第172話 試練用空間。
皆を鍛え始めて1週間。
俺達は、屋敷の地下で生活しながら特殊空間を使って訓練を続けていた。
リュウタ含め、忍び頭だった者の戦闘訓練をしながらユニークスキルの習得をするため、魔力を重ねる訓練をしてもらっている。
そんな中、既にユニークスキルを習得してるリュウタは、ある程度戦闘訓練(俺に殺される)を何度か行い、先に影忍の試練を受ける事に。
「死んだら生き返らせてやるから、思いっきりやれ。ユニークスキルを使わないと確実に勝てないからな?」
「了解っす!」
そうしてリュウタが試練の間へ入って行くのを見送り、2回目の挑戦でようやく影忍へクラスアップを果たす。
一度目は、ユニークスキルを使う前に殺されて失敗したのだ。
数分して中に入ると、血塗れで倒れていたリュウタを発見。
すぐさま蘇生術で生き返らせた後は、反省会をして翌日に再挑戦し、影に勝つ事が出来た。
ちなみにリュウタのユニークスキルの内容は、俺も知らない。
切り札になるから人に話す事じゃないからね。
クレナイみたいに知られても問題無いスキルなら良いけど、俺もユニークスキルは、誰にも言ってないからな。
そしてフタバは、分身を用いて生産スキルのレベルを上げ、Sランクアイテムを制作して無事職忍へとクラスアップし、忍者・極へ転職可能となったが何をすれば良いのか指示が出ないという事態が起こってしまう。
ゲームなら影の神(管理AI)が指示を出すんだろうけど、この世界にはそんな存在居ないからなぁ。
生産用の部屋で忍者の姿ではなく、セミロングの黒髪でパーカーにピチットしたズボンを履いた女子高生っぽい可愛らしいフタバと話をしながらどうするか考えていた。
しかし、答えが出ないのでフタバに待ってもらい、アマネに聞こうと念話を送る事に。
『久しぶりですねキジ丸、どうしました?』
『忍者・極への転職ってどうすれば良いんだ? ゲームならアマネが用意したダンジョンを攻略して転職したけど、この世界には無いだろ? 次の指示も出ないからどうしたもんかと思ってさ』
『最上職に転職する時は、それぞれ担当していた神が指示を出していましたからね』
『じゃあ、この世界じゃ転職出来ないって事?』
『いえ、キジ丸なら出来ますよ?』
『俺なら? どうすれば良い?』
『簡単です。訓練空間を創ったように、試練の空間(ダンジョン)を創れば良いのです』
マジで?
そんなもの創れるの?
…………あぁ、創れるな。
得た知識を探ると理解した。
魔力とマナを使って俺が攻略したダンジョンのような空間を創り、それをクリアさせる。
でも態々、転移させないと行けないのか?
……なるほど、空間を創ってどこかに入り口を固定させれば良いのか。
『ありがとう。出来そうだ』
『最上職へ到達する者がこの世界でも居るのは、喜ばしい事ですね』
『ああ、みっちり鍛えてやってるからな。何人か友達や知り合いにも、あのスキルを与えてあるから、いずれ世界中の人間が職業を得る事になるかも』
『以前の世界と同じようになるのは、楽しみです。やはりあなたに任せて正解だったようですね』
『まあ、まだどうなるか分かんないけどな。とにかくありがとう。試練の空間を創ってみる』
『はい、またじっくり話を聞かせて下さい』
『ああ、お土産持って顔を出すよ』
『楽しみにしています』
そう言って念話を終了し、ジッと立って待っていたフタバを見て告げる。
「俺が用意する試練をクリアすれば、最上職へ転職可能だ」
「本当ですか!? 是非受けさせて頂きたい」
その場で片膝を突いて頭を下げるフタバ。
「こっちの準備が出来たら声を掛けるから、それまで戦闘訓練をしとくように、あっ、そうだ」
首を傾げるフタバ。
「ちょっと付いて来い」
フタバを連れて部屋を出ると、俺が来るまで訓練していた部屋へ向かう。
この地下空間、実は結構広い。
サスケさんが居た部屋の他に総勢38人が暮す部屋があり、訓練場、影の試練の間、生産用の部屋、風呂、皆が集まれる広い部屋がある。
訓練場は、的やサンドバッグや人形が置かれ、摸擬戦が出来るように奥行き50メートル、幅35メートル、天井までの高さ30メートルはある空間になっており、壁、天井、床はコンクリ―トだ。
その訓練場の隅に、闘技場のような地面が土の広い特殊空間を創り、そこに繋がる扉を設置。
そして訓練空間へ繋がる扉も設置する。
「こっちの青い扉が訓練空間で、赤が特殊空間に繋がってるから、訓練したい時は好きに使うように他の者に言っといてくれ」
「はっ! 畏まりました」
「で、ちょっと時間掛かるけど、今から試練の空間を創る」
「席を外した方がよろしいですか?」
「いや、そのままでも良いけど暇だろうから、別の所に行っといて良いよ?」
「では、他の者達に、2つの扉について知らせてきます」
「ああ、よろしく」
フタバは頭を下げると影に潜り、姿を消したのでさっそく試練の空間を創る事にした。
俺がゲームで受けた試練のダンジョンは、入る者によって内容が変わるダンジョンだ。
この試練の空間もそのように創ってみようと思う。
そのためにはまず、職神で得た情報の精査が必要だ。
先程ざっくり創れるというのは分かったが、実際どうやれば良いのかはっきりしてないからな。
訓練場の床に座り込み、目を瞑ってじっくり情報を探る事約10分後。
職神で得た情報はかなり多く、出来る事はかなり多い事が分かった。
ただし、高度な事をするには、それなりの魔力制御とマナ制御が必要になる。
まあこれは、これまで訓練してきた事でなんとかクリア出来そうだ。
そして一番の難関は、空間を創る時に『空間に印を刻む』事である。
特殊空間は、イメージで創れるし訓練空間は、訓練モードをイメージして創れば創れるのだ。
しかし、試練の空間は『入る者に合わせて内容が変わる』という、まさに特殊な空間。
それを可能にするのが印。
だが俺が創った印ではなく、職神に含まれる印というか術式を組み込まなければならない。
その術式を組み込むのがかなり繊細で、かなりの集中力が必要そうだ。
俺は深呼吸してから意識を自分の中に集中させ、空間をイメージしながら職神を発動させて空間に、ゆっくり術式を刻んで行く。
ちなみに失敗しても何も問題は無い。
ただ空間が創れないだけ。
だが魔力とマナ(HP)は、かなり消費される事になるので、なるべく失敗はしたくないのだ。
空間創りを始めてどれくらい時間が経ったのか、ようやく空間が完成して目を開くと背後に気配がしたので振り向くと、フタバと何人かの若者がじっと俺を見ていた。
「どうした?」
「いえ、音を出してはご迷惑かと思い、ジッとしておりました」
「はは、好きに訓練してくれて良いよ」
「あの、マスター、試練の方はどうなりましたか?」
俺はニヤっと笑って答える。
「完成した」
そう言って立ち上がり、赤と青の扉が並ぶ一番右端に、金色の装飾が施された両開きの扉を設置。
「おお、金色の扉」
「この扉は、忍者として最上職へ至るための扉だ。資格の無い者は入れないようになってる。フタバ、そして今後入るであろう者達、扉を開ける時は魔力を流せば、自分に合った試練が受けられる。それをクリアすれば、最上職になれるからな」
「私に合った試練……死んだら終わりですか?」
訓練空間を経験すればそういう考えにもなるか。
「死んだら終わりだ。心して挑むように」
そう告げて俺は、訓練場を後にした。
本当は、死んでも半分の力を失って復活するんだけどね。
創る時に組み込んでおいたのだ。
死んでも大丈夫という考えを持たれても困るので、あえて死んだら終わりだと伝えておいた。
気合入れて鍛えろよ。
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