第191話 偽装。

死んだはずのサイが現れ、混乱気味のサスケさん。

しかし、魔眼持ちのサスケさんは、目の前のサイが本物であると理解してる。

死んだはずの息子が裏の忍びになってるなんて、サスケさんはどんな気持ちだろう?


「サスケさん、どうします? とりあえず動けなくして話しを聞きますか?」

「……いや、落ちた忍びに情けは無用。始末するのみ」


うむ、流石忍者の長だな。

自分の息子だろうと親だろうと、掟に従い始末する。

しかし……。


「俺は別に戦いに来た訳じゃない。こいつを回収しに来ただけだ」


脇に抱える達磨状態の幹部。

今はサイが来た事で気を失ってる。


「逃がすと思ってるのか?」

「当然、仲間も居るしな」


そこで背後に、2つの気配が現れたので振り向くと、身長2メートル程ある坊主頭の筋骨隆々の男と、長い金髪をポニーテールにした女が幹部と同じような格好で立っていた。

魔眼で視ると魔力の流れからして人間だと判明。

分身ではないようだ。


それに見ただけで分かる。

こいつら、さっきの幹部より強いな。


「キジ丸、何笑ってんだよ?」

「おっと、後ろの2人がそいつより強そうだったんでね」

「相変わらずぶっ飛んでんな。それで親父」

「お前は息子ではない」


サイは頭を掻いて面倒くさそうに言う。


「あんたも変わらずだな……俺は任務があるので帰らせてもらう。いつもの見回りが3日も掛かってるんでね。昼までには終わらせたかったが」

「ならこの2人は、残るのか?」

「いや、俺達は戦うために来たんじゃないとさっき言ったろ?」

「チッ」

「舌打ちしやがったこいつ」


向って来ない奴と戦ってもなぁ。

だがまあ……。


「そいつは置いていってもらう」

「いやいや、こいつは俺達にとっても重要な奴でね。殺させる訳にはいかないんだよ。それに、ここで俺達が全力で戦うと一般人を巻き込むぞ?」

「それが何の関係が?」

「関係無いやつまで巻き込むつもりか?」

「俺は巻き込まないよ。お前らが巻き込むんだろ?」

「おいおい、責任転換も甚だしいな」

「さてと、じゃあやりますか……サスケさん?」


さっきから黙ってるサスケさんを見ると、サイを睨んだまま動いていない。


「……次に会う時は、私が始末してやろう」

「サスケさん?」

「キジ丸君、ここは退こう」


ん?

先程まであった怒りの色が瞳から消えている。

自分の中で何か納得したようだな。

それにしてもあのサスケさんが逃がそうとは、何か理由があるのか。


「親父は物分かりが良いな」

「次親父と呼んだらどこまでも追いかけて殺す」

「おおコワ、じゃあ……次に会う時が楽しみだ」


そう言ってサイは、その場から姿を消すと後ろの2人も姿を消した。

俺は刀を振って血を掃うと納刀し、周囲を見回す。


「ん?」

「どうした?」

「いや、殺したやつらの死体がいつの間にか消えてるなぁと思いまして」

「奴らが回収したんだろう」


なるほど。

影に沈めて回収したのか。


「ところでサスケさん、なぜサイを逃がしたんです?」

「ふむ、少し気になる事があってな。いろいろ確かめる事が増えた。暫く暗黒街を潰すのは待ってくれるか?」

「その理由は?」

「……確かめて確信を得てから報告しても良いかい?」

「それは、サイに関係する事?」


頷くサスケさん。

うむ、死んだはずのサイが生きていた事、そのサイがここで俺達の前に姿を現した事……死体は偽装。


待てよ?

なぜ偽装する必要があったんだ?

裏の忍びになるだけならそのまま組織に入れば良い。

なのに態々死体を用意したのは……サスケさんの目をごまかすため?

だとしたら、なぜサスケさんの目をごまかす必要があったのか……それを確かめるって事か。


「サスケさんの目をごまかした理由、それを探ると?」

「流石キジ丸君だな……なぜあいつがそんな事をしたのか、それを確かめなければならない」


忍者の行動には裏がある。

って、漫画で読んだ事あるな。

しかし、サスケさんの目をごまかす理由ねぇ……単に知られたくなかったとか?

息子が裏の忍びになったのを知られると、サスケさんが悲しむ……のか?

まあ、そうだと仮定してサイは、親を思って死を偽装した?

いやいや、それなら最初から裏の忍びにならなければいい話……ん?

何か違和感があるな。


「ではマスター、私は暫く姿を消す事にする。他の者達には私から指示を出すから心配しないでくれ」

「暗黒街を放置するなら後は、武双連合だけ?」

「いや、各組織のトップがまだ残ってる」

「そうだった」


するとサスケさんが真剣な表情で考えながら、口を開く。


「おそらく3日後の昼、各組織のトップが集まる」

「どこに?」

「たぶんだがこの街のどこかだな」

「その情報はどこから?」

「……確認してから答えよう」


確認したい事が『増えた』と言ってたな。

まあ、サスケさんに任せるか。

今のところ他に情報無いし。


「分かりました。どれくらい掛かりそうですか?」

「3日、いや2日待ってほしい」

「了解」


するとサスケさんが驚いた表情をする。


「良いのかい? 自分で言うのも何だが、怪しいだろ?」

「サスケさんがあいつらの仲間かもしれないと?」


頷くサスケさん。


「そう言うって事は違うって事でしょ? 例え奴らの仲間だとしてもその時は……ね?」

「はは、キジ丸君に狙われたら終わりだな」


敵になるなら相手が誰だろうと始末するぞ。

サスケさんとは戦ってみたいと思ってるし。


「では俺もいろいろ探ってみます。何か分かれば念話で連絡しますね」

「ああ、私も確認したら報せよう。では」


そう言って姿を消すサスケさん。

さてと、魏王一家のアジトにでも向かうか?

三人兄妹の首は片付けられてるが、未だトップは姿を現さない。

この街に居ると思うんだけどなぁ。


もしかしてトップ全員、政府の中枢に居るとか?

あれだけ暴れたのに、誰も出て来ないのはおかしい。

女神の懐は、まだ気付いてない可能性は高いが魏王一家は、兄妹が殺されてるのに親が動く気配すら無い。

まだ知らせてないのかな?

組員が犯人を捜し回ってるけど。


ん~……サスケさんの連絡が来るまで、観光でもしよう。

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