第196話 神官?

通路を数キロ進むと突き当たりが見えてきた。

大きなゲートと横に小さな扉。

その前に1人、黒髪の白いローブを纏った男が立っている。


すると横を走りながらサスケさんが口を開く。


「ここは私が残ろう」

「いやいや、俺がささっと倒して先に行った方が良いと思いますよ?」

「それなら私にやらせてくれないか? マスターの手を煩わせる事も無いだろう?」

「そう言うならサスケさんに任せます」

「承知した」


男まで後60メートルという所まで近づくと突然、地面から大量のゾンビとスケルトンが出現し、奥の男が見えなくなる。

俺とサスケさんは立ち止まり、顔を歪めた。


「クセェ」

「この臭いは慣れないな」


流石アンデッド。

腐臭が凄い。

しかし、たった1人で居ると思ったら死霊術師とはねぇ。

しかもあの格好は、女神の懐のメンバーだろう。

女神を信仰してる奴がアンデッドを使うとは。


ゾンビとスケルトン合わせるとその数、ざっと100体以上。

ゾンビの服装を見ると魏王一家と武双連合の構成員だ。

死んでも兵として使うとは、流石犯罪組織。


「だが、数を揃えれば良いってもんじゃないだろうに……俺がやるんでサスケさんは、術者をお願いします」

「分かった」


そう言って影に潜るサスケさん。

ゾンビとスケルトンは、1人残った俺に向かって段々と迫って来る。

が、動きは遅い。

スケルトンはガシャガシャと骨を鳴らしながら、手には剣や斧を持っている。


さて、アンデッドを殲滅しますか。

そう言えば、まともにアンデッドと戦うのって……火の里以来だな。



よし、ここはシュートに教わった魔導剣法を試そう。

刀に光属性の印を書きその状態を維持。

更に魔力を重ねると光が強くなる。


居合切りの構えを取り、抜刀一閃。

すると数十体のスケルトンとゾンビが塵となって消滅。

しかし、思ってたより威力が弱い。

もっと訓練しないとな。


ならば次は、複合魔導だ。

もう一度納刀してから光属性の印を刀に書き、その状態を維持しながら回復属性の印を書くとそれも維持。

うむ、今思ったけどこのやり方は、魔導剣法と複合魔導の合わせ技だね。


そして最後に、火属性の印を書いて抜刀。

その瞬間、青白い線が横に走ると全てのゾンビとスケルトンが、青白い炎に燃やされながら光の粒子を撒き散らし、一瞬で消滅。

これももっと訓練しないとね。


ゾンビとスケルトンが居なくなり、男とサスケさんの戦いが見えるようになった。

男は、死霊術師かと思ってたが剣士のようで、剣を使ってサスケさんと良い勝負をしてる。


男がサスケさんの刀を弾き、後方に跳んで距離を空けると魔力を練るのが魔眼で視え、何かする前にサスケさんが縮地で懐に入ると心臓を一突き。


「かはっ!」

「これで終わりだ」

「へっ……どうかな?」


その瞬間、男の身体から黒い靄が溢れ、周囲に広がると2人の姿が見えなくなるが、空間感知で確かめるとサスケさんは、刀を抜いて距離を空けて周囲を警戒。

男は、その場に片膝を突いた状態で動かない。


何が起こるのか空間感知で周囲を観察してると、地面からまたもや大量のアンデッドが姿を現すのが分かった。

またアンデッドかと思ったが、空間感知でその姿形を確かめて違う事に気付く。


いや、アンデッドなのは間違い無いがこれは……上位アンデッド。

スケルトンは大きく骨が太くなり、盾と大剣を手に持っている。

ゾンビは、身体が少し綺麗で、身長も2メートル程だ。

ガタイも良い。

おそらくグール?


少しして黒い靄が晴れてくるとその姿を現す。

やはりグールとスケルトンナイト? いや、それよりも上位種っぽい。


看破で見ると『グールキング』『グールジェネラル』『スケルトンジェネラル』『スケルトンキング』だった。


確かにグールキングは、他の個体より大きく筋骨隆々だ。

スケルトンキングも他より大きく骨が少し黒い。

ちなみにグールの色は、灰色に少し赤みがさす色だな。


「フフフフ、どうせ死ぬなら俺も行こう」


男はそう言うと身体から黒い靄を出すと全身を覆い、数秒で靄が消えるとそこには、先程までと変わらない男が立っていた。

心臓を刺されて何とも無いっておかしくね?


「ハハハハハハ!! 俺は死を乗り越えたぞ!! これで俺に死は無くなった」


そこでサスケさんが叫ぶ。


「この男、リッチになったぞ!!」


リッチって上位アンデッドで魔法使いの?

あれって普通骸骨じゃね?


「そうだ。死霊術で自分の魂と肉体をアンデッドに変えた。これでお前たちを殺せる! いけお前ら! あいつらを殺せ!!」


しかしアンデッド達は動かない。


「どうした!?」

「あぁ、お前が靄に包まれてる間に、始末した」


そう告げて維持していた不動金剛術を解くと、アンデッドは全て塵となって消滅。


「なっ!? ……まあ良い、リッチとなった俺は、いくらでもアンデッドを生み出せるのだ!!」


更に地面から大量のスケルトンを生み出すと、サスケさんに向かって放ち、同時に奴は地面を蹴って素早く俺に迫る。


「リッチなのに近接かよ」


と言いながら、奴の剣を避けながら横を通り過ぎ、ついでに奴の胴体を切断。


「フハハハハハ!! 効かんなぁ!! っ!? なっ!? 身体が、崩れて行く!?」

「光属性の魔力と浄化、そして回復属性を大量に込めた魔力だ。アンデッドになって余計弱くなったな」

「クッ、ソッ……クソがぁ!! 俺は永遠にい……」


そこで奴は、完全に塵となって消滅した。

それと同時にスケルトンも消滅。


スケルトンと戦っていたサスケさんが、納刀して近づいて来る。

俺も刀を振って納刀。


「あの者は、死霊術師であり剣士でもあったようだな」

「あぁ、それは……」


俺はサスケさんに、他の者の職業を取得出来る事を詳しく話しながら、ゲート横の扉から奥へ進んだ。


その話を聞いたサスケさんは納得したが、他人の職業を奪うのは、かなり危険だと言う事も理解してくれた。

下手をしたら魂が耐えられず、死ぬかもしれないからな。


サスケさんが望むなら、欲しい職業の証をあげると言うと、じっくり考えて決めると答えた。


サスケさんは、なんの職業を選ぶかな?

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