第184話 第二?職業。

隣の部屋へ吹っ飛ばされた俺は、回転して着地すると少し滑って止まり、さっさと殺そうと立ち上がって歩き出すと穴の中から長男が、ズボンと靴を履いた状態で出て来た。

早着替え。


「今ので死なないとは、やるなぁ」

「鍛えてるからね」


何やら先程までと雰囲気が違う。

盛ったサルがスッキリして落ち着いたのか?


「お前じゃ俺には勝てない。その理由を教えてやろうか?」

「いや、必要無い」


俺は縮地で奴の背後に回り、答えると同時に斬るが奴の姿が霧のように四散して消滅すると、背中に強烈な衝撃を受けるが、吹っ飛ぶ事なく更に衝撃が走る。


「ハハハッ! どうだ!? お前の攻撃なんて当たらねぇよ!!」


そう言いながら俺の背中を殴り続ける長男。

そこで俺は、空蝉術で少し離れた場所へ瞬間移動。


「ん? どうやって避けた?」

「お前と同じだ」


答えながら首をコキっと鳴らし、身体を解す。

この男、忍者だ。

先程避けたのは空蝉術。

殴っても吹っ飛ばないのは、俺の技の深撃と同じような事をしていた。

忍者の特性である魔力を纏うと、天井や壁に貼り付ける。

その特性で殴った時、吹っ飛ばないようにしたのだ。


だが奴がやったのは、ただ吹っ飛ばないようにしただけで俺の深撃とは違う。

深撃は同じように拳に引っ付けて吹っ飛ばないようにしてるが、力を全て相手に伝えるためには、引っ付けるタイミングが重要である。

奴はそのタイミングが分かってないので、引っ付けて飛ばないようにしてるだけだ。


「お前も忍者か」

「お前のような変態が同じ忍者とは、忍者の先輩として始末しないとな」

「はっ、俺に勝てるのは親父だけだぜ?」

「そういうの何て言うか知ってるか?」

「は?」

「井の中の蛙って言うんだよ」


先程言ったのにこいつは気付いてない。

俺はどうやって避けたのか聞かれて『お前と同じだ』と答えたのに、本来空蝉術で避けると背後に瞬間移動するはずが離れた場所に移動した事を見逃してる。

普通の忍者なら気付く事だ。


「お前も誰かの証を奪ったな?」

「何だ、知ってんのか……なら死ね」


奴が両手で印を結ぶと、目の前に大きな火球を生み出す。

こいつは馬鹿か。

アジトが吹っ飛ぶぞ?

俺はすぐさま全力の不動金剛術を発動。

すると火球は四散して消滅。

身体、魔力、思考を縛ったので奴は、口を開けて一点を見つめたまま固まる。


忍者の証を誰かから奪った。

魏王一家は、確実に根絶やしにしないとな。


歩いて近づくと腰の刀で奴の首を落とし、髪を掴んで奥の部屋へ戻ると妹は、下着を履いてソファに座り寛いでいた。


「あれ? お兄ちゃんは?」


首を放り投げると弟の首の横に落ちる。


「お兄ちゃんも首だけになっちゃった。でも、口があるなら私のここを舐められるよねぇ?」


そう言って長男の髪を掴んで自分の股へ持っていくサイコパス。

弟の首も掴んでキスをし始めるド変態。

瞬殺で妹の首を斬り落とす俺。


何なんだよこの兄妹達は、どんな育て方をすればこうなる?

親の顔が見てみたいわ。

って、結局親の居場所は分からなかったな。

心眼で視ても分からなかった。

…………よし。


俺は3人の首をテーブルに並べ、鳥の式紙を作ると部屋の隅に待機させておく。


「誰か帰って来たら教えてくれ」

「クアッ」


鳥が頷いたので影に潜り、アジトを後にした。

魏王一家のトップも、ド変態なんだろうなぁ。



街中の路地裏へ移動すると女神の懐のアジトへ行こうかと思ったがその前に、アマネに2つの職業に就けるのか念話で確認する。


『2つの職業ですか? そんな話は聞いた事ありませんがそうですね……以前の世界、ゲームの時だとシステム的に無理ですが、この世界なら可能でしょう』

『あいつらが2つの職業にしか就いてないのが気になったんだけど? 3つの職業には就けない? 欲を言えば全部の職業に就く事は可能かな?』


すると少し間を空けて答えた。


『……確証はありませんが、その者達が3つ目の職業に就かないのは、おそらく魂が耐えられず、死んだ者が居る可能性が高いですね』

『魂が耐えられない?』

『はい、職業の証は魂と繋がっています。それで職業の力を得るのですが、いわば魂は職業の器、3つの職業に就く程の器が無いのでしょう』

『器以上の職業に就くとどうなると思う?』

『確実に死ぬでしょうね。肉体は爆発するか消滅、下手をすれば魂すら消滅する恐れがあります』


うむ、じゃあ無難に2つまでの方が良いのかな?


『ですが頑張れば、幾つかの職業を得られる可能性はありますよ』

『えっ、マジで?』

『はい、あなたというよりは、元プレイヤーとゲーム世界の住人ですね。この世界の住人はどれだけ頑張っても2つの職業にしか就けないでしょう。プレイヤーだと頑張れば4つか5つ、元住人だと3つか4つですね』

『ゲームから来た俺達の方が魂が強い?』

『はい、次元を超えてますからその分、この世界の住人より魂の強度は強いでしょう。ただキジ丸は、ユニークスキル職神がありますから全ての職業に就ける可能性はあります』


アマネの話しによるとユニークスキルは本来、1人1つだが俺はアマネのお陰で2つ持っている。

ユニークスキルは魂を成長させてくれるので俺は、他の人よりも魂が強いそうだ。


『それに職神があれば、職業による負荷も軽減してくれるはずです』

『おお! なら全ての職業に就ける!?』

『ですが、一気にやると確実に死ぬので、少しずつ職業を得た方が良いでしょう』

『あっ、はい』

『それと、この世界の住人でも何度か転職してる者やクラスが高い者も、3つか4つくらいまでなら就ける可能性もあるかもしれません。クラスアップや転職は、魂の成長に繋がりますから』


へ~、そういう仕組みなのか。

なら最上位職業になってるゼロやヒヨも、その分多くの職業に就けるって事だな。


『ゲームだとバランスがあるので無理でも、この世界なら複数の職業に就ける。これも世界が成長した結果かもしれませんね』


人の思いで世界は成長するってやつか。

職業という地球には無い力がある世界。

今後、どう成長していくのか楽しみだな。


『ありがとう、他の職業に就いてみるよ』

『くれぐれも無茶をしないように、気を付けて下さいね』

『了解』


念話を終了すると俺は、訓練空間へ転移した。

あそこなら死んでも大丈夫だろ。



訓練空間に来た俺は、さっそく新たな職業を得ようとするが何の職業にするか悩む。

何が良いかな?

一気に全部の職業を得られないし、今必要な職業といえば……特に無い?

うむ……初期職業を順番に取得していくか。

あっ、派生職業の証って創れるのかな?


…………うん、創れるっぽい。

でもまあ、基本の剣士から就いていこう。

と、剣士の証を創ると右手に光の粒子が集まり、装飾の入った剣が出来上がる。

その剣で指先を切って血を付けると魂に収納し、少し動かず身体の調子を確かめると、目の前に画面が開く。


『職業剣士に就きました』

『ユニークスキル職神により、剣士に連なる職業を全て取得』

『剣士、双剣士、剣舞士…………剣豪、剣王、剣帝、剣聖、剣神のスキルを取得』

『職神により剣士系統のスキルを統合し【剣神】スキルへ進化しました』


えーっと、剣士に就いたら剣士系全ての職業に就いた事になった件。

職神パネェ。

聞いた事無い職業まであったし。

あっ、身体はなんともないので一安心。


しかしこれは、迂闊に他の職業に就けないのでは?

いや、剣士から転職したと考えれば大丈夫か?

……魔法使いに付いたら魔法剣士とかの職業も、自動で取得して一気にキャパオーバーで爆発とか無いよな?


……職神を信じよう。

頼むぞ!

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