第179話 死属性。

両腕も無い上半身だけの状態になったレオンを細切れにし、不動金剛術でギリギリ魂を縛ってるのでこの空間に残る事になる。

こいつは死んでも話さないと言ったので、殺してから死霊術で問いただす。


霊視を発動させると、奴の死体の横に奴の死霊が現れ、虚ろな目で自分の死体を見つめている。


魔力を練り、死霊術を発動させるとレオンの死霊の目に光が宿り、周囲をキョロキョロ見回す。


「暗黒街について知ってる事を教えろ」

『お前は……あぁ、俺を殺した奴だな』

「さっさと教えろ」

『言ったろ? 死んでも話さないってな』

「そうか……」


俺は大量の魔力を練り、死霊術を強める。


『っ!?』

「命令だ。暗黒街について話せ」

『ぐっ……』


レオンは頭を抱え、俺の死霊術に抗う。

死んでも我が強いなぁ。

そう言えば、死霊術って殆ど使ってないけどアベルは、自分の身体に入れて自分を強化してたな。

あれは、上位死霊術師のスキルなのか?

どうすれば死霊を従わせられる?


ただ魔力にものを言わせて従わせるのは、何か違う気がする。

術とはそんな力技じゃないはず。

死霊術は、自分の魔力で死霊を縛る事で操る術。

でも、レオンのように我の強い死霊は、魔力に抵抗して操る事が出来ない。


死霊術も特殊な魔力制御があるのか?

精錬、強化とくれば後は何がある?

死霊術に必要な魔力制御……。


何かヒントが無いかアベルとの戦闘を思い返す。

戦場の死霊を一気に従えてたアベルは、どうやって……魔力を周囲に放つだけじゃ無理なはず。

他のスキルを使ってた?

だとしたら今の俺には無理だが……いや、待てよ?

属性はどうだ?

基本属性の他に死霊術に合う属性と言えば、闇っぽいけど違う気がする。


考えられるとしたら……死属性?

そんな属性があるのか知らないけど、無ければ作れば良い。

あるとすれば死属性とは、どんな属性だ?

普通に考えれば、死の属性だが『死』とは、停止という意味もある。

活動が止まる属性? なんか違うな。

近いのは、瘴気か?

瘴気は、状態異常が詰まったエネルギーだ。

つまり、死が詰まったエネルギーが死属性?

とりあえず試してみるか、死をイメージした魔力。


先程より少なめに魔力を練り、死をイメージして魔力に乗せる。

初めて加重をやった時のように、変化は少ないだろう。

なので分身を部屋の中に10体作り、完全感覚共有で死のイメージで属性を創っていく。


すると数分後、分身と本体である俺の身体を、黒に近い紫色の魔力が包み込む。

そこで分身を解除し、頭を抱えて蹲ってるレオンの死霊に、最初と同じくらいの魔力で死霊術を発動。


『うぐ……っ!?』


するとレオンがスッと立ち、無表情で俺を見る。


「暗黒街について知ってる事を話せ」

『暗黒街は……誰も……知らない。正体を見た者は……殺される』

「ならその事をなぜ知ってる?」

『……マスターに、聞いた』

「マスターって誰だ?」

『リュウゼン』


リュウゼン?

それって人斬りリュウゼン?


「リュウゼンって、武双連合のマスターか?」

『そうだ……組織のトップと、会合してる』


なるほど。

つまり四皇帝は、互いを知ってるって事か。


「リュウゼンは、暗黒街についてなんて言ってた?」

『手を出すな』

「それだけか?」

『数は少ないが、大陸で最強の組織』


ほう、武闘派組織のトップがそこまで言うとはね。


「居場所は?」

『知らない。ただ……どこにでも居ると、言ってた』

「街中のどこにでも居るって事か?」

『この街全てを、常に見てる』


うむ、矛盾してるな。

数が少ないのに街全体を見張ってる?

……式紙? それとも使い魔か。

どっちにしろ、俺の存在も知られてる可能性が高い。


「どうすれば会える?」

『会う前に、殺される』

「……どうすれば殺される?」

『奴らは、常に見てるぞ』

「どうした?」

『見たら……死ぬ……ん? 俺は何を言ってる?』


もう戻ったのかよ。

まだ俺の死霊術が完全じゃないからな。

まあ、だいたいの事は聞けた。


街全体を常に見てる。

これは、何らかの方法で監視してるんだろう。

会う前に殺されるというのは、姿を見る前に殺されるという意味かな?

会う方法は、向こうがこちらを見てるなら呼び出す事は出来そうだ。


「いろいろ話してくれて助かった」

『俺に何をした?』

「さあな……そう言えばお前、この世界に来てどれくらい経つ?」

『お前に話す事は何もねぇ』

「そうか、もし100年以内ならお前の魂は、地球へ帰るんだが……」

『地球に? はっ、俺はこの世界が気に入ってるんだ。解剖しても捕まる事は無いからな』

「まあ、既に死んでるお前に解剖は出来ないが……消滅させとくか」

『その前に、お前の身体を頂く!』


そう言って俺に襲い掛かろうとしたレオンの死霊。

しかし、途中でピタッと止まる。

不動金剛術だ。


『なっ!? 動かねぇ!?』

「お前のような奴は、消滅した方が世の為になる。じゃあな」


そう告げるとレオンの足元から光が放たれ、奴が消滅していく。


『絶対お前を解剖してやるからなぁ!!』


そう言い残しレオンの死霊は、完全に消滅した。

俺がやったのは、光属性によるただの浄化だ。

流石にレオンでも死霊の状態だと弱いね。


さてと、暗黒街を呼び出したいが良い方法は……普通に呼び出してみるか?

街全体を見張ってるなら声を掛ければ届くはず。

それにしてもまさか、ギンジが探してる奴が武双連合のトップとはねぇ。

連絡が無いって事は、まだ見つけてないようだけど……教えてやろうかな。


そう思い、ギンジに念話を送る。


『おーい、今大丈夫か?』

『師匠、どうしました?』

『リュウゼンは見つけたか?』

『いえ、情報が中々出なくて』

『今どこに居る?』

『今はダーワンという街に居ます』


あの街か。


『リュウゼンについて情報が入ったから伝えとこうと思ってな』

『本当ですか!?』

『ああ、リュウゼンは……』


ギンジに、リュウゼンが武双連合という組織のトップであると伝え、首都に居る可能性が高い事も伝えておく。


『ありがとうございます。すぐ首都へ向かいます』

『俺も今首都に居るから、追加情報があればまた知らせる』

『はい!』


念話を終了すると俺は、レオンの死体を収納し、地下室を後にした。

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