第168話 お化け屋敷。
リュウタの案内でお化け屋敷に向かい、途中バスに乗って約20分後。
バス停に到着し、バスを降りてから約5分程歩いてようやくお化け屋敷に到着。
お化け屋敷と呼ばれてる屋敷は白い外壁に囲まれ、中は草が生え放題の状態でその中に、ポツンと一般的な2階建ての日本家屋が建っていた。
しかし建物自体はボロボロではなく結構綺麗な状態。
周囲の草のせいでお化け屋敷に見えてるのかも。
ちなみに門は鉄格子で、高さは2メートル程しかないから中が見やすい。
敷地の奥には背の高い木が植えられており、そこだけ見ると山の中にある一軒家に見える。
敷地の両サイドにも日本家屋があり、普通に人が住んでるようだ。
「結構綺麗だな」
「そうっすか? 心霊スポットみたいでちょっと怖いかな」
「まだ明るいのに?」
「あっ、異界の里は日が沈んでからじゃないと現れないらしいっすよ」
「いや、問題無い」
建物の中に5人居る事は、空間感知と魔力感知で把握してる。
こんな状態の屋敷に住み着いて何がしたいのか。
と思いながら門を押すが鍵が掛かってるようで動かない。
「悪ガキ共は、みんなこの門を超えるか壁を乗り越えて入ってるっす」
「なるほど」
まさに心霊スポットに入る若者って感じだな。
地球なら許可が無いのに入れば、立派な犯罪だ。
この世界というか、この街はどうなんだろ?
リュウタに聞くと持ち主の許可が無いと入ってはいけないという決まりらしいが、このお化け屋敷の持ち主が居ないので、一応国の土地になってるらしく、勝手に入っても特に問題は無いとの事。
ただし、物を破壊したり何かを盗れば、犯罪になるという。
一般道と同じ扱いかな?
なんて思いながら跳んで門を超え、敷地内に入る。
「簡単に超えるんすね」
「リュウタも跳べるだろ?」
忍者なんだから。
「まあ、行けますけど」
するとリュウタは、少し下がって勢いよく跳ぶと門の上部に手を掛け、ヒョイッと乗り越えた。
アクション映画みたいな超え方だな。
「アクション映画の真似をしてみました」
「へ~」
「見た事無いっすか? 凄い殺し屋の映画」
「あぁ、あれ面白いよな」
「ですよね。この世界で殺し屋ってのも悪くないかも?」
「まあ、日本よりは楽だろうな」
「映画みたいに日本にも殺し屋って居たんですかね?」
「そりゃ居るだろ」
「マジっすか? 聞いた事無いんですけど」
「私は殺し屋ですとか、ここが殺し屋の事務所ですなんて宣伝してる訳ないだろ。一般人が知らない世界なんていくらでもある」
「あぁ、確かに、ゲームでもそうっすね」
そうだ。
GFWで忍者として動いてたなら分かるはず。
一般人が知らない黒い部分が、街に溢れてる事を。
それはゲームの世界だけじゃない。
『人』という種が居る社会では、確実に光と闇が存在するからな。
ただ闇は、隠されていたり見えないようにされてるだけで、必ずそこに存在する。
なんて話をしながら自分達の身長と同じくらいの草をかき分け、屋敷の玄関に到着。
玄関は、昔ながらの横にスライドするガラガラ式の扉である。
扉に手を掛けて力を入れるが、鍵が掛かってるようで開かない。
まあ、誰も入れないようにしてるよね。
「キジ丸さん、右の方に窓があってそこが開いてるらしいですよ」
「分かった」
建物沿いに開いてる窓の方へ向かうと、確かに開いた窓がある。
「ここから入れるっす」
しかし俺は、違和感を覚えていた。
玄関は閉めてなぜ窓は開けっぱなしにしてるんだ?
窓も閉めれば誰も入って来れないはず。
ガラスを割られるから?
いや、それなら玄関を開けとけば良い。
「入らないんすか?」
「ちょっと待て、何でここだけ開いてる?」
「鍵を閉めてないから?」
「玄関は閉めてるのに?」
「あれ? 確かにそうっすね。何で窓は開けっぱなしに?」
これは、ここから入るように仕向けてるんだろう。
何か罠が?
特に空間感知にも魔力感知にも気配察知にも反応は無い。
ついでに言えば罠感知にも引っ掛かりは無いので、この窓に罠は無いが……怪しい。
空間感知で確かめるとこの窓の向こうは、6畳程の和室。
トラップは何も無い……まあ良いか。
「よし、入るぞ」
「お先にどうぞ」
「ああ」
窓に手を掛け、跳んでスッと中に入る。
アクション映画の真似をしてみました。
特に何も起きないな。
「良いぞ」
「はい」
リュウタは窓枠で一旦止まり、中を見てから入って来た。
「普通の和室っすね」
「ここはな、だがその出口に罠がある」
「罠?」
「まあ、死ぬような罠じゃないけど……ちょッと待ってろ」
既に開きっぱなしの襖に近付き、魔力を放出して罠解除を発動させると『カチ』と音がし、解除成功。
そのまま廊下に出て玄関から入ってすぐの広い居間へ向かう。
障子が開きっぱなしなので、そのまま入ると背後に気配がしたので屈みながら右肘を打ち込み、振り返る。
すると、忍び装束を着た者が腹を押さえて片膝を突いていた。
「何も無いっ……忍者!? えっ、もうやったんすか!?」
「いきなり背後に立たれたからな。お前が異界の里の者か?」
しかし、忍者は何も答えない。
「さっさと本体が出て来たらどうだ?」
「本体? あっ、分身っすか」
正体不明の相手を襲うのに、いきなり本体では出て来ないだろ。
それに、俺を見ても出て来ないって事は、メンバーでもないのは確定。
俺のクランの名を使うとは、良い度胸してんじゃん。
「異界の里マスターとしてお前ら全員、始末する」
「えっ? ちょ、ちょっと待って、キジ丸さんがマスターって?」
「俺が異界の里のクランマスターですけど何か?」
そう答えるとリュウタは、目を見開いて口を開けたまま固まる。
ハハハハ! やっぱりこういう反応を見るのって面白いな。
そこで片膝を突いていた忍者が四散して消滅すると、居間の奥に気配が5つ現れたので振り向くと、忍び装束を着た者が5名、片膝を突いて頭を下げていた。
「私は、8代目サスケと申します。我らがマスターという証を見せて頂きたい」
8代目サスケ?
やっぱりサスケさんは、既に死んでるようだ。
それにしてもこいつの声、女か。
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