第166話 組織の噂。

カゲに乗って東へ1時間程進むと、高い外壁に囲まれた街が見えてきた。

徐々に近づいて行くと外壁は、白い壁に瓦屋根があって和風である。

街中の建物も、瓦屋根の建物ばかり。


街の手前に降りてもらい、カゲを送還して1人街道を歩いて門へと向かう。

ゲームにあった仁の国みたいな雰囲気だな。

外壁の高さは約50メートル程か。

門の高さは約15メートル程あり、幅は約10メートル程ある。


まだ昼を少し過ぎたくらいなので門は開いた状態で、人の出入りは無いようだ。

そう言えば、この世界に来てから街の外で、殆ど人を見かけないな。

プレイヤーは居たけど、街からあまり人は出ないのか?

冒険者なら出ると思うが、冒険者もロウタ達以外見かけてない。

その辺りは、ギルドで聞いていみるか。


なんて考えてると門に到着し、軍服を着た見張りにギルドカードを提示しながらギルドの場所を聞いてから中へ入る。

ラクホウは、仁の国と同じような雰囲気の街並みで、和風の建物が多い。

所々にレンガ造りの建物や雑居ビルのような建物があるが、2階建ての和風建築の方が多いね。


通りは石畳が敷かれ、車が走ってるのが見える。

行き交う人々の格好は、トウリンと大して変わりは無く、現代風の格好の人が多い。


街の大きさは首都トウリンより少し小さいぐらいだ。

教えてもらったギルドを目指して道の端を歩き、観光しながら向かってると道端に数人の若者がしゃがみ込んでいた。


この世界にもこういう奴が居るのかと思いながら横を通り過ぎようとしたら、壁にもたれ掛かっていた3人の男がスッと出て来て俺の前に立ちふさがる。

それに合わせてしゃがみ込んでいた奴らも立ち上がり、俺の周囲を囲む。

これはもしや、若者に絡まれるおやじ狩りというやつか?

いや、今の俺はこいつらと大して変わらない見た目だから違うか。


「よう、お前どこから来たんだ?」


黒髪の頭悪そうな男、チンピラAにしておく、が聞いてくる。


「どこから? トウリンからだが?」


すると横の茶髪、チンピラBが怒りの表情をして口を開く。


「お前、トウリンの奴か、よくうちに顔を出せたな?」

「殺されても文句は言えねぇぞ?」


と後ろのチンピラCが言う。

ちなみにチンピラは全部で6人だ。

なのであとD,E、Fが居る。

それにしても、ここって仁皇国だよな?

なぜこんなに敵視してるんだ?

あっ、もしかして都会から来たよそ者は、受け入れない田舎って感じか?


「トウリンから来たが俺は、ただの旅人だぞ? トウリンが出身じゃないが?」

「ほう、じゃあどこ出身だ?」

「カリムス王国だな」

「どこだそれ? お前知ってるか?」

「いや、聞いた事ねぇ」

「俺も知らねぇな」

「あれじゃねぇか? 北のどっかにある田舎だろ?」

「あぁ、それじゃ知らねぇのも納得だ」

「そんな田舎者がなんの用でこの街に来た?」


最後にチンピラAが聞いてきたので「知り合いが居ないか探しに来た」と言うと。


「知り合い?」

「あぁ、お前らの中で知ってる奴は居るかな? サスケさんとかサイ、後は異界の里って聞いた事は?」

「「「っ!?」」」


するとチンピラ達は、急に青い顔をして冷や汗を流し、一歩後退して俺から距離を取る。

何だ?

どれに反応した?


「どれか聞き覚えがあるのかな?」


俺の問いに答えたのは、チンピラAだった。


「あ、あんた、その名前をどこで聞いた?」

「名前? どれ?」


するとAは、小声で答える。


「異界の里だ」

「異界の里がどうした? 何か知ってるなら教えてほしいんだが? 金なら払うぞ?」


Aは周囲をキョロキョロ見回し、俺に近付くと更に小声で話す。


「その名前をこの街で出すな。殺されるぞ」


はっ?

異界の里は俺のクラン名なんだけど?

まさかメンバーの誰かが運営してるのか?

それにしてもこのビビリよう。

この街でいったい何をした?


「そのトップはこの街に居るか?」

「さあな。その組織は、表には出ないし存在してるのかすら疑われる組織だが俺達は知ってる。確実に存在してるってな」

「その根拠は?」

「組織の者に一度会ってるからだ」

「どこで?」

「そこに行けば殺されるぞ?」

「良いから答えろ。俺が探してる奴かもしれない」

「……街の南東地区にあるお化け屋敷だ」

「お化け屋敷?」


Aの話しによると、そのお化け屋敷はずっと放置されてる屋敷で、悪ガキ共が集まるには丁度良い建物らしく、よく若者が入るらしい。

しかし、侵入すると変な黒ずくめが出て来てボコボコにされるという事が度々起こってるそうだ。

中には姿を消した悪ガキも居るとの事。


「1人で入ったら確実に帰ってこれない屋敷だ」

「お前らもそこに入って出会ったと?」

「ああ、一瞬で全員やられて気付けば屋敷の敷地外に倒れてた」


うむ、黒ずくめってのはたぶん忍び装束かな?


「それがなぜ異界の里だと?」

「ばか! ……襲われた奴の中にそう言われた奴が居るんだ『ここは異界の里のもの、次入れば命は無いと思え』ってな」


おう、ハッキリ言ってんじゃん。


「実際、2回目入った奴は姿を消してるって話しだ。警察も政府も手を出せないらしい」

「国が手を出せない?」

「俺達が生まれる前の話しだが、軍や警察が中に入った事があるがその時は、全員首を落とされて殺されたらしいぜ」

「それでその里の名前が有名になったと?」

「いや、その組織は、裏で国を操ってるという噂だ。だから国も手が出せないんだろうな」


ん~、何か依頼を受けてる可能性はあるかもしれないけど、裏で国を操ってるって事は無いと思う。

たぶんだけど。

それにしても入った者を排除って、流石忍者。

これは、メンバーがやってるのか確かめないとなぁ。


まさか街中に居るとはね。

街の外に拠点を置けば良いのに。


「良い情報をありがとう。助かった。これはお礼だ」


そう言って1万Z札を3枚出し、Aに手渡す。


「おお、結構持ってんじゃん」

「じゃあな」


俺がAの横を通り過ぎようとするとAの横に居たDが、俺の肩に手を置いて止める。


「まだ持ってんだろ? ほら、さっさと出せよ」

「おい、止めとけ」


Aが止めるが、


「うるせえ。たった3万で俺達全員が潤うか? ほら、全員に3万ずつ出せ」

「だから止めとけって!」


AがDの手を払い、肩を押して俺から離すとAが顔を近づけて小声で言う。


「お前馬鹿か、あの組織と繋がりがあるかもしれねぇ奴に絡んだらどうなると思ってんだよ」

「はっ? 探してるだけであの組織と繋がりがあるとは思えねぇけど? 旅人って言ってただろ。それが何で関りがある? 無いだろ? 勝手にビビってんじゃねぇよ」

「もし繋がりがあったら死ぬぞ?」

「だから大丈夫だっ……」

「? どうした?」


Dは突然喋れなくなると同時に身体が震えだし、青い顔をして冷や汗を流し始める。

そう、マナによる俺の威圧です。

俺はAをどけてDの前に立ち、顔を近づけて言う。


「今晩お化け屋敷の中に1人で来たら、1000万Zやるぞ? これでお前も金持ちだな。まあ……敷地から出られたらの話しだが」


Dの肩にポンと手を置いてAを見ると。


「じゃあ、ありがとうな」

「お、おう?」


歩き出して少しすると威圧を解く。

さて、お化け屋敷に向かいますか。

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