第180話 魏王一家のアジト。

店を出るとサイルカ達が、ちゃんと見張りをしていた。


「解剖されたんじゃ……」

「何で生きてる?」

「レオンさんは?」

「おい、レオンさんはどうした?」


サイルカに聞かれたので最後の言葉を伝える。


「絶対いつか俺を解剖するってさ。じゃあな」

「おい!」


無視して店を離れると、4人が店の中へ入って行くのを感知。

レオンの死体は無いのでバレる事は無いだろう。

夜になったら死体を処分しないとな。


いきなりスカウトを受けて暗黒街の情報が入るとは、ラッキーだった。

では、行こうとしてた魏王一家のアジトに向かいますか。


ギルドで聞いた場所へ向かうと、古いマンションが幾つも集まった一棟が魏王一家のアジトらしい。

アジトに近付けば、ガラの悪い連中が増え、道の端に数人で固まり話をしていたり、建物にもたれて掛かり1人で煙草を吸ってる者や、車を数台停めて音楽を流していたりと、かなり治安の悪い地域のようだ。


魏王一家のアジトが見えて来ると、黒で統一された服を着た6人の男達が道を塞ぐ。


「おい、迷子か?」

「いや、魏王一家に用があって来た」

「俺達に何の用だ?」

「上の者の所へ案内してくれるのか?」

「あ”っ?」

「じゃあお前らに質問……暗黒街について何か知ってる事は?」


全員の顔を見るが、何も知らないようだ。


「ほら答えられない。上の者なら何か知ってるだろ。トップが居れば良いんだけど居る?」

「お前、死にたいらしいな」


ニヤっと笑う男達。


「お前ら、警察呼ばないよな?」

「バカか? 警察を呼んでも助けてくれねぇぜ?」

「いやいや、お前らが呼ばないか聞いてんの」


警察が来たら面倒だからね。


「はっ?」

「何言ってんだこいつ?」

「俺達が警察を呼ぶ?」

「バカなんじゃねぇの?」

「持ってる金全部出せば、命だけは助けてやるぞ? ただし、俺達の玩具になってもらうがな」

「的にして遊ぶか?」

「良かった。馬鹿で」


そう言って前に立つスキンヘッドだけ残し、他の者達の首を魔糸で斬り落とし、血を噴き出しながらドサッと身体が力無く倒れる。


「っ!?」


スキンヘッドは、真剣な表情で死体を見ながら口を開く。


「お前がやったのか?」

「さあ? 勝手に首が落ちたんじゃね? それより、トップか上の者の所へ案内してくれよ」

「おい! 敵襲だ!!」


スキンヘッドがそう叫ぶと、周囲に居た者達や建物の中から同じように黒が基調の服を着たガラの悪い者達が出て来て俺を取り囲む。

男達は全員殺気立ち、手には剣や短剣、斧やハンマーなどの武器を手にし、今にも襲い掛かりそうな雰囲気だ。

まあ、気配察知で攻撃する際は気付くけど。

今はまだその気配は無い。


「俺達に手を出してタダで済むと思ってるのか? お前の家族、友達、恋人、ありとあらゆる関係者を見つけ出し、追い込みをかけて殺してやる」

「俺の関係者? なるほど……頑張れ」


全員お前らに殺されるような奴じゃないからな。


「もし殺せたら称えてやるよ」

「出来ねぇと思ってるのか?」

「ん~……まあ、出来ないだろうな。その理由は、お前ら今日で潰れるから」

「この人数を1人で相手に出来ると? あいつらの首をどうやって落としたのか分からねぇが……殺せ!!」


しかし、誰も動かない。

いや、動けない。

俺が威圧を全開で放ってるからだ。


すると殆どの者達がその場で泡を吹いて気絶する。

スキンヘッドだけは、ガクガク震えながら腰を抜かしその場で座り込むと、小便を漏らす。


「悪いな。さっき戦闘をしてまだその熱が少し残ってたようだ。まだまだだな俺も」


レオンとの戦闘でちょっと興奮したようで、全開で威圧を放ってしまった。

まあ、スキンヘッドだけは、少し外してあるので気絶はしてないが。

周囲の建物内に残ってる者が全員気絶した事を空間感知と気配察知で把握し、威圧を解除。


「なあ、トップの所に案内してくれるか? それとも死ぬ?」

「ヒッ!? わ、分かった! あ、案内する!」

「よし、じゃあよろしく」


スキンヘッドは、ガクガク震える足で小鹿のように立ち上がり、歩き始めたので後を付いて行きながら問いかける。


「安心しろ、あいつらは気絶してるだけだ。暫くしたら目を覚ます」

「っ!? な、何をした? いや、何をしたんですか? そそれにああの感覚は……」

「あれは俺が放った威圧で、お前達が感じたのは、死の恐怖だ」

「死の恐怖……」

「そう言えばお前らって不老なんだろ?」

「い、いえ、不老なのは上の人達だけで、手柄を上げれば俺達も不老にしてもらえる、ます」

「全員じゃないのか」

「そそれは、女神の懐の事では? 全員不老って噂があります。本当かどうかはわ、分かりませんが」


全部の組織は、全員不老だと思ってたけど違うのか。

確かにこいつらが不老とは思えないしな。


「昔から居る人は、全員不老です。俺達のような落ちこぼれを受け入れてくれるのは、魏王一家だけです」


魏王一家は、若いチンピラを受け入れて不老になりたければ、組織に貢献しろって事か。

そう言えばサイルカも不老だったのかな?



なんて話をしながら歩いて行くと、少し古いマンションに到着。

どうやらここがアジトらしい。


「この辺り一帯がうちのアジトで、このマンションの最上階に、マスターが居ます。俺が案内出来るのはここまでです。俺達は入れない領域なので」

「へ~、じゃあ後は、勝手に行かせてもらおう」

「それじゃ俺はここで!」


そう言って走って行くスキンヘッド。

よっぽど怖いようだ。

奴を見送ると俺は、ガラスになっていて中が見える扉に近付くと、自動で横にスライドして開き、エントランスへ足を踏み入れる。


中は昭和っぽい雰囲気の造りになっており、所々タイルが剥がれ、かなりボロい。

掃除はされてるようだ。


エントランスに入ってすぐ右手に各部屋のポストが壁に並んでおり、左手には長椅子が置かれている。

広さは、やく10畳程かな?

それ程広くはない。

普通のマンションの入り口って感じだ。


空間感知で確かめるとこのマンション、各部屋が繋がっていてかなりの人数が居る。

各階層は分身に任せて俺は、最上階へ向かうか。

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