第165話 場所が違う?
オムとの戦いが終わり、オムの家に戻って一緒に昼飯を食った後、お茶をしながら今後の事を話していた。
「僕は、出会ったドワーフに証を与えるよ」
「ドワーフ限定?」
「基本はね。他の種族にも与えるかもしれないけど、とりあえずはドワーフにって感じかな?」
「良いんじゃないか? 誰に与えるかはオムに任せる」
「じゃあ、そろそろ引っ越ししようかな」
「街に行くのか?」
しかし首を横に振るオム。
「どこに引っ越すんだ?」
「ん~、海が見える場所にしようかな? 長い事海を見てないし、今度はそこでスローライフをしようかと思ってさ」
海か、むしろ300年も森の中でよく暮らせたな。
俺なら飽きる。
その後、オムに俺の連絡先を書いたメモを渡し、何かあればいつでも連絡するように言い、家を後にした。
見送りをしてくれるオムがカゲを見て、テイムしたのか聞かれたのでハンゾウが口寄せしたカゲだと紹介すると、ハンゾウが居るのかと驚いたので分身を出して見せる。
「本物だ……あっ、確かここから東に行った所に『ラクホウ』っていう街があるから行ってみたら? そこに忍者の末裔が居るとかなんとか、100年以上前の話しだからまだ居るか分かんないけど」
「へ~、忍者の末裔ねぇ。分かった。行ってみる」
答えながら分身を影に沈めて解除。
「僕も準備が済んだらラクホウに一度寄るから、もしタイミングが合えば酒でも飲もうよ」
「ショタに言われると違和感しか無いな」
「中身はジジイだけどね」
「はは、じゃあタイミングが合えば飲もうか」
「うん! じゃあね」
「おう、久しぶりに会えて良かったよ。じゃあな」
そう言ってカゲに乗り、上空へ駆け出す。
『カゲ、この辺りに他に人は居ないか?』
『はい、魔力は感じません』
やっぱりアキトは居ないのか。
まあ、居ないなら居ないで仕方ないね。
『じゃあこのまま東に進んでラクホウって街に向かおう』
『はっ!』
上空から地上を見下ろすと、セイリュウ砦から東は山に挟まれた森が続き、20キロ程行くと森が終わり、山も途切れて草原と丘、そして小さな森が点々と広がっていた。
のどかな風景を眺めながら東へ進んでいると。
『主、あの森の中、人が集まってます』
まだかなり先にある森の中に、人が集まっているらしい。
近くに街や村は見当たらず、森の中に集落があるのかと思い上空から確かめようと近くへ行ってもらう事に。
数分後、森の上空に到着し、見下ろすが背の高い木々が邪魔で何も見えない。
森は草原と丘の中を通る街道から少し離れた所にあり、森の後方には背の高い山々が連なってる。
こんな所に集落や村があるとは思えないな。
カゲに森から少し離れた場所に下りてもらい、2人で影に潜ると影渡りで近づく。
すると森の中に洋館が建っていた。
こんな森の中に洋館とは、怪しい。
空間感知と魔力感知で確かめると、建物の中には全部で8人居る。
数人固まってたり、1人で居たりといろいろだ。
しかしこの洋館、どこかで見た覚えがあるような無いような……観察してると2人の男が洋館から出て来て周囲を見回す。
すぐさま男の影に移動して様子を伺う。
「はぁ~、まさかGFWが現実になるとはなぁ」
「だよな。でも俺は、かなりワクワクしてる」
「実は俺もだ」
「ゲームで使えたスキルも術も使えるし、余裕で生きて行ける。むしろ天下を取れるかもよ?」
「いやいや、この世界に来てるのは、俺達だけじゃないだろ。上位プレイヤーも来てるはずだ。そんな奴らに勝てる訳無いだろ?」
「あぁ、大会で上位に入ってた人達も来てるのかな?」
「俺達が来たんだ、来てる可能性は高い。それに俺達は盗賊だ。ゲームの時と同じように盗賊ギルドの頂点を目指す!」
「そうだな。俺達『深淵の旅団』が最強盗賊ギルドだ!」
盗賊ギルドか、しかもプレイヤーとはね。
それにしても深淵の旅団ってどっかで聞いた事あるような?
「ってかエムさん、街に行ったけど中々帰って来ないな」
「バカ、マスターって呼ばないとまた怒られるぞ」
「本人を呼ぶ時はマスターって呼んでるさ」
エムってクレナイ?
いや、あれは偽名だったか。
じゃあ、関係無いエムがここに居ると。
……あっ。
ゲームの時に確か、森の中でクランハウスを建ててる人達が居たな。
あいつらか。
あれ?
でもあいつらが建てたクランハウスって確か、仁の国より西だったよな?
何で東にあるんだ?
ゲーム世界からこの世界に来る場所は、必ずしも近い場所ではないって事か?
じゃあ、海になってるタルフィア王国やレリレア王国も、また別の場所に転移してる可能性もあると……ありがとう深淵の旅団よ。
お前達の存在でいろいろ可能性が出て来たぞ。
「お前は、地球に戻りたいって思う?」
「ん~、来たばかりだし、現実になったこの世界を楽しみたいとは思うし、地球に居る親や弟達も気になると言えば気になる。が、断然こっちの方が楽しみだ」
「俺も、妹と親は俺が居なくても大丈夫だろうし、ってか妹にめちゃ嫌われてるからむしろこっちで、可愛い妹を見つけたい!」
「義理の妹を? なら奴隷を買えば?」
「可愛い奴隷を買うのは、男のロマンだが、仲間の女達に何言われるか」
「ってか女達の誰かと結婚する可能性もあるよな?」
「あぁ、アバターだから可愛い子ばかりだもんなぁ。有かも?」
「でも怖いんだよなあいつら」
「そうそう、ゲームの時でも勝手におやつを食ったら訓練モードで殺されまくったし、あれは鬼だ」
「俺も殺された事がある。やっぱり奴隷か別の子を探そうかな」
「それが良いかも……」
うむ、こいつら来たばかりなのか。
それでクランマスターが街に情報収集へ行ってると。
確かゲームの時は20人くらい居たけど、ここには8人しか居ない。
他の者は街に出てるのかな?
カゲとそっと洋館から離れ、森を出るとカゲに乗って上空へ駆け上がる。
やっぱり全プレイヤーが既に来てる訳じゃなく、時代はランダムのようだな。
それに転移する場所も、必ずゲームと同じ場所とは限らない。
その原因は、まったく分からないけど、時空を超えて現実世界に居る時点で異常事態だし、何が起きても不思議じゃないよね。
あっ。
じゃあ、あのAV撮影してた人達も来てるのかな?
是非もう一度見たい。
もしかしたら既に街で、セクシー女優をやってる可能性もあるか。
とにかくラクホウに行って、忍者の末裔とやらを探ってみよう。
ゲームだとこの辺りは魔の領域。
そこには、影の里があった場所だ。
無関係とは思えない。
誰か居てくれれば良いんだけど。
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