第177話 サイコパス。
サイルカがレオンという者を呼ぶと、暫く沈黙が続いた後、奥からボサボサの金髪で白のタンクトップに深緑のズボンと黒いブーツを履いた筋骨隆々の大きな男が現れる。
相当鍛えてるな。
筋肉のバランスが良い。
「レオンさん」
レオンは、サイルカ達と俺を見た後、無表情のままカウンター席に座り、いつの間にか手にしてた酒を飲む。
インベントリか。
やっぱりこいつはプレイヤーだな。
「お休みのところすみません。この男をスカウトしようとしたら逆にやられまして、見逃す条件として暗黒街の事を知ってる者に会わせろと……」
レオンは、もう一度酒を流し込み、俺を見てニヤっと笑みを浮かべながら口を開く。
「まさかこんな所で、最強の男に出会えるとはなぁ」
「えっ? 最強?」
「お前らには、逆立ちしても勝てない奴だ」
「この男が? 確かに強かったですが、レオンさんに比べると……」
レオンはそこで、煙草を取り出して指先で火を点け、煙を吐き出す。
「レオンだっけ? 俺の事は知ってるようだから自己紹介は必要無いな。暗黒街について知ってる事を聞かせてくれるか?」
「はっ、なんで俺が話さないといけない?」
「なら言い換えよう。暗黒街について知ってる事を全部教えろ」
「ククク……お前、あの大会で優勝したから自分が最強だとか思ってんのか? だとしたらそれは大きな間違いだ」
別に思ってないけど?
強くても大会に出てない奴なんていくらでも居ただろう。
「お前より強くて表に出ない奴は、幾らでも居るぜ? 例えば俺とかな」
「ほう、それは面白そうだな……」
「他にも居るぜ? ゲームの時は表に一切出ずに、裏でずっと殺しをやってた奴とかな」
「お前みたいな奴か?」
「ハハハハ! よく分かったんじゃねぇか。地球じゃ必死に衝動を抑えて暮らしてたが、GFWのお陰で最高の人生を送れたぜ。なんせGFWなら『素手で人体解剖』が出来るんだからなぁ」
ニヤっとイヤらしい笑みを浮かべる。
あぁ、ゲームをやってた犯罪者予備軍って奴か。
元は、現実の犯罪率を下げるために作られたゲームだ。
そういう奴が居ても不思議じゃない。
ただゲームの時は、そういう奴の話を殆ど聞かなかったけどね。
本当の犯罪者は、用意周到で慎重。
決して表に出ないか。
まあ、表に出たがる犯罪者も居るけど。
サイルカ達は、レオンの様子に顔を青くして黙ってる。
恐怖を植え付けたのか。
「それで? どうすれば暗黒街の事を話す?」
「そうだなぁ……お前の身体を解剖させてくれたら話してやるぜ?」
「よし、じゃあ、さっさと解剖しろ」
「はっ?」
「「「「えっ?」」」」
「何してる? さっさと解剖しろよ」
そう言って両手を広げる。
「お前は馬鹿なのか? 解剖したら死ぬぞ?」
「お前が解剖したら話すって言ったんだろ? さっさと解剖して話してもらおう」
レオンは、何か探るように俺を見ると、笑みを浮かべて言う。
「本当に良いんだな?」
「その代わり、解剖したら話してもらうぞ? もし話さなかったらその時は……」
「どうする? 俺を殺すか?」
「じっくりお前を解剖してやる。じっくりな」
「……なら地下に行こうか、そこが作業部屋になってる。お前ら、誰も来ないように表を見張ってろ」
「「「「了解!」」」」
すぐ出て行くサイルカ達。
レオン達の気が逸れた瞬間に俺は、仕込みをしてレオンの後に付いて地下へ向かった。
地下は、床も天井も壁もコンクリートで、教室程の広さがある空間になっており、中央に手術台のような台があるが、器具などは一切無い。
ライトがあるだけだ。
「よし、そこに裸になって横になれ」
俺は服を消してさっさと台に寝ころぶ。
するとレオンは、横に立って笑みを浮かべながら両手の指先に、魔力で刃を形成する。
「言っとくが、麻酔は無いぜ?」
「さっさとやれ」
「じゃあ、遠慮くな。綺麗に解剖してやろう」
既にレオンは、悦に浸った表情を浮かべ、股間をもっこりさせてる状態。
かなりの変態である。
「生きてたら話してやるよ」
そう言ってレオンは、右手の人差し指で俺の腹を綺麗に掻っ捌き始めた。
かなり手際が良い、メスを使わずに指先で斬ると腹に手を突っ込み、臓器を取り出していく。
「クククク、綺麗な臓器だ。最高だな」
臓器を取り出すと暫く眺め、インベントリに収納。
そして心臓を取り出したところで、俺の身体は霧のように四散した。
「ん? 消えた? 心臓も……どういう事だ?」
「ハンゾウが作った分身だよ」
「っ!? お前……分身だと?」
「俺を解剖して楽しかったか? 次はお前が話す番だ。さっさと教えろ」
するとレオンは、身体をプルプル震わせ。
「ふざけるな!! まだ脳を取り出してねぇだろうが!! あのドロッとした脳を最後に取り出すのが最高なのによぉ。それを……もうすぐでイケそうだったのに、どうしてくれんだ? あっ?」
「俺はお前に解剖させた。次はお前が話す。納得出来ないなら、お前を解剖するって言ったよな?」
そう言いながら最後は、威圧を放つ。
「っ!? ほう、威圧を放てるのか、だが効かねぇぞ?」
「へ~、流石いかれた奴だ。死に対して鈍感なんだな」
「さっさとその脳を寄越せ」
こういう奴とは、初めて戦うな。
生きたまま解剖する時のこいつの手つき、まったく躊躇いが無かった。
普通の人なら多少の躊躇いはあるが、こいつはそれが無いほど頭が壊れてるんだ。
そういう奴は、かなり強い。
普通の奴が躊躇う所で、余裕で踏み出せるからだ。
俺は笑みを浮かべて答える。
「じゃあ、次は俺に付き合ってもらおうか」
「たかが表最強が調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
「裏最強が誰なのか、聞く必要が出て来たな」
ニヤっと笑みを浮かべるレオン。
「俺だ」
次の瞬間俺は、壁に叩き付けられていた。
良いね。
最高だ!!
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