第164話 強化魔力。
破壊王のスキルを使うには『強化魔力』が必要だと言うオム。
「強化魔法を使うって事か?」
「違う違う、強化『魔力』だよ。強化魔力はそのまま、強化した魔力って意味」
俺は首を傾げる。
『魔力を強化』って意味が分からん。
魔力で強化するなら分かるが。
「精錬みたいな事か?」
「精錬? ん~、違うかな? 分かりやすく言うと武器とか強化するでしょ? その要領で魔力を強化するんだよ」
「魔力を強化するとどうなるんだ?」
「強化される」
「それは分かってるが、どう強化されるのかイメージが湧かない」
「身体強化と同じ、魔力としての効果が強化されるんだ」
魔力としての効果が強化される……つまり精錬と似たような感じじゃね?
身体強化は、身体能力が強化されるから魔力は……その効果が強化される?
「やり方は、強化魔法を魔力に使う感じで身体強化とは違うからね?」
強化魔法は、補助魔法の1つで他人を強化したり、武器を強くしたりする時に使う魔法で魔力を込めた分だけ効果時間が続く。
その強化魔法を魔力に使うって事か。
身体強化は流すが基本だもんな。
魔力に魔力を流して意味無い……のか?
いや、今は強化魔力が先だ。
魔法使いじゃなくても強化魔法は使える。
強化するイメージで魔法を発動させれば良いだけだが、魔法職じゃなければその効果は弱い。
俺が加重をやった時のようにね。
やっていればいずれ強くなるはず。
オムに教わりながら魔力を強化する訓練を始めて1時間程で、ようやく強化魔力を作る事が出来た。
そこからスキル習得は早い。
流気も領域を広げるのも慣れてるからな。
「なるほど、これが強化魔力か、確かにこれが無いと破壊王のスキルは使えないな」
「案外簡単に出来たねぇ」
全身に強化魔力を流し、身体強化してその違いを確かめると、普通に身体強化するよりも明らかに強化されているのが分かる。
「いや、1時間も掛かったし、簡単じゃなかったぞ?」
「僕は1週間掛かったけど?」
うん、それは魔力制御のレベルが違ったんだろう。
「なあオム」
「なに?」
「ちょっと勝負しないか?」
「最強プレイヤーと~?」
「良いじゃん。ここじゃ死んでも生き返るんだし」
「でも武器無いしな」
「なら素手でやろう」
「そんなにやりたいの? 流石戦闘狂だね」
「いや、俺は訓練狂だ」
「訓練狂って……分かった。じゃあお互い素手でやろう」
そう言ってストレッチを始めるオム。
俺はオムから少し距離を取りながら外套と武器を収納し、首をコキっと鳴らして軽く身体を解すと準備完了。
オムも準備が整ったようで6メートル程離れて向かい合う。
「よし、いつでも良いぞ」
「じゃあ、僕から行くよ?」
「来い」
オムが地を蹴って物凄い速さで迫り、拳を打ち出して来たのを避けるが、オムの攻撃は止まらず、殴る蹴るの猛攻が始まる。
俺は攻撃を避け、弾き、受け流し、たまに防ぐのでオムの攻撃は入らない。
しかし、ショタの身体からは考えられない程重い攻撃だ。
これが破壊王の攻撃か。
弾くのもかなり重く、防いだ時は足まで重さが伝わって来る。
その証拠に俺の足が徐々に地面にめり込んで行く。
数秒オムの攻撃が続き、オムの蹴りを左腕で受け止めると地を蹴って後方へ跳び、距離を空けるオム。
「キジ丸さん、絶対おかしいでしょ」
「いや、その身体でその重さの方がおかしいだろ」
「全部の攻撃に破壊術を使ってるのに、全然破壊出来ないんだけど?」
あぁなるほど、それは攻撃に触れる時俺は、軽く溜気で弾いてるからだ。
分身との訓練で癖になってるんだよね。
だって分身の攻撃、全部溜気か流気を使ってくるから。
魔力を流されないようにしないと、すぐやられるんだよ。
「さてなぜでしょう?」
「強化魔力を使ってるのかな? すごい制御だね」
「訓練の賜物だ」
「じゃあこれならどうかな?」
そう言うとオムは、先程と同じように迫る。
攻撃を見極めようと観察してると、ドクンと全身に軽く衝撃が走り、一瞬動きが止まってしまう。
その瞬間にオムの右拳で顔面を殴られ、身体を回転させながら吹っ飛ばされてしまうが、すぐさま地面に手を突いて跳び上がり着地。
「うわ、もろに喰らって動けるの!?」
オムに殴られ軽く頭が回るが、すぐさま収まる。
「いや、今のは効いたぞ。流石だな」
「いやいやいや、ドラゴンでも殴り殺せるのに、キジ丸さんって人間じゃないでしょ?」
「普通の人間ですが?」
「普通の人族でそんなタフな人は居ないと思うよ?」
それにしても先程の攻撃。
身体が動かなくなったのはおそらく、破壊領域を使ったな。
面白い使い方だ。
「ってか破壊領域を使ったのに俺は破壊されなかったな?」
「あぁ、魔物や人は魔力とマナを持ってるからね。かなりの魔力とマナを消費しないと生物の破壊は難しいね。って、よく破壊領域を使ったのが分かったね?」
「全身を均一に衝撃が襲ったからな。何となく分かる」
「流石最強」
「じゃあ、次は俺から行くぞ?」
「よし! ドンと来い!」
俺も破壊術を試そうと強化魔力を練り、更に自己流で工夫をする。
強化魔力を溜気で叩き付けるとどうなるのか、試してみたい!
お互い腰を落として構え、縮地でオムの目の前に姿を現すと驚いた表情をするオムを視界に捉えながら、右拳を腹に叩き込むと同時に溜気を発動。
その瞬間、オムは爆発四散した。
光りの粒子になって消えて数秒で復活するとオムが身体を起こし、自分の身体を確かめる。
俺は殴った状態で少し止まってしまい、思っていた威力と全然違う事に驚いていた。
吹っ飛ばすつもりだったのに、まさか爆発四散するとは、強化魔力スゲー。
「キジ丸さん」
座ったまま俺を見るオム。
俺は突っ立って拳を見ていたがオムに目を向けると。
「僕粉々になったよね?」
「あぁ~、そうだな」
「やっぱり……なにあれ、殴られて身体が飛び散るなんて初めての経験なんですけど?」
「強化魔力を使って俺の技を試してみたんだけど、思った以上の威力だったよ」
「恐ろしい技を……でもまあ、最強の強さを知れて良かった! やっぱり僕はスローライフが一番だね」
「はは、その強さでよく言うな」
「スローライフは強くないと出来ないからねぇ」
まあ、確かに?
降りかかる火の粉を払うぐらいの強さが無いと、スローライフは出来ないか。
それにしても良い魔力制御を教えてもらえたな。
これなら遁術や魔法もかなり強くなりそうだ。
今日の訓練で試そう。
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