第182話 二つ?

部屋の奥にある扉を開け隣の部屋へ入るとそこは、豪華な家具に絨毯、座り心地がよさそうなソファや装飾品、絵画なども壁に飾られた広い部屋。


部屋の中には、ソファに座った男が2人、奥のダイニングテーブル席に3人座ってカードゲーム中の計5人が寛いでいた。

ちなみに全員スーツだ。


すると奥のダイニングテーブルに座ってる内の金髪が席を立ち、こちらに歩きながら口を開く。


「あいつら、たかが1人も始末出来ないのか」


雰囲気からしてこの部屋に居るのは、幹部っぽいな。


「魏王一家のトップはどこに居る? あの奥か?」

「何の用か知らないが……死ね」


すると男は、おふだをどこから取り出したのか指の間に挟み、俺に向かってお札を飛ばす。

陰陽師か。

なら俺もと思い、鳥の式紙を作り紙を投げると途中で鳥に変わり、飛んで来るお札にぶつかり相殺。


「ったく、大人しく死ねば良いのに」


金髪はそう言うと、奴も式紙を出すと目の前に、スーツを着た爺さんと若い金髪の女が現れる。


「そいつを殺せ」

「了解」

「はっ!」


爺さんと女は、物凄い速さで迫り、右側から女が拳を打ち込んで来たので避けると同時に左側から爺さんにぶん殴られるが爺さんの拳を右手で受け止める。


「良いね」

「ふんっ」

「次は俺だな」


爺さんの拳を掴んだ状態で引っ張ると女に爺さんをぶつけ、重なったところで踏み込みと同時に爺さんの背中に、拳を打ち込む。


「かはっ!?」

「うぐっ!?」


重なった爺さんと女は、術理によって全てのエネルギーが伝わり、更に魔力による溜気を放った事で、爺さんと女の胴体に大きな穴が空くと2人は霧のように四散して消滅。


「式紙じゃなくて本人が来いよ」

「はぁ~、面倒くせぇ……」


金髪は怠そうに言い、少し間を空けるとその場から姿を消した瞬間、俺は身体を逸らす。


「チッ」


奴は、瞬時に懐に入り、いつの間にか持っていた刀を斬り上げて来たのだ。

なのでギリギリ避けたのだが、陰陽師にしてはかなり腕が良いな。


そこから男の連撃が始まるが、全てギリギリで避けながら観察。

重心移動、刀の振り方、目線、全てが達人の域に達してる。


「おいおい『コール』の攻撃を全部避けてるぜ?」

「やるねぇ」


と、ソファに座ってる黒髪2人がそんな話をしてるのが耳に届く。

この金髪、コールという名前か。

それにしてもこのコールという男の動き、妙な違和感があるぞ?


「チッ、何で当たらねぇんだよ? 面倒くせぇな。さっさと死ねよ」


気になったので看破で見ると、おかしな項目を発見。


『職業:陰陽導師、剣帝』

「はっ?」

「フッ!」


一瞬気が逸れてしまい咄嗟に避けるが、左腕を斬り落とされてしまう。

すぐさま後方に跳びながら魔糸で腕を回収。

切断面に魔糸で着けると、体内に印を書いて治す。

手を閉じたり開いたりして感覚を確かめると、問題無く治った事を確認。


「すぐ治るとかおかしいだろお前」

「いや、お前の方がおかしいだろ」

「はぁ? どこがだよ」

「何でお前『陰陽師と剣帝』の職業を持ってるんだ?」

「……さぁ? 話すのも面倒だし、さっさと死ねよ」


変わらず怠そうに言うコール。

ってか、2つの職業に就けるの?

他の職業スキルを習得する事が出来るってのは知ってるけど、職業を2つ?


「……お前、プレイヤーか?」

「プレイヤー? さあな?」


するとソファに座っていた1人の黒髪が言う。


「ここに居る俺達は、全員この世界で生まれ、親父おやじに育ててもらった者達だ」

「その親父がプレイヤーか?」

「いや? そんな話は聞いた事無いな」


するともう1人の黒髪を後ろで縛ってる者が口を開く。


「確か親父は、別の世界出身とか言ってたね」

「マジか?」

「それなら俺も聞いた事がある」


と、奥に座ってる青髪が言う。

別の世界出身。

でもプレイヤーじゃないとすれば、ゲームの住人NPCだな。

しかし、住人でも2つの職業に就く事は出来ないはず。

この世界で生まれた者は、そういう特性を持ってるのか?


って、プレイヤーでも出来ないか。

だが目の前に、2つの職業を持った者が居るのは間違い無い。

いや待てよ?

現実になったこの世界なら、2つの職業に就ける可能性があるのでは?

ゲームならシステム的に無理でも現実になったこの世界なら、可能性はある。


ん?

それでもおかしい。

例え2つの職業に就けたとしてもなぜ『職業の証』を持ってる?

どこで……っ!?


「お前ら、他人の職業の証を奪ったな?」


その瞬間、部屋の中の空気が一気に張り詰める。

明らかに空気が変わった。

図星か。


すると座っていた奴らが席を立ち、全員金髪の横に並ぶと黒髪が口を開く。


「まさか偶然とはいえ、その事を知られるとはな。知られたからには、ここから生きて出られると思うなよ?」


なるほど、全員2つの職業持ちか。

そうだよな。

ゲームの時から職業は1つという概念のせいで、まったく思いつきもしなかった。

他の職業を得るには、転職しか無いと思ってたが、他人の証に血を垂らせば、その職業に就けるのだ。


おそらく脅して証を出させたんだろう。

殺してしまえば証は消えるからね。

流石犯罪組織。

そんな事を思いつくとはな。


つまり俺は『全ての職業に就ける』という事になる。

自分で証を創れるからねぇ。

クックックックッ、これは良い事を知れた。

でも、なぜ全員『2つ』しか就いてないんだ?

もっと就けばそれだけ強くなれると思うんだけど。

何か制限があるのか?


これは一度、アマネに相談した方がよさそうだな。

3つの職業に就いたら爆散するとか最悪だし。


俺はニヤっと笑みを浮かべ、奴らに告げる。


「良い事を教えてもらったお礼に、苦しませずに殺してやろう」

「その前にお前が死……」


全員不動金剛術で動きを止めたところで、魔糸によって首が床に落ちた。

さっさと終わらせてアマネに聞こう。

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