第163話 破壊王のスキル。

オムに職証創造の話をし、どうするか聞くと。


「証かぁ」

「オムはいろんな職業を経験してるだろ? その分、才能が有る奴に証を与えてやってほしいんだけど、無理強いはしない、嫌なら断ってくれて良いぞ」

「ん~……一応貰っとこうかな? この先ずっとここに居るか分からないしね」


300年居るのに?


「オムがそう言うなら与えとこうかってその前に、職業の証は持ってるよな?」

「うん」


そう言って右手に、綺麗な装飾が施された大きな片手ハンマーを取り出す。

オムに血を一滴垂らしてもらい、ステータスが見れるようにする。


「おお! ゲームの時よりかなり上がってる」


やっぱりプレイヤーは全員、証はインベントリに入れてるよね。

ステータスを久々に見てテンションを上げてるオムに、職証創造のスキルを与えるとオムが首を傾げる。


「あれ?」

「どうした?」

「鍛冶師の証を創れるんだけど?」

「あぁ、たぶんドワーフだからじゃね?」

「なるほど……って、住人専用の職業にも就けるの!?」

「ああ、魔道具師や錬金術師もあるぞ。あと農夫も」

「農夫! あっ、僕は創れないみたいだ」


シュンと落ち込むオム。


「農夫になりたいのか?」

「農業をするなら専門職の方が良いでしょ?」

「まあ、転職出来るようになった時のために……やるよ」


俺は農夫の証である、鉄製のクワを作るとテーブルに置く。


「おお、これが農夫の証、まんまだね」

「証を与える奴は見極めろよ?」

「ゲームの時みたいに、全員に与えれば良いのに」

「犯罪者まで力を得る事になるだろ?」

「? それはいけない事かな?」

「犯罪者に態々力を与える必要は無いと思うが?」


オムは首を傾げて言う。


「でも犯罪を犯さない人でも、理由があればすぐ犯罪者になっちゃうでしょ? 今は大丈夫でも、後に犯罪者になる人も居る。それを見極めるのは難しいと思うけど?」


うむ、確かにオムの言うとおりだが……そうか、ゲームの時も成人した者は全員職業を持ってる。

それをどう使うかは本人次第。

そいつがどう使うかまでの責任を背負う必要は無いか……与える側って難しいよな。


アマネは俺に任せると言ったけどそれは、見極めろって意味じゃない?

与えた者が犯罪に手を染め、関係無い人に被害が及ぶ。

それは簡単に想像出来る。

でも逆に、そういった犯罪から身を護る力にもなるか。

……難しく考えすぎたかな?


「そうだな、オムの言うとおりかも、望む者に与えれば良いだけかもな」

「与えた人がどうするかなんてその人の自由だからね。そこまで責任を負う必要は無いでしょ」

「流石300年生きてるだけある」

「見た目は子供、中身はジジイって?」

「ハハハハ! この世界にはそういう奴は多いだろう」

「だね」


それから少し雑談をしてるとオムの武器の話しになり、良い武器が無い事を悩んでるとの事。


かなり力があるのでどの武器も軽く感じてしまい、長い事武器は使わず殴ってるらしい。

しかし、それだけだと倒し難い魔物も居るらしく、戦斧を偶に使うが軽すぎて使い難いという。


「何か無いかな? まあ、斧でも良いんだけど、重さが足らないんだよねぇ」


重さか……ん?


「それなら良いのがあるぞ」

「何々?」


俺は右手に黒いインゴットを取り出す。


「それは……」

「閻魔鉱のインゴットだ」

「閻魔鉱!? マジで!?」

「これならオムに合った良い武器が作れるんじゃないか?」

「欲しい!!」

「まあ、タダとはいかないけどな」

「いくら? 2億ぐらいなら出せるよ?」


引き籠りがなぜそんなに持ってる。

だが俺が望むのは、お金じゃない。


「お金は要らない、破壊王のスキルを教えてくれたら譲ろう」

「職業スキル? まさか、習得出来るの?」

「ああ、出来る」


俺は今まで習得した幾つかのスキルを伝え、訓練すれば習得出来る事を話すとオムは、少し考えて答える。


「……分かった。破壊王の職業スキル【破壊術】【破壊領域】を教えるよ」

「よし、なら閻魔鉱のインゴットを10個やろう。武器は自分で作れるか? 無理なら俺が作るけど?」

「いや、鍛冶スキルも持ってるから大丈夫。それにいずれ、鍛冶師になったらどんな効果があるのかも試したいしね」


スローライフを楽しんでるなぁ。

と、インゴットを1つずつ出してはオムが収納していき、全部渡し終わるとさっそくスキルの練習を始める事に。


外に出ようとするオムに俺は、良い場所があると言って訓練空間へ連れて行く。


「何ここ?」

「訓練モードと同じ空間だ」

「えっ、じゃあ死んでも生き返るって事? 何でそんな空間を作れるの? キジ丸って神様?」

「ただの人族でプレイヤーだが? 報酬でもらった力だな」


職証創造のスキルのついでに得た力だと説明するとオムは、依頼主が誰か聞いてきたが企業秘密だと言って流した。


「絶対神様じゃん、依頼主」

「さて、さっそくスキルを教えてくれ」

「仕方ないね……まず【破壊術】だけどこれは……」


オムの話しによると【破壊術】は、魔力制御で力を操るとの事。

例えば、大きな岩を軽く殴るだけじゃ本来、破壊は出来ないけどそこに魔力を流し、力の通り道を作るとあら不思議、岩が粉々になってしまう。


それを聞いて俺は、流気を思い浮かべたが、流気は攻撃と共に魔力を流し、魔力で内部を破壊する技だ。

だが破壊術は、魔力ではなくあくまで攻撃した力を利用するらしい。


「岩を殴った時、その殴った力、エネルギーはそんなに広がらないけど、そこに魔力で通り道を作るんだよ。ついでにその力を増幅させてね」


オムが土魔法で大きな岩を作り実戦する。

軽く掌を添えるとオムの手を起点に、岩全体に亀裂が走り、一瞬で粉々になってしまった。

漫画である達人の技っぽい。

これを使えばどんな大きな魔物でも、かなりのダメージを与えられるとの事。



そして次は【破壊領域】を教えてもらったがこれは、かなりヤバいものであると理解した。

破壊領域は、魔力とマナを使い領域を広げ、その範囲にあるもの全てを破壊するスキルだ。


「ただしこれは、魔力とマナを重ねないと発動しないからね?」

「なるほど、了解」


試しに土魔法で作った岩を周囲に並べ、オムに教わったように魔力とマナで領域を広げ、そこから更に重ねて広げた瞬間、範囲内の岩が全て砕け散る。


……これは制御が難しいな。

オムみたいに粉々にならない。

しかし、流石破壊王のスキル。

凄いね。


「そして一番大事な事は、どちらも『強化魔力』が必要なんだ」


強化魔力?

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