼンが話していたが途中で止まる。

シオウも身体が一瞬固まり、2人は冷や汗を流し始めた。

本気の威圧を放ってます。


「決闘の邪魔しといてさっきから何言ってんだ? リュウゼン、お前が楽しむために手を抜いてるのは別に良いが、死ぬ覚悟をしながら助けられて恥ずかしくないのか? 決闘の邪魔をされて何とも思わないとはね。ただの雑魚かよ」

「あ”?」

「シオウ、ギンジの邪魔をしといて何勝手に仕切ってんだ? たかが落ちた忍びがでしゃばるな」

「……へ~、僕を怒らせてどうしたいのかな?」

「別に? 事実を言ってるだけだ。あっ、先程の決闘はギンジの勝利で決着はついた。なので俺がお前を殺しても問題は無い」

『だよな?』

『流石師匠、かなり消耗したので任せていいですか?』

『任せて休んでろ』

『ありがとうございます』


俺の影の中に居るギンジと念話で話し、本人の了承を得たのでリュウゼンと戦えるぞ!

まあ、リュウゼンの戦いは十分見せてもらったので、早く始末しよう。

シオウは、ギンジの邪魔をしたのでじっくり苦しめてから始末する。


さあ、お楽しみの時間だ。

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