第171話 異界の里式訓練。
フタバにここに居る全員を広い部屋に集めてもらい、メンバーとの再会を果たす。
と言っても、全員の顔と名前を憶えてる訳もなく、向こうが片膝を突いて頭を下げ、俺に会えた事を喜んでくれただけなんだけど。
受け継いだ者達は、それぞれ初代の指示に従い、俺をマスターだと受け入れてくれたようだ。
実力を示せと言われたら喜んでやるつもりだったが、皆の教育がしっかりしてるようだな。
顔合わせを済ませ全員に誓約と不老の印を刻むと俺は、リュウタや数人に『和の和風』という食堂について尋ねる。
するとリュウタが。
「和の和風ってあのプレイヤーがやってる店の事っすよね? 可愛い子達がやってたんで良く知ってるっすよ」
「この街に居るの?」
「いや、ゲームの時に行ってただけで、この世界じゃ見たい事無いっすね」
「じゃあ、彼女達について情報を集めてくれ」
「良いっすよ」
「頼んだ。よし、日が沈むまでフタバとリュウタは、俺が鍛えてやる。まあ、フタバは生産だけどな」
「はっ!」
「えっ、俺も!?」
「当たり前だろ。異界の里に入ったからには、もっと上を目指してもらう。それが嫌なら破門だ」
「いえ、やります! やらせて頂きます!!」
ビシッと敬礼するリュウタを無視してフタバの前に、大量の素材をインベントリから取り出す。
「これを使っていろいろ作ってもらう。武器、防具、加工食品、ポーションといろいろだ。作り方を説明したら分身と感覚共有しながらひたすら作れ、分かったな?」
「了解です!」
「じゃあ、これから……」
俺は見本を見せながら錬成印でどうやって作るのかを説明し、30分程で全ての作り方を教え終わると、後はフタバの頑張りだけである。
サスケさんや他のメンバー達もフタバとのやりとりを眺め、ニコニコしてるのがどうも落ち着かない。
「あっ、他の引き継いだ者達のクラスは?」
するとサスケさんが教えてくれた。
フタバ以外の者は全員、忍び頭になっており、現在ユニークスキルを習得するために頑張ってるそうな。
サスケさん以外、ユニークスキルを取得してないのか。
「そう言えば、この世界でも影忍になれるんですか? 試練は?」
「この地下にあるよ」
「あっ、なるほど」
ここは影の里にあったサスケさんの屋敷だったんだな。
それでずっとここを護り抜いてきたと。
この世界でもあの試練の間は使えるんだね。
「ならユニークスキルを取得出来るように、他の若者達も鍛えてやろう。リュウタは、既にユニークスキルを持ってるだろ?」
「良く分かりましたね」
「魔力が使えてる時点で分かる」
「そうなんすか?」
「その話は追々な。じゃあ、引き継いだ者達は集まってくれ!」
「見張りをしてる者はどうしましょう?」
フタバにそう言われたので「それは後で他の者と交代して鍛えてやる」と言えば納得。
そうして鍛えてやる者達を、訓練空間へ転移させた。
急に場所が変わった事でざわついたがそこは忍者、すぐ落ち着き俺の話しに耳を傾ける。
「ここでは死んでも生き返るから、好きなだけ戦闘訓練が出来るぞ。ユニークスキル習得の訓練をしてる者は、ここで今どれだけ出来るか試したら、別の空間に行って訓練をしてもらう。それ以外の者も、俺と殺し合いをして今の全力を知った後、別の空間で訓練を始める。分かったな?」
「「「はい!!」」」
「じゃあ、全員掛かって来い」
そう言うと殆どの者が困惑する。
そんな中リュウタが。
「あの、この人数を相手にするんすか?」
「ここは死んでも生き返る訓練モードと同じ空間だぞ? 遠慮せずに思いっきり出来るんだ。ほら、来い」
「流石に……」
「来ないならこっちから行くぞ?」
「うっ……分かりましたよ! やります! 全員、本気でマスターを倒すつもりでやるぞ!!」
そう言って短刀や直刀を抜いて構える者、素手のまま構える者に分かれた。
すると最初に動いたのは意外にも、リュウタだったが余裕で躱し、首を刎ねて殺すと次々と襲い掛かる若者達の攻撃を躱し、受け流し、弾きながら殺して行く。
数分後。
全員復活して地面に倒れた状態を眺め、忍換装して忍者になると告げる。
「よし。もう一度だ」
「うお、カッコいいっすね。近未来忍者」
「拙者を倒せたら、異界の里のサブマスターにしてやろう」
「えっ? その声……もしかしてハンゾウ? あれ? キジ丸さんは?」
「拙者が……キジ丸だよ」
途中で頭の装備だけ換装で外し、キジ丸の顔を見せるとリュウタは、目を見開き口を開けて固まった。
若者達は、ハンゾウの事を知らないので首を傾げてる。
そこで頭の装備を戻す。
「拙者がこの格好をしてる時は、ハンゾウと呼ぶように、分かったな?」
リュウタ以外全員頷き、立ち上がって戦闘態勢に入る。
「リュウタ、それに他の者達も……ここからは忍者としての戦いだ。行くぞ?」
「えっ、ちょっ!? はぁ!? ま、待って!! えっ、キジ丸さんがハンゾウ?」
「そうだが?」
「あれ? ハンゾウがキジ丸さんならハンゾウは偽物? ……ん? 大会の最後にキジ丸さんとハンゾウが戦ってたよな? どういう事? ハンゾウもキジ丸さんも同一人物って事っすか?」
「正解」
「はあ!? ハンゾウは住人じゃなかったの!?」
「俺の分身だからな」
そう言って横に忍者姿の分身を1体出す。
「さて、メンバーから引き継いだ者達は、分身と感覚共有をして鍛える方法は知ってるな?」
リュウタ以外が頷く。
「とりあえず忍者としてもう一度戦闘だ。その後、別の空間へ送るのでそこで訓練を始める。分かったらさっさと掛かって来い」
「最強忍者がプレイヤーだったとは……これは凄いスキャンダルっすよ?」
「忍者以外の者に正体を話したら死ぬぞ?」
「あっ、そうだった」
「これは掟の代わりだ。忍者なら掟を破るな。それが忍者としての自覚を生む」
「……了解!」
「ちなみにこの世界に来て誰かに、忍者だと教えたか?」
「いえ、キジ丸さんだけっす」
「なら、今後も話すな。忍者以外の者にはな?」
「はい!」
「よし。掛かって来い」
そうして、忍者としての戦い方で13人全員に、2分もしない内に勝利。
ここからが、本格的な訓練の始まりだ。
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