第193話 地下へ潜入。
ギンジがやって来た翌日の朝。
特殊空間で目を覚ますとギンジを起こし、顔を洗ってスッキリしてから朝食を食べると路地裏に転移。
昼になる少し前だ。
昨日はギンジと訓練空間で訓練をしたら、ちゃんとギンジも毎日訓練をしてるようで少し成長していた。
「師匠、このまま潜入するんですか?」
路地裏を出て表通りに出るとギンジが聞いてきたので頷く。
「場合によっては忍者になっても良いぞ。俺はこのまま行くけど、忍者になる可能性もある」
どんな罠があってどんな敵が居るか分からないからな。
全力で戦うなら忍者姿の方がやりやすい。
「では僕も、最初はこのまま行きます」
「今日行く所にリュウゼンが居る可能性が高い、ギンジに譲るが危なくなったら退けよ」
「……いえ、倒します」
「じゃあ、死んだら俺が貰うよ」
「え~、そこは『勝てよ』とか言うところでは?」
「だから俺は、リュウゼンを知らないから分からないだろ」
「そうですけど……そういうところ師匠は、冷静というか現実を見てますね」
「ん? どういう事?」
「普通励ますために『お前なら勝てる!』とか言うと思うんですけど?」
あぁ、そういう意味か。
「勝負が見えてる奴にお前なら勝てる! とか言えないね。実際勝てる相手なら言うけど、総合的に見て勝てると分かれば言ってやるよ」
「あっ、すみません。リュウゼンを見ても言わないで下さい」
「どっちだよ」
「勝てないと言われると戦えないかもしれません。逆に勝てると言われたら、油断しそうです」
「ならどっちでも勝てると言っておく。頑張れ」
ギンジがジト目を向けて来る。
「まだリュウゼンを見てないんだから良いだろ?」
「まあ、いいですけど……勝てなくても一矢報いたいですね」
「死ぬ気でやれば勝てるさ」
ギンジがキョトンとした表情で俺を見るので、首を傾げると。
「リュウゼンを見てないのに?」
「生き残る事を考えて戦うのと死ぬ覚悟で戦うのでは、戦況は大きく変わるぞ。ちなみにこれは実体験だ」
ゲームの中の話しだけどね。
生き残る事を考えて戦えば、踏み込まないといけない時にその一歩が出せない時がある。
なので死の覚悟を持って常に戦う。
これは基本だ。
逃げられる戦闘なら逃げても問題無いけど。
「死ぬ覚悟……」
「勘違いするなよ? 死ぬ覚悟を持ってただ突っ込めって意味じゃないからな? 退ける時は退け」
「はい、それは分かってます」
なんて話をしながら歩いてると、政府の中枢である4つのビルが建つ敷地前に到着。
ビルは10メートル程ある壁に囲まれており、敷地内にはビル以外にも建物が幾つかある。
門は南にあるが俺達は、壁がある東で合流だ。
周囲を見回しサスケさんに到着したと念話すると。
『我々も到着している。さて、地下で会合が行われるらしいがどうする? 正面から乗り込むかい?』
『いえ、地下へは転移で向かいます』
『行った事があるのか?』
『ありませんけど大丈夫ですよ。全員俺とギンジの影に入って下さい』
『ギンジ? おや、その者は誰かな? メンバーに居た記憶は無いのだが』
おう、ギンジの時と同じ事をしてしまった。
そう言えば会った事なかったよね。
と、サスケさんに俺の弟子で元異界人だと説明し、リュウゼンという男を狙ってる事を軽く話す。
『なるほど、敵討ちか、分かった。他の者達にもリュウゼンに手を出すなと伝えておこう』
『ありがとうございます』
俺はギンジにその事を伝え、思う存分やれと言っておく。
その間にサスケさんとメンバーの16人が、ギンジの影に8人、俺の影に9人潜ったので空間感知を下に向けて全力で発動。
すると、4つのビルの地下に、中心へ向って伸びる通路を発見。
更にそこからずっと下へ向かうと、幅約15メートル、高さ約20メートル程ある広い通路があった。
それ以上は範囲外なので、とりあえずそこへ転移する。
空間感知で見てるので転移は可能だ。
人が居ない事も分かってるので広い通路の中心に転移すると、南はすぐ行き止まりで北に通路は続いており、先は見えない程長い通路になってる。
俺達が転移した通路の壁には、エレベーターの扉だけで階段は無い。
左右の壁と天井には、等間隔で明かりが点いてるので結構明るいな。
「皆、出て来て良いぞ」
すると俺とギンジの影から忍者姿のメンバー16人と、上は白い着物に下は灰色の袴姿をしたサスケさんが出て来た。
ちゃんと腰には刀を携えてる。
「その格好は初めて見ますね」
「キジ丸君のように、普段は侍として動こうと思ってね」
「なるほど……では、行きましょうか、今のところ周囲に人は居ない」
「よし、3人斥候で前に、その後ろに補佐として3人、それ以外は後ろを頼む」
サスケさんが指示を出すとメンバー達は、すぐさま動き出す。
流石サスケさん。
影の里の忍び頭だね。
斥候が先に進んで数分後、俺達が周囲を警戒しながら歩いてると斥候が罠を発見したと報告があり、その場所まで行くと通路を遮断するように、細い赤いレーザーが格子状に張り巡らされていた。
スパイ映画だな。
「触れるとどうなるのか……ん?」
じっと観察してると、埃がレーザに触れた瞬間、一瞬で燃え尽き消滅。
「なるほど、これに触れると焼き切れるのか」
誰も何も言わず、そのまま影に潜って向こう側へ渡り、影から出てそのまま進む。
これは忍者以外の侵入者を入れないための装置だな。
歩き出してギンジが口を開く。
「あの装置、意味あるんですかね?」
「忍者ではない侵入者用だろ。この先、忍者用の罠があるかもしれないから気を付けろよ」
「なるほど」
ギンジが真剣な表情になり、周囲を警戒しながら進み始める事数分後、またもや斥候が罠を発見。
現場に到着するとそこには、天井から大量のライトが床を照らしていた。
これが罠?
まあ、明らかに怪しいけど。
「影に潜って行きますか?」
ギンジの言葉を聞いてふと疑問が湧く。
先程は普通の侵入者を防ぐ装置で、今回はあれを超えた侵入者用となる。
だとしたら考えられるのは……動きを感知?
そこで斥候の1人が影に潜り、ライトの下へ入ろうとしたので止める。
「待て!」
「師匠?」
「マスターの言うとおり、これは影に入って渡ろうとすれば、感知する装置のようだね」
「なので転移で行きます」
という訳で、先程と同じように影に入ってもらい、転移で向こう側へ移動すると特に何も無く、奥へ向かって進み始めた。
「ふむ、おかしいな」
右側を歩いてるサスケさんがそう呟く。
「何がおかしいんですか?」
「侵入者を防ぐ装置はあったが、これ程の施設ならカメラがあるはず」
「そうか、既に俺達が来てるのはバレてるっぽいですね」
「ああ、なのに何の動きも無い」
「確かにおかしいですね」
そこでギンジが言う。
「奥へ来るのを待ってるのでは?」
「あぁ、それはあり得そうだな」
「ふむ……斥候は気を付けろ。敵が待ち構えてるかもしれんぞ」
うむ、空間感知にはまだ引っ掛からないが、突然出て来る可能性もある。
早く出て来てくれないかな。
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