7章 四皇帝

第173話 サスケさんの依頼。

フタバは、忍者・極の試練を受けて3回目でクリアし、忍びの証をサスケさんに返すとサスケさんは、忍者・極の職業を取得。

代わりに新しい職業の証をフタバに与え、血を垂らして魂と繋ぐとフタバの職業は、忍者・極のままだった。

まあ、これは当然なんだけどね。


試練を受けて忍者・極になったフタバの魂が成長してるので、証が新しくなっても変わらないのだ。

元から生産忍者からスタートしたフタバは、下忍からもう一度始めるのかと思ってたらしいが、ステータスを見てホッとしてたのは見逃さない。


フタバが忍者・極になる少し前に他の者達は、全員影忍へと至り、それぞれの初代へと証を返納、そして新たに自分達の証を得た事で、ここに居る者全員が忍者となった。


サスケさんが忍者・極になったので職証創造スキルを与え、今後も忍者を増やしてもらう。

サスケさんの部屋で来た時と同じ席でサスケさんと2人、向かい合って今後の話をする。


「これでここの事は、サスケさんに任せます」

「キジ丸君はこれからどうするんだい?」

「俺は、ゼルメアがあった場所を目指します。あるのかどうか分かりませんが、友達やクランメンバーも居るはずなので」

「ゼルメアか、どうやって行くつもりかな?」

「聞いた話だと、船で海を渡るか北からグルっと島国を渡って迂回するしかないらしいですね。なので、チャルドム共和国に入って船があればそれで行こうかと、無ければ北から回ります」

「ふむ……」


サスケさんが何か考え込み、ゆっくりと話し始める。


「キジ丸君、チャルドム共和国の事は知ってるかな?」


俺はこれまでチャルドム共和国について聞いた事を話した。

そして最後は、大陸統一を目指してるという内容。


「知ってたか、チャルドムは本気で大陸統一を目指してるんだが、それが意味する事は分かるかい?」

「まあ、周辺国や大陸全ての国に戦争を吹っ掛けるって事ですよね?」

「そうだがこれまでの戦争とは違う。武力行使をすればチャルドムは、仁皇国にも他の国にも勝てない。そこで奴らは……」

「潜入して中から崩壊させようとしてる?」


頷くサスケさん。

既に政府に入り込んでる奴らが居たからな。

つまり仁皇国だけではなく、他の国にも水面下でチャルドムの手が伸びてるって事か、それを全て阻止するのは不可能……いや、やろうと思えば出来るか?

でも、時間が掛かる。


「それでキジ丸君に、いや、マスターにお願いがある」

「何ですか?」

「他の忍びの者達を再び、集めてほしいんだ」

「再び集めるとは?」

「以前のように忍びのトップに君臨し、纏めてほしい」

「いやいやいや、前も忍びのトップじゃないですよ? あれはクランマスターってだけで、全ての忍者のトップって訳じゃ……」

「謙遜をするな。影の里の忍び頭である私を傘下に加えた時点で、忍びのトップなんだよ」

「あぁ~、なるほど」


確かに、サスケさんが忍者を纏める存在だったもんな。

でも、纏めるのはサスケさんに任せたはんずなんだけど?

と、そういう事を言ってる訳じゃないんだろう。


「それで? 集めてどうするんですか?」

「決まってるだろ? チャルドムの脅威を潰すのさ」

「それは誰かの依頼?」


依頼なら報酬が気になる。

ゲームでも国を潰す依頼はやったけど、報酬は神(管理AI)からもったからね。

金じゃやらないぞ?


「これは私、いや、周辺国からの依頼……と言っても良い。勿論私も動く」

「サスケさんも?」

「チャルドム共和国に居る四皇帝は知ってるかな?」


俺は頷く。


「実際見た事は無いですけど、話しだけは」

「四皇帝の1人が異界人だという噂もある」


異界人とは、住人が言うプレイヤーの事だ。


「まさか、チャルドム共和国のトップも……」

「いや、それは違うだろう。あくまで四皇帝の1人、裏組織のトップってだけの話しだ。しかし、殆ど情報が掴めない組織もある。それだけでかなりの脅威だ。どうか、手を貸してほしい」


そう言って頭を下げるサスケさん。

ちゃんと覚えてたか。

クランに入れた時、忍者の纏め役はサスケさんに任せると約束した事。

ならクランメンバーのお願いは、マスターである俺が叶えないとね。


それにしても、サスケさん達が情報を掴めないとは、相当情報統制がされてるっぽい。


「別に頭を下げる必要は無いですよ。俺は異界の里のマスターとして、メンバーであるサスケさんの願いを叶えよう」

「ありがとう。報酬は何が良いかな?」

「メンバーのお願いだから報酬はいいですよ。それより、止めるって具体的にどうするんです?」

「勿論始末する。一人残らず」


忍者ならそれが妥当だな。

クズに情けを掛ける必要は無い。


「じゃあ、まずその組織を探らないといけませんね」

「あぁ、組織の名前は既に把握してるが、どの組織かは分かってない」


サスケさんの話によると『魏王ぎおう一家』『暗黒街』『女神のふところ』『武双連合』の4つがチャルドム共和国にある大きな犯罪組織で、それぞれのトップが『四皇帝』と呼ばれてる。


そして全ての組織のトップと幹部は全員、不老である事。

幹部の下にも何人か不老の者が居るらしい。


「その中のどれかに、異界人がいるはずだ」

「なるほど、聞いた事ない組織ばかりだな」

「以前の世界には無かった組織だ。どの組織もかなり手強い。しかし、全ての組織を潰せば他国への脅威は無くなる」

「そんなに裏組織が関わってるんですか?」

「他国に裏から侵攻してるのは、全て裏組織が行ってるからな」

「つまり、政府が裏組織と繋がってるって事ですね?」


頷くサスケさん。

帝国と同じ事してんじゃん。

組織潰しの出番だな。


「分かりました。現地にメンバーは居るんですか?」

「何人か潜入して情報収集はしてる」


情報収集か、ならリュウタも送り込もうかな。

情報屋として活動してたなら、情報収集も慣れてるだろ。


「私の魔力も戻ったし、他の者も証が戻った事で以前よりも動けるようになった。今までは入り込んだ者を始末するだけだったが、次はこちらから攻める番だな」

「ラクホウを護ってたの?」

「影の試練の間があるからね。あれは我々忍びが護る義務があるんだよ」

「なるほど……それで? どうやって攻める?」

「若者を残して初代達だけでチャルドム共和国に入り、組織を潰す」

「シンプルだね。じゃあ俺は今から先に行ってるよ」

「今から行くのかい?」

「まだ昼前だし、既に影分身を潜り込ませていろいろ見て回ってるんだよね」

「ほう、流石キジ丸君だね」


お互いニヤっといやらしい笑みを浮かべる。

それにしてもチャルドム共和国。

滅茶苦茶治安が悪いな。

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