第203話 ギンジの決闘2

突然腕を斬り落とされたギンジは、気にせず縮地でその場から姿を消すと、上から胴体を真っ二つにされたギンジが落ちて来た。


これは速いなんてもんじゃない。

リュウゼンは動いてないが、刀気を放ってる様子も無い。

どうやって斬った?


魔眼で視るとリュウゼンを中心にしたドーム状に半径10メートル程の空間に、濃い魔素が漂っている。

いや、あれはリュウゼンの魔力か。

あの魔力で斬ったって事かな?

そんな事が出来るのか分からないが、それ以外考えられない。

気になる。

どんな感じなのか、あの中に入ってみたい!


なんて思ってると、6体のギンジが離れた位置でリュウゼンを囲み、一斉に縮地でリュウゼンへ襲い掛かると範囲に入った瞬間、全員一刀両断にされて霧のように消滅。


なるほど、影分身であの範囲に入るとどうなるのか確かめたのか。

見てて分かったのは、全部の影分身を一刀両断にしたって事。

一回しか斬られないなら、何とか防いで近づくしかないが、一度防いでもまだ距離はある。

進むごとに両断される程の斬撃を受けるならギンジには、ちょっと厳しいかも。


今度は離れた場所に1体出て来るとギンジは、印を結ぶと特大の火球を放つ。

が、魔力に触れると一刀両断にされて火球は消滅。

火球も斬るって事は、どんな魔法を放っても斬られそうだな。


「もう良いか? ならこちらから行くぞ?」


リュウゼンはそう言うと、縮地ではなく普通に地を蹴って素早くギンジに迫るが、ギンジは何かを察したのか縮地で後方へ離れる。

しかしリュウゼンはそれを追いかけ、また地を蹴って方向転換し、ギンジに迫る中、構成員達が居る方へ逃げたギンジを追いかけ、構成員の近くを通ると全ての構成員が一刀両断にされて死んでいく。


魔眼で視てると奴の周囲にある魔力は、移動しながら常にリュウゼンの周りにある。

あれで群れに突っ込んだら無双ゲーだな。

クソッ、戦ってればあれがどんな技なのか探れるのに、ここから見てるだけだと分かり難い。


逃げ回るギンジを追いかけるリュウゼン。

その度に周囲に居る構成員達が切断されて死んでいくのを見て他の者達は、急いでリュウゼンから離れようと走って行くのだが、リュウゼンに追い付かれて両断されてしまう。


この間、約5秒だがその間に数十人の構成員が死んだ。

まさに無双ゲー。



……ん?

なぜリュウゼンは縮地で距離を詰めないんだ?

それかもっと速く動けるはず……いや、あれを発動してる間は、縮地が出来ないのか。

そっちの魔力制御をしてるから他の制御は出来ないんだな。

もしかしてあれは……侍の領域?

領域創造みたいなスキルが侍にも……あるわ。


侍神スキルの情報を探ると【一刀領域】というのがあった。

範囲に入ると一刀両断にするスキル。

だがこれは、かなり制御が難しそう。

だから他の制御が出来ないのか。

これを突破するには……下だな。


すると逃げながらギンジが5体の影分身を出し、迫るリュウゼンに向かって突撃させるが全部両断されて消滅する。


「これで終わりだ」


次の瞬間、リュウゼンの姿が消えるとギンジの近くに移動しており、ギンジは一刀両断にされて絶命。


「次はどこだ? どうせまだ居るんだろ? それとも終わりか? ……っ!?」


リュウゼンがそう言った瞬間、その場から跳んで離れた場所に着地。

先程までリュウゼンが立っていた場所には、忍者姿のギンジが地面から出て直刀を振り抜いていた。

まあ、下が弱点だとリュウゼンも分かってたから警戒はしてたんだろうな。

今の攻撃でリュウゼンの領域は解かれたようだ。


「やっぱこれは、まだまだ完全じゃねぇな」

「これがお前の本気か?」

「はは! 安心しろ。まだ半分も出してねぇよ」

「そうか……なら仕方ない。どうやら死ぬ気でやるしか無さそうだ」

「良いねぇ。俺をもっと楽しませてくれ」


ギンジ、奴が侮ってる内に仕留めないと勝てないぞ?

出し惜しみしてる場合じゃない。

さっさと全力でやれ。



ギンジは腰を落とし、走り出すと左右に3体ずつ分身を出す。

リュウゼンは構えずに突っ立ってる状態だ。

1体の分身が姿を消し、気付けばリュウゼンの後方へ移動していた。

すると次から次へと分身が姿を消すと、リュウゼンの後方を囲むように直刀を振り抜いたまま立つ分身。

縮地で移動しながら斬ってるが、全部ギリギリ躱されてる。


最後のギンジが姿を消し、リュウゼンの懐に姿を現すと同時に、火花が散った。

ギンジが直刀を斬り上げ、リュウゼンが刀で受け止めたのだ。


「これで終わりか? なら……」


リュウゼンが直刀を弾き刀を振り下ろし、刃がギンジに当たる直前、一瞬リュウゼンの身体が硬直するが、そのまま刀は振り下ろされギンジの肩から胸まで刃が食い込んで斬った。


が、それと同時にリュウゼンの身体を、5本の直刀が貫く。

胸まで刃が食い込んでるギンジは、直刀を手放してリュウゼンの腕を掴んで動けなくしていたようだな。

捨て身の攻撃。

これがギンジじゃなければだけど。


「仇を討ったぞ……」

「どうかな?」


リュウゼンはニヤっと笑みを浮かべると、霧のように四散して消滅。

次の瞬間には、ギンジの背後に立ち、ギンジを斬り裂き血飛沫が舞う。


空蝉術。

やっぱりこいつも忍者だったか。


「ここまでやったのは褒めてやろう。だが、まだまだだ。まあ頑張った方だろうからな。褒美に俺の本気を見せてやる」


そう言うと奴の姿が忍び装束になり、口元を隠すだけの黒いマスクを付けた忍者に変わった。

あちゃ~、忍者になっちゃったよ。

そろそろ交代かな?


忍者になったリュウゼンの背後に新たなギンジが姿を現し、直刀を振り下ろすがリュウゼンが姿を消すとギンジの背後へ移動する。

続けてギンジが振り向きざまに直刀を振り抜くが、またも姿を消して背後に立つ。


それを何度も繰り返すリュウゼン。

あれは空蝉術じゃない。

ただ速く動いて背後に回ってるだけだ。

『いつでもお前を殺せる』と、行動で示してる。

性格の悪い奴だな。


しかしギンジは諦めない。

戦いながらも試行錯誤し、活路を見出す。

それでこそ忍者であり、俺の弟子だ。


数秒程してリュウゼンが、ギンジを背後から両断し殺害。

するとリュウゼンの影からまたもギンジが出て来て、直刀を斬り上げるが躱されて逆に両断されて始末される。

そこからドンドンギンジがリュウゼンの影から出ては、殺されていく。


それを見ながら俺は、少し違和感を覚える。

殺されたギンジの死体は、時間が経つと消滅するのだが、死体が消えずに徐々に増えていくのだ。


次の瞬間、死体に足を取られてバランスを崩したリュウゼンの足を、影から出て来たギンジが斬り落とす。

が、リュウゼンの姿が霧のように四散してギンジの背後へ瞬間移動し、ギンジは斬り殺される。


何を狙ってるんだギンジ?

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