第169話 サスケ。
8代目サスケと名乗るたぶんくノ一。
そして俺にマスターの証を見せてほしいと言う。
そんな物は無い!
それに証明するのは、こいつの方だろ。
俺は5名の忍者に威圧を放ちながら答える。
「俺が証明するんじゃなく、お前が8代目サスケだと証明しろ。もし人のクランの名を語ってるだけの輩なら……この場で始末する」
するとサスケは、震える右手に巻物を出現させると差し出す。
忍びの証。
これで8代目サスケだと分かるのかな?
「こ、これは……7代目サスケから、受け継いだ、忍びの……証です。な、中に、歴代の……名が、記されており、ます」
ガタガタ震えるサスケから巻物を受け取り、紐を解き開いていくとそこには、サスケ、サノスケ、イゾウ、シオリ、ヤマト、カケル、フタバと書かれていた。
最後のフタバがこいつの本当の名前か。
ゲームの時のように職業の証が与えられないから、才能ある者に自分の証を譲ったんだな。
そうか……サスケさんはもう居ないか。
「フタバとはお前の事だな?」
巻物を巻いてサスケに返しながら問う。
「はい」
「初代サスケさんは、俺に何か言い伝えてあるか?」
「……しょ、初代様は……い、今もマスターを待ち続けております」
俺はそこで威圧を解く。
「待ち続けてる? あぁ、墓があるのか、案内してくれ」
「ふぅ~……いえ、初代様はここの地下深くで、今も生きております」
「はっ?」
空間感知で確かめると、確かに地下に続く道があるようだが範囲外のようで、かなり地下深まで続いてるようだ。
それより。
「サスケさんが生きてるってどういう事だ? サスケさんは不老ではないはず。何年生きてる? いや、それよりすぐ案内しろ」
「その前に……確かめさせて頂きたい。あなたが本当のマスターであると」
「マスターの証明ねぇ……証明するようなアイテムも無けりゃ、身分証も無い。どう証明しろと?」
「初代様の、奥方のお名前は?」
「カナエさん」
「ご子息のお名前は?」
「サイ」
「では最後に……初代様が忍び頭を務めた里の名は?」
「影の里」
「数々のご無礼を謝罪致します。我らがマスター」
「ん? そんな簡単な質問で良いのか?」
「この質問は、サスケの名を継いだ者と、異界の里のメンバーしかしりません。そしてメンバーの者がマスターの名を語る事は決して無いと初代様がおっしゃっておりました。なのでマスターを名乗る者で答えられる者は、マスター以外居ないと……」
うむ、確かにメンバーがマスターを名乗る事はしないだろうな。
忠誠心がすごかったし、もしそんな事して俺にバレたら確実に粛清されるって理解してるだろ。
「じゃあ、サスケさんの所に案内してくれ、とその前に……リュウタ、異界の里に入りたいって言ってたよな? 誓約を結べば入れるぞ? どうする?」
ずっと黙ってポカーンとしながら、廊下の隅で話を聞いていたリュウタに聞くと。
「えっ、あ、はい、お願いしま……って、キジ丸さんが異界の里のクランマスターってマジっすか!?」
「ああ、マジっす」
「じゃあ、キジ丸さんも……忍者?」
「当然だろ?」
「えっ、マジで? いや、これヤバい事知ったんじゃ? まさか異世界に来てとんでもない事実を知る事になるとは思わなかった……いろいろ聞きたい事はあるけど、よろしくお願いします!」
勢い良く頭を下げるリュウタ。
まあ、あとでもっと大きな爆弾を投下してやろう。
「よし、サスケさんの所に案内頼む」
「はっ! お前達は見張りを続けろ。こちらです」
スッと立って後ろの者達に指示を出すと4人は、その場で影に潜り姿を消し、サスケ……フタバは、居間の奥にある部屋へ歩いて行くので後を追う。
幾つか部屋を通り抜け、廊下の奥へ進むと突き当たりに到着し、床の隅に手を置くと突き当たりの壁が『ガコッ』と奥へ少し開き、フタバが開けると地下へ続く階段になっていた。
エレベータ用の空間に階段があるみたいな感じだな。
そのまま壁を押して中を進み、階段を下りて行くと折り返しで更に下へ続く階段を下りて行く。
どれくらい下りたのかようやく下まで到着すると少し広くなっており、正面には防火扉のような鉄製の扉が姿を現す。
壁や床などはコンクリートっぽい。
フタバが扉を押して開けるとそこは、正面と右へ廊下が続いており、天井には等間隔に明かりがあってかなり明るい。
床、壁にはタイルが張ってあり、オフィスビルの廊下って感じだ。
フタバは真っ直ぐ進み、暫く進んで突き当りを右に曲がると正面に鉄製の扉があり、フタバがノックすると。
「マスターをお連れしました」
『入って良いよ』
っ!?
今の声は、どこかのスピーカーから聞こえてきたようだが、間違いなくサスケさんの声。
本当に生きてるのか?
なんて思ってるとフタバが扉を開けると中は、日本家屋のような造りになっており、玄関があって6メートル程続く板張りの廊下。
壁も天井も日本家屋だ。
フタバが靴を脱いで上がるので俺も脱ぎ廊下を歩いて行き、右手にある襖を開けると畳が敷かれた20畳程ある広い部屋で、左手に大きな木製のテーブルと座布団が敷かれ、その奥にゲームの時と変わらないサスケさんが座っていた。
「やあキジ丸君、随分久しぶりだな。すぐお茶が来るから、先ずは座ってくれ」
フタバはサスケさんの後ろへ行き、正座して待機。
俺は、ゲームの時と変わらないサスケさんに驚きながらも、サスケさんの対面に座る。
右隣りにリュウタも座ると、着物を着た見知らぬ女がお茶を持って来てくれたので1口飲んだところでサスケさんが口を開く。
「ようやく会えたね」
「サスケさん、いつごろこの世界に?」
「はっきりとは覚えてないが、もう500年以上は経つかな? キジ丸君は、いつこの世界に?」
「1月程前かな? 大陸の南方で目が覚めてそこから魔境を超えて仁皇国に」
「流石だね、魔境を超えるか」
「それでなんでサスケさんは、500年以上も生きてるんです? もしかして不老の薬を飲んだとか?」
しかし首を横に振るサスケさん。
「私がなぜ歳を取らずに生きてるか? それはユニークスキルのお陰だよ」
「ユニークスキル」
なるほど。
そんなユニークスキルがあっても不思議ではない。
「じゃあ、職業の証を譲ったのはなぜ?」
「あぁ、それもユニークスキルに関係してるんだが先ずは順に、私がこの世界に来てからの事を話そう……」
サスケさんは大昔、まだ仁皇国になる前にこの世界に来たそうで、気付くと今いる街の路地裏で目を覚ましたそうな。
目を覚まして理解したのは、この世界が別の世界だという事。
初めは混乱したがすぐ落ち着き、里の者を探したら近くに数人いたらしく、とりあえず生活が出来るようにと動き出す。
生活の基盤を整えた後は、影の里を探したが見つからず。
結局この街で、後に現れる影の里の者のために受け入れる体勢を整え、俺が姿を現すのをずっと待っていたとの事。
勿論、俺が来るまでの間、裏で依頼を受けたりと異界の里として活動していた。
そしてサスケさんは、このままじゃ自分がいずれ寿命で死んでしまうと考え、ユニークスキルを使って自分の時を止めたらしい。
「時を止めるスキル?」
「まあ、厳密に言えば、魔力によって老化を防いでるんだ」
「ほう……それで?」
「私はこの世界でも捨てられた子や、忍びの才能がある者を集め、鍛える事にした。しかし、成人になっても忍びの証が与えられる事は無い。それだと下忍以下の強さだ」
だからサスケさんや他の者達は、若い者に自分の証を継がせたという。
「他の者も私のユニークスキルで、今も生きてるぞ」
「マジっすか……あれ? 証を失ったらユニークスキルを使えないとかにはならないの?」
「ああ、これは私もこの世界で初めて知ったが、証を継がせるとユニークスキルの一部を継がせる事が出来るのだ。私も驚いたけどね」
職業を継がせるとそうなるのか。
これは面白い情報だな。
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