第197話 サスケのライバル?

扉を潜ると明かりが無く、奥は何も見えない。

空間感知で周囲を探ると、東京ドーム程の広さがある円形の広い空間になっていた。


俺は立ち止まって声を掛ける。


「サスケさん」

「ん?」

「周囲に大量に居ます」

「ああ、入った時から魔力が視えてる。この数は流石に2人じゃ厳しいか?」

「いや、大丈夫でしょう。ですが、ここにトップが居ると思ったんですけどねぇ。魔力感知で調べても、強そうな者は居なさそうです」


俺達が入って来た反対側には、数千の人が空間感知で居る事は分かった。

数で押し切るつもりか?


「それにしても暗い。相手は私達が入って来たのが見えてないのでは?」

「ちゃんとカメラで視てるみたいですよ」


そう言った瞬間、高さが60メートル程ある天井から強烈な明かりが照らされ、広い空間の全容を現す。


地面はコンクリートのようで、天井はドーム状になっており、その中心から天井と壁に沿って地面の中まで管が伸びている。


壁には等間隔にアーチ状の装飾が施され、全体的に何のための空間なのか分からない。

ん?

壁の所々に穴があるな。

デカい貯水槽?

いやいや、デカすぎるか。


大量に居る者は、魏王一家、武双連合、女神の懐、暗黒街の連中だ。

まだこんなに居たとはねぇ。


すると正面の数十メートル上にホログラムなのか、デカい画面が現れるとそこに、パーマが掛かった金髪をオールバックにしたイケオジが映し出される。


『やあ、よく来たな。待っていたぞ』

「サスケさん、あれが誰か知ってます?」

「ああ、あいつは魏王一家のマスター『ロン・ギオウ』だ」


あれがトップか。


『サスケ、久しぶりだな。影の里を出て以来の再会か? 流石のお前も少し老けたな』

「影の里に居た?」

「ああ、奴は私と同じように、影の里の忍び頭になる予定だった男だが、落ちて里を抜けた裏の忍びだ」

「なるほど、落ちこぼれって奴か」

『お前の事も知ってるぞキジ丸。シオウが話してたぞ』

「シオウ? 誰だそれ?」

「セイリュウ砦のギルドで、サブマスに変装してた者だろう」

「あっ! あいつか!!」


元は火の里の忍び頭だが、裏の忍びが変装してたかもって奴だな。


「ん? シオウって名前は変装してた奴の名前だろ? こっちでもその名前を使ってるのかよ」

「裏の忍びは殆ど、名前を捨ててる。奴らにとって名前は何でも良いと考えてる」


するとロン以外の声が聞こえてきた。


『久しぶりだね。キジ丸君、まさかここで再会するとは思わなかった』

『おい、私が話してるのだ。お前は黙ってろ』

『久しぶりの再会なんだし別に良いでしょ。まさか君が僕達の脅威になるとはね。あの時、始末しとけば良かったと後悔してるよ』

『あいつは異界人だろ? 以前の世界では殺しても復活するから意味が無い。だが……この世界ではお前達異界人も、死んだら終わりだ』

「正解!」

「態々答えなくても良いと思うが?」


と、苦笑いで言うサスケさん。


「知られても特に問題無いので」


ゲームでもプレイヤーにとって死は、失うモノが多くて死ぬ事を恐れるプレイヤーは多かった。

忍者なんて掟を破ればそれこそ終わりだったからな。


『お前が、息子達を殺した事も知ってるぞ』

「その割には怒ってないね?」

『ああ、いくらでもからな』

「作れる? また子作りするから問題無いってか? 親心ってのが無いようだな」

『親心? ククク……忍びに親心を求めるか、面白い奴だ』


確かに忍者に親心は必要無いか。


「それよりお前らどこに居るんだ?」

『……近くに居るとだけ言っておこう』

「ハハハ! お前ら俺達にビビッて出てこれないんだろ? 裏の忍びが聞いて呆れるな」

『ふんっ、安い挑発だな』


そう言ってニヤっと笑うロン。


『そこに居る者達がお前らの相手をしてくれる。存分に楽しめ』

「すぐ終わるぞ?」

『ああ、、もし倒せたら、私が直々に殺してやろう』


うむ……何か引っ掛かるな。

構成員を全員殺されても

またすぐ増やせるから?

まさか永遠にアンデッドと戦闘とか?

…………まあ、全員殺せば分かる事。


「ならすぐ終わらせて、お前らを引きずり出してやる」

『ハハハハハハ!! ならな? では……お前ら、死んでもそいつらを殺せ。観戦させてもらうぞ。精々頑張れ』


そう告げて画面が消えると、先程までジッと待っていた構成員達が動き出す。


「さてサスケさん、1000人以上居るこいつらを始末しますか」

「半分以上は任せても良いかい? この数は流石に体力的に厳しいからね」

「あぁ、別に2人でやる訳じゃありませんよ」

「ん? もしやギンジ君達がそろそろ来るのか?」

「いえ、ギンジ達はもうっちょっと掛かります……サスケさんの口寄せって何ですか?」


そう言ってニヤっと笑う。


「あぁ、なるほど。そう言えば見せた事無かったな……うむ、久しぶりに口寄せするか」


すると両手で印を結び、地面に手を突くとサスケさんの影がニュッと伸びて飛び出して来たのは、茶色い毛並みの大きな鳥だった。


「久しぶりだな『アズラ』」

「キュー!!」


頭をサスケさんに押し付ける鳥。

全長約10メートル程ある大きな鷹のような鳥である。

カッコいい。


「アズラは空から奴らを殲滅してくれ」

「キュッ!」


そこでサスケさんが俺の方を見て。


「可愛いだろう?」

「ですね……じゃあ、俺の方も口寄せします」


体内に印を書き、口寄せを発動させると俺の影がニュッと2つ伸びてカゲと夜叉が姿を現す。


カゲは尻尾を振りながら、徐々に迫る敵を見て念話で話しかけて来る。


『狩りの時間ですか?』

「ああ、奴らを殲滅する」


キョロキョロを見回していた夜叉が俺を見ると口を開く。


「主よ、訓練ではなく戦闘か?」

「そうだな。訓練でも良いが奴らを殲滅だ。お前とカゲは適当に暴れろ。そこの大きな鳥はアズラと言ってサスケさんと契約してる仲間だ。仲良くしろよ?」

「ほう……強そうだな」

「ワフッ!」

「キジ丸君の口寄せは、とんでもないな」

「そうですか?」

「どちらも魔王種だろ?」


流石に分かるか。

看破で視たのかな?


「頼もしい相棒です。では、殲滅しますか」

「そうだな。久しぶりに全力でやらせてもらうよ」

「なら俺も、最初から戦闘モードでやります」

「じゃあ、マスターの攻撃で派手にお願いします」


はは、血穴で間引きした時と同じだな。

ではあの時より自分がどれだけ成長したのか、試させてもらおう。

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