第187話 魔食虫。

部屋の中に転がる男達の死体。

その中で、1人の男を魔糸で逆さまの状態で吊るし、尋問をしてる最中だ。


あの後、不動金剛術で動けなくしてから魔糸で縛り、1人ずつ情報を引き出しては習得したスキルを試して最後の1人となる。

陰陽術、霊源、魔導領域といろいろ試した。


「トップの居る場所は?」

「だから本当に知らないんだよ」

「ん~……あっ、お前は召喚にしよう」

「は? しょうかんって何の事だ? おい、知ってる事は全部話したぞ? 何をやってる? おい!!」


男の声を無視して俺は、召喚術を発動。

すると床に魔法陣が出現し、大量の虫が湧き始める。

これは、下級召喚陣で召喚出来る最弱と言って良い程の虫で、戦闘能力は殆ど無い。

だが、こういう時には役に立つ。


虫は、ムカデやゴキブリに似た虫や見た事も無いような虫も多数居るのだが、全て肉を喰らう虫だ。


「お、おい、やめろ」


ゆっくり男を床へ下ろして行き、魔糸でグルグル巻きにされた男が床に横たわると、虫たちで囲む。


「へへ……虫が何だってんだ? 俺はもっと酷い拷問を知ってるぜ? っ!? な、んだこの虫は?」


男も気付いたようだ。

この世界には存在しない虫に。


「それは肉を喰らう虫で『魔食虫』というらしい」


訓練の時に召喚して契約した虫だ。

大量に居るがこいつらの中に1匹、女王が居てそいつと契約した。

召喚術で何を召喚しようか悩んだ結果、戦力はカゲと夜叉が居るのでこういう時に使える召喚虫をイメージして召喚すると成功。

使う機会が無かったのです。

出番があって良かった。


「肉を、まさか……」

「口や耳、穴という穴から入って身体の中から喰らうらしい。脳は最後に食うので痛みは最後まで続く。しかも正気を保てるように成分を分泌しながら食べるそうだ。試すのは俺も今回が初めてで、どうなるか楽しみだよ」

「わ、分かった。言うから楽に殺してくれ」

「どんな情報?」

「マスターの居場所は本当に知らない。ただ先程聞いていた暗黒街について……」

「何だ?」

「……暗黒街の連中は、どこにでも居て常に街中で起きてる事を把握してる」

「それは知ってる。他には?」

「今この会話も聞いてるはずだ」

「それで?」


男は笑って答える。


「暗黒街よ! こいつを殺せ!! こいつはっ!? ぎゃああああああ!!!!」


一気に虫が男を覆い、虫が奴の体内に入って食い始めた。

この状況も暗黒街は見てるのか……何もしてこないな。


そこで俺の肩にハチに似た虫が1匹とまる。

契約した女王だ。


『キジ丸様』

「ベルズ、この部屋にある死体は全部食って良いぞ」

『フフ、この子達もお腹を空かせてるから有難いです』


男は暫く悲鳴を上げていたが数分で肉は全て食われ、骨と装備品だけが残り、虫たちは他の死体へ移り食っていく。


どうやら男は、本当に何も知らなかったようだ。

スキルを試しながら心眼で視たので間違い無い。

ただ召喚を試したかっただけなんだよね。

契約したからたまに食事も与えないといけないし、今回は丁度良かった。


5分程で全ての死体を骨だけにした虫たちを送還すると、部屋の中を探るが特に何も無いので影に潜り、影渡りで地上へ向かう。



講義は既に終わっており、講堂には誰も居ない。

どういう状況かダンに念話で聞くと、役職がある者を1人ずつ暗殺して残りが居ないか探してるとの事。


『一般信者に気付かれてないか?』

『シスターに変装し、暫く役職のある者は、大事な会合があり会えないと伝えてますので問題ありません』

『良いね。関わってる奴の始末は任せる。俺はトップの居場所と暗黒街を調べる』

『承知しました』


念話を終了し、影渡りで路地裏へ移動。

そこでサスケさんに念話で、武双連合のトップは居たか聞くと。


『いや、武双連合に決まったアジトが無くてね。街中をしらみつぶしに探して構成員から情報を引き出しながら始末してるんだが、誰もトップの居場所を知らないようだ。女神の懐の方はどうかな?』


俺は経緯を伝える。


『なるほど、四皇帝の会合か……どこか街ではない場所かもしれないね』

『残りの暗黒街に接触してみます』

『どこに居るか分かったのか?』


急に声が低くなるサスケさん。


『サスケさん、暗黒街に執着してるようだけど、何かあったんですか?』


すると少し間を空けて答える。


『……忍びの、里の長として間違ってるとは思うが、暗黒街の者にサイが殺された』


サスケさんの息子。

しかしサスケさんも忍者だ。

息子の仇を討つためとは、どうしても思えない。


『それはいつ?』

『150年程前だったかな? チャルドム共和国に潜り込み、情報収集してる時に』

『それが暗黒街の者がやったという証拠は?』

『死体にメモがナイフで張り付けられていた』


その内容は『暗黒街へ迷い込んだ子羊は、闇に飲まれる』という一文だけ。

他の者が暗黒街に罪を擦り付けるために書いた可能性は無いのか聞くと。


『私もその可能性は考えたよ。だが時間を掛けて調べた結果。そのメモは間違い無く暗黒街の者だと判明した』


この街というかチャルドム共和国で暗黒街の名を騙って何かやると、暗黒街に始末されるらしい。

一度暗黒街の名を使った殺人があったらしいが後日、犯人の死体が街中に吊るされ、死体にメモがあった『暗黒街の名を語る者は、闇に飲まれる』と。

それ以降、暗黒街の名が勝手に使われる事は無くなったそうな。


『つまり、その事件の後にサイは殺されたと?』

『ああ』

『サイの仇を討つために探してるんですか?』


そこでまた少し間を空けて答える。


『仇を討ちたい訳じゃない。サイも忍びの者、覚悟はしてただろう』

『ではなぜそんなに執着を?』

『執着してる訳ではないが……サイが覚悟していたのは分かっている。しかしやはり息子を殺されたのでな。サイには私の後を継がせようと思っていたのだ』


そこは人の親って訳ね。


『冷静に対処出来るなら何も言いませんよ』

『勿論、律する鍛錬はしてるので問題無い』

『じゃあ、暗黒街と接触出来たら念話します』

『ありがとう』


念話を終了し、路地裏の奥へ向かう。

暗黒街……俺の知り合いを殺した事を後悔させてやろう。

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