第190話 幹部との戦い。
サスケさんが合流したので雑魚を任せ俺は、幹部らしき男を捕える事にする。
幹部はサスケさんに蹴られて建物の外まで吹っ飛んだけど、落ちたかな?
「お前達は私が相手だ」
そう言ってサスケさんは、縮地でその場から姿を消し、忍者の懐へ入ると腹を蹴って建物の外へ吹っ飛ばし、続けて別の忍者へ肉薄すると殴り飛ばす。
サスケさんの戦いを見ていると背後に気配が現れ、幹部が直刀で斬り掛かって来た。
振り向きざまに刀で受け止め、溜気で弾くと回転して着地。
「ゴミが増えたか」
サスケさんを見てそう呟く幹部。
「お前の名前は? 幹部だろ? ちなみに俺はキジ丸だ」
「キジ丸……なるほど、お前がキジ丸か」
目を見てマスクの下でニヤっと笑ってるのが分かる。
「俺の事を知ってるようだな」
「ああ、仲間に聞いた。最強の忍者とか呼ばれてるらしいな?」
「自分で名乗った覚えは無いけどね」
こいつの仲間は俺の事を知ってるのか。
プレイヤー?
それともまたメンバーの誰か?
俺が忍者だと知ってるのはメンバーと和道の皆くらいだ。
「上はお前を警戒してるらしいが、それ程の者か疑わしいな」
「上が警戒してる?」
それで呼びかけに答えなかったのか?
それよりも、なぜ俺を警戒する?
「お前に計画の邪魔をされると面倒だ。今日ここで俺が、始末してやろう」
計画、邪魔……なるほど。
「お前ら、裏の忍びか」
「知ったところでお前は、何も出来ない」
すると次の瞬間、身体が上手く動かなくなり、徐々に固まっていくのを感じる。
これは……石眼か。
まあ、忍者なら瞳術を持ってるよな。
俺は魔眼を発動させると魔力の流れが視え、周囲の魔力、いや、魔素が俺の身体を包むようにジワジワ集まってるのが視えた。
これが瞳術の正体。
自分の魔力を呼び水にし、周囲の魔素を使って現象を起こす。
それが分かれば防ぐのは簡単。
不動金剛術を解くように体内に魔力を巡らせ、魔素の干渉を無くして石化を解き、溜気で周囲の魔素を弾く。
と同時に奴が目の前に現れて直刀を振り下ろす。
「動けないだろ。死ね」
「そうでも無い」
「っ!?」
振り下ろされた直刀を身体を逸らして避け、驚いて一瞬固まった奴の隙を逃す事なく、刀を1秒以内に4回振り抜くと奴の四肢を切断し、魔糸を胴体に巻き付け捕え……たと思ったら霧のように四散して消滅。
「分身か」
「正解」
足元の影から出て来た奴の直刀で、左腕を斬り飛ばされてしまう。
心臓を狙ってたのでギリギリ避けたら左腕を斬られてしまった。
続けて奴は、回転して直刀を首目掛けて振り抜いて来ると直刀を持つ右腕の肘が爆発して弾け飛び、血を撒き散らす。
それでも止まる事無く、残った左腕で右腕に捕まれていた直刀の刃の根元を掴み、俺の首を狙う。
が、奴の全身に魔糸を巻き付き、刃が俺の首に当たる直前で止まり、奴は動けなくなる。
「糸? こんな物」
「あぁ、それは切れないぞ」
「それはどうかな? ……っ!?」
「お前の魔力を縛った。ついでに身体もな」
「魔力を縛るだと? ……なるほどな。警戒する訳だ」
念のため、奴の四肢を斬り落とし、傷口を焼いて出血を止めておく。
まだ死なれたら困るので。
斬り落とされた腕を魔糸でくっ付け、印を書いて腕を治し、錬成印で服も直す。
この野郎。
いつ影に潜ったんだ?
あの動きは上手かったな。
最初から分身だった?
いや、魔眼で視た時奴は確かに本物だったぞ?
うむ……たぶん石化を解くのに一瞬意識を離した隙に、分身と入れ替わったのかも?
幹部を捕らえたのでサスケさんに念話で伝えると、外で戦ってるサスケさんが割れた窓から入って来た。
「流石キジ丸君だな」
「雑魚は?」
「まだ居るがそいつを無力化した事が分かったようで、一斉に退いたようだ」
サスケさんが歩いて来ると空中に魔糸で張り付け状態の幹部が、サスケさんを見て一瞬反応したのを見逃さない。
「お前が暗黒街の幹部か?」
「さっさと殺せ」
「苦しまないよう殺してやるから、1つだけ質問に答えろ」
少し間を空けてサスケさんが聞く。
「暗黒街のトップと他の幹部達はどこに居る?」
「さあな。俺が知る訳無いだろ。ほら答えたぞ。さっさと殺せ」
「その言葉を信じると思ってるのか?」
流石忍者。
かなり鍛えていたようで心眼でも視えない。
だが、瞳術の使い方をこの戦いで学んだのだ。
目に魔力を点で重ねて心眼を発動させながら今度は、俺が問う。
「トップと幹部はどこに居る?」
「言っただろ? 俺は知らない。互いに知らなければ情報は漏れないからな」
『政府の中枢がアジトだと、誰も思わないだろう』
マジか。
暗黒街のアジトがまさかそんな所にあるとは。
なるほど、街全体がアジトというのはあながち間違いでは無さそうだ。
「サスケさん、政府の中枢ってどこか知ってる?」
「ああ、街の中心にある。どの建物よりも高い4つの高層ビルが、この国の中心だ」
あぁ、あの遠くに見えたビルか。
確かに他の建物よりも一際高かったな。
「そこに暗黒街のアジトがあるらしい」
「お前、心眼持ちか、だが俺は視えないように訓練してるから視えないはず」
「良い使い方を学んだのでね。ハッキリ視えたよ」
「ならこいつに用は無いな」
すると幹部は、ニヤっと笑みを浮かべ口を開く。
「遅かったな」
「何が……っ!?」
頭上から殺気が迫って来たのでサスケさんと一緒に後方へ跳ぶと、崩れた天井から1人の見知った男が幹部を張り付けにしていた魔糸を切り、解放すると達磨状態の幹部を脇に抱える。
「よう。久しぶりだなキジ丸」
「サイ?」
「親父も、久しぶりだな。まだ生きてたのか」
「サイは死んだはず。何者だ?」
「おいおい、息子の事が分からないのかよ? ボケたか?」
サスケさんの様子からして、サイの死体を見たのは間違い無さそうだが目の前のサイは本物だ。
なるほど、サイは生きてたのか、それで裏の忍びになったと……あぁ~なんだろ、この湧き上がってくるイライラは。
知り合いが落ちた事への怒り?
それとも、知り合いが落ちた事への情けなさに対する怒り?
いや、自分の知り合いに落ちる奴が居た事への怒りか?
とりあえず……話を聞くために捕えよう。
邪魔する奴は始末する。
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