第175話 ギルド支部?

影分身でチャルドム共和国に入った俺は、最初の街『ダーワン』を1日観光したが、人攫い、集団暴行、拉致、強姦といろんな犯罪現場に遭遇。

目撃した犯罪者は全て始末し、死体はインベントリに収納して街の外で処理。

マジで治安が悪すぎる。


店に入れば店員の態度は悪く、常に警戒してる様子。

一般人の心も荒んでるね。

とまあ、そんな感じで観光をした数日後。

ちなみに、本体が寝てる間の影分身は、影の中で待機させてる。


影分身は、チャルドム共和国の首都『ロンファ』に来ていた。

本体がボルケンに到着してからも影分身で観光していたが、首都はダーワンよりは治安が少しだけ良いくらいだ。


ロンファは、ラクホウより大きくてマンションや高層ビルが多く、ゴチャゴチャした感じだな。

人口が多い。

行き交う人々は、現代の地球と大して変わらない服装で、種族もいろいろ居るね。

エルフ、ドワーフ、獣人、人族、魔族と居るが小人族は居ないようだ。

通りには屋台が並び、いろんな匂いが混ざってる。


ロンファの観光を数日掛けて行い、本体の方でチャルドム共和国へ行く事に決まると、数か所人の居ない場所を見つけて印を付けておいた影に転移し、本体でチャルドム共和国の首都へ入った。



影から出て周囲を確認。

よし、誰も居ないな。

当然キジ丸のままだ。

影分身は、自分を遠くから周囲を見れる建物の屋上に配置し、感覚共有で常に周囲を監視。


さて、サスケさん達は準備をしてから来るって言ってたし、それまで組織について探っておくか。

と、その場で鳥の式紙を4匹作り空へ放ち、影で大量のネズミや虫の使い魔を作り街中へ散開させる。


チャルドムにもギルドはあるはずだし、まずはギルドに行ってみよう。

情報収集だ。


表通りに出てすぐの所に屋台があったので、おっちゃんにギルドの場所を聞くと。


「1つ買ってくれたら教えてやるよ」

「まだ両替してないんだよね」


そう言って仁皇国の通貨1000Z札を見せる。


「それで良い」

「じゃあこれで肉まん1つ」

「はいよ」

「それでギルドは?」


おっちゃんにギルドの場所を聞き、肉まんを食いながらさっそく向かう事に。

うん、普通に美味いな。



影分身で観光してる時、ギルドを一度も見かけてなかったがこの国でギルドは、かなり肩身が狭いようだ。

教えてもらった場所に到着すると、かなり入り組んだ場所にあり、人が滅多に来ないような半地下に冒険者ギルドがあった。


階段を下りて扉を開けるとカランカランと鐘の音が響き、中に入るとバーのような造りになっており、客が1人も居ない。

奥のカウンターにバーテンダーの恰好をした茶髪をオールバックにしたおっさんが1人、グラスを拭きながらこちらを見て。


「いらっしゃい」


おっさんに答えずカウンターへ向かいながらギルド内を見回し、違和感を感じる。

依頼掲示板も無ければ、買い取りカウンターも無い。

本当にギルドか?

表にはちゃんと『冒険者ギルド』という看板はあったが。


カウンターの席に座ってギルドカードを提示しながら問いかける。


「ここってギルドだよな?」

「はは、他所から来た人だな? この国じゃギルドは、一般人には受け入れられてるが、政府には邪魔者扱いされてるんだよ」

「ギルドは独立した組織だろ?」

「だから政府からしたら、邪魔なんだ」

「じゃあ、この国から撤退すれば?」

「撤退すれば何の情報も入らなくなる。それは出来ない」

「ギルドは、情報収集をして他の国に情報を売ってるのか?」


おっさんは首を横に振って教えてくれた。

ギルドは独立した組織で、戦争や政には関わらない。

そしてギルドが各街に支部を置くのは、色んな依頼を受けるためだけではなく、治安維持や戦争回避のためにあるらしい。

なので国が怪しい動きをした場合、即座にギルドは他の支部に連絡し、その情報を国に伝えたりするそうな。

その場合、お金を受け取ったりはしないとの事。

ただ、戦争を回避するための情報を渡すだけ。


「なるほどね……それでこの支部に何か依頼はある?」

「あるにはあるが、片付けや街中の掃除依頼ばかりだぞ?」

「そうか……四皇帝の組織について何か情報は?」

「犯罪組織の情報なんか聞いてどうする?」

「当然……潰す。って言ったらどうする?」

「……はは、面白い冗談だな」

「本気だけど?」


するとグラスを拭いてた手も止まり、キョトンとして俺を見るとおっさんは。


「お前、そんなに死にたいのか?」

「はっ? なんで?」

「四皇帝を潰すって、相手がどんな奴らか分かってるのか?」

「犯罪組織で上の連中は、不老って事くらいだな。で? そいつらのアジトがどこか知ってるかな?」

「はぁ~、お前なぁ。四皇帝だけでもヤバいのに、その組織の奴らを相手にするって死ぬだけだぞ? 仲間が居るんだろうが止めとけ」

「今は1人。後で仲間が合流するけど、その前に偵察だけでもしとこうと思ってさ」


ついでに潰せたら潰します。


「偵察か……ランクCの奴なんて組織にはゴロゴロ居るぞ? それでも行くのか?」

「ランクは登録したばかりだからな。ランクが強さを表してる訳じゃない」

「まあ、確かにそうだが……」

「もしかして、ここがアジトの1つだったりする?」

「んな訳ないだろ。ここはちゃんとした冒険者ギルドだ」


そう言うので店の中を見回し、おっさんを見る。


「この国の冒険者は少ないようだな」

「居る。ちゃんと居るがギルドを通さず、勝手に依頼を受けてるんだよなぁ」

「じゃあ、ギルドには金が入って来ないじゃん」

「まあ、赤字にはなってないから良いんだが」

「それで受付がおっさん1人で、バーとして儲かってるって感じかな?」

「そのとおり! あと俺はこのギルド支部のギルドマスター『ダルサム』だ」

「客は入ってないのに儲かってるんだ」

「夜になったら満席になる時もある」

「ギルドとして悲しくない?」

「それを言うな……」

「で? 組織のアジトはどこ?」

「……全部は知らねぇぞ?」

「ああ」


ダルサムの話しによると、魏王一家のアジトと女神の懐のアジトだけで、それも組織の支部で本拠地ではない。

アジトの場所を聞いてから。


「暗黒街について何か情報はある?」


何も分かってない組織だ。


「暗黒街については、全てが謎だ。構成員や活動内容、組織の規模も誰も把握出来てない。まさに暗黒だな」


情報が漏れないように徹底されてるか。


「目撃者も居ない?」

「目撃情報は一切無いな」

「なるほど、目撃者は全員始末されてるか」

「あぁだな。ここまで情報が出ないのは、そういう事だろ。かなりヤバいぞ?」

「問題無い。是非会ってみたいね」


苦笑いを浮かべるダルサム。

暗黒街を見つけるのは、ちょっと時間が掛かるかな?

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