第181話 カチコミ。

エントランスから奥の通路を進むと1階の外廊下が左右に伸びており、右側にはエレベーターがあるのでボタンを押すと扉が開く。

ちゃんと動くんだ。


なんて思いながらエレベーターに乗り込み、最上階の12階を押し、扉が閉まろうとしたところで、手で止められ扉がまた開くとそこには、顔に布を巻いて目だけ見せ、紺色のスーツを着た男が立っていた。


「誰だお前?」

「その顔、火傷か?」


男はエレベーター内に入り俺の目の前に立つと、顔を近づけてジッと目を見ながらもう一度言う。


「誰だ?」

「魏王一家のトップに会いに来たんだけど、居る?」

「誰だ?」

「居ると良いんだけど、居ないなら……」


男は腰に右手を回し、ナイフを取り出すと俺の首に刃を添える。


「誰だ?」

「全員殺せば出て来るかな?」


その瞬間、男はナイフで俺の首を斬ろうとしたので後ろに下がって避けると、斬り返して来たので右腕で奴の腕を止め掴むがナイフを離し、落としたナイフを左手で掴むと迷わず腹を目掛けて突き刺して来る。


掴んでる奴の右腕を引っ張り、左腕を遠ざけると横っ腹に膝を入れ、腕を掴んでいた右手で奴の顔面を掴み、エレベーターの壁に後頭部を叩き付けると壁が少しへこむ。


それでも男は左手に持つナイフで俺に襲い掛かり、刃が俺の横っ腹に刺さる直前、掴んだ顔に力を入れ、奴の頭蓋がメキメキと音を立てナイフを落とし、顔を掴んでる腕を両手で掴み、引き離そうとする。


「ぐぅあああああ!!」

「なあ、トップ、マスターは居るのか?」

「がっ、あ……」


そこでエレベーターの扉が閉まり、最上階へ向かって動き出す。


「最上階に居るんだよな? さっさと答えないと頭潰れるぞ?」

「ぐっ……あ……」


男はとうとう白目になって気絶し、掴んでいた腕がだらんと垂れ下がる。

結構根性あったな。

こいつも不老なのか?

と、エレベーターが到着して扉が開いたので廊下に出ると、左側の廊下にスーツを着た数人の男達がライフルを構えて待っていた。


「死ねぇ!!」


撃ち始めたので掴んでいた男を盾にして走り出す。


「なっ!?」


少し近寄ると掴んでいた男をライフルの男に投げつけ、体勢を崩したところでライフルを奪い頭に銃口を向けて引き金を絞るとパン!! と乾いた音が1発響き渡り、男は絶命。


続けてその場で片膝を突き他の男達を撃つが外し、全員窪んだ玄関の陰に隠れる。

うむ、銃を初めて撃ったけど味気ない。

立ち上がってライフルを捨てると、隠れた奴らの方へ歩いて行く。


すると陰から銃口をこちらに向け撃ち始めたので、右手に脇差しを取り出し縮地を使って廊下を突き当りまで一瞬で移動。

脇差しを振って血を掃うと隠れていた男達は、首から血を噴き出しその場に倒れた。

ちょっとだけ影明流・瞬殺だな。

と、脇差を収納。


空間感知、魔力感知、気配察知で周囲を確認しながら突き当りの部屋の扉を開けると、数メートル廊下が続いており、その先は部屋の壁を無くしたのか、広い部屋になっていた。


幅は約13メートル程、隣の部屋を幾つか繋いでるようで、長さは約30メートル程ある。

丁度中央のエレベーターがある所まで繋がってる感じだ。

部屋の中は、ソファやテーブルが幾つか置かれ、仕切りが置かれていて区切られており、二段ベッドが5つ壁沿いに置かれてる部屋。


「撃てぇ!!」


男達が仕切りやベッドに隠れていたが、既に把握してあるので問題無い。

ライフルやマシンガンで弾丸の雨が降るが、避けるのが面倒になったので周囲に結界を張り、銃弾を防ぎながら歩いて行く。


「効いてない!?」

「この化け物が!!」


ここにトップは居なさそう。

奥かな?

なんて思いながら歩いてると銃弾が止み、突然目の前に赤髪でスーツを着た男が姿を現し、トンファーのような形をして刃になってる武器を持ち、殴り掛かって来た。


だが結界があるので大丈夫と思っていたら結界を破壊し、蹴りを放って来たので咄嗟に腕で防ぐと床を数メートル滑って後退させられる。


「良い蹴りだな」

「誰だ? ここがどこか分かってんのか?」


おお、見下すような態度、自分達が強者だと思い込んでる典型だな。

まあ、確かに良い蹴りだったけど、俺からすればまだまだ。


「魏王一家のアジトだろ? トップは居るか?」

「なんだ? 誰かの復讐か? 偶に居るんだよなぁ。お前みたいな馬鹿が、恋人の復讐か? それとも親か? そんなに死に……はっ?」


奴が話してる間に、両腕を魔糸で切断しました。


「話が長い。トップは居るのか聞いたんだ。居るか居ないかだけ答えろよ」

「この……殺す」


すると奴の両腕が一気に再生し、落ちた腕から武器を拾うとかなりの速さで迫り、殴りかかって来た拳を躱すと手首を捻り、刃が迫る。

後ろに身体を反らして躱すと逆の拳が迫って来たので、奴の拳に拳を打ち込む。


「っ!?」


奴の左拳がバキバキに折れ武器を床に落とし、後方に跳んで距離を空ける。


「面白い武器を使ってるな。良い経験が出来たお礼に、俺も見せてやるよ」


そう言って首をコキっと鳴らし、少し腰を落とすと縮地で奴の懐に入ると拳を奴の胸に添え、床を蹴った力と縮地で生じたエネルギーを身体の中を通し、腕を伝って拳から奴に伝えた瞬間、衝撃波が発生して周囲の物が弾け飛ぶが男は、その場で立ったままだった。


「これが術理だ」

「化け、物……ゴポッ」


奴の胸には、直径10センチ程の綺麗な穴が空いており、奴の後方の床には、血肉が噴き出したように散らばり、口から大量の血を吐き出しながらその場に倒れ絶命。

魔力を使わず術理だけで威力を出す訓練をしてるが、魔力を使うと俺の身体能力だとこうなるのだ。


「さて、お前らは掛かって来ないのか?」


俺と赤髪の戦いを見ていた者達は、銃を捨てて物凄い速さで逃げ出そうとしたので、不動金剛術で動きを止め、魔糸で全員の首を落としながら奥へと進む。

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