第161話 同盟クランは?

ホムラに職証創造のスキルを与えいろいろ話をして最後に、後の事は師範代達に任せてギンジと道場を後にした。

道場を出て歩きながら先程のまでの事を思い返す。


「いやぁ、あんなに感謝されるとはな」

「師匠」

「ん?」


隣を歩くギンジが少し俯きながら真剣な表情で言う。


「ここからは、あいつを追う事にします」

「いいよー」

「軽い!?」

「ん? 止めてほしいのか?」

「あ、いえ……まだお前には早いとか言われるかと思いまして」

「相手を知らないのに分かる訳ないだろ?」

「そうですね」


苦笑いを浮かべるギンジ。

例えそれでギンジが負けて死んでも、それはギンジが選んだ道だ。

俺がとやかく言う気は無い。

……よし。


「今から訓練空間に行くぞ」

「えっ、今からですか?」

「ああ、お前に俺の、影明流の技を一つ教えてやる」

「師匠の……よろしくお願いします!」

「まあ、簡単だからすぐ覚えられるだろ」


そう言って路地裏へ行き、訓練空間へ転移するとさっそく俺の技を教える事にする。


俺がギンジに教える技は、瞬殺だ。

なぜこれにしたかというと、ギンジのユニークスキルと相性が良さそうだからね。

増えたギンジが全員、瞬殺を使えば大抵の奴は細切れにされるだろう。

この技を習得してからギンジがどう改良していくのか、その先はギンジの技量が試される。


瞬殺がどういう技か伝え、魔力制御を教えると2時間程で一撃の瞬殺が出来るようになったので、後は自己鍛錬で技を磨いていくだけだと伝え、路地裏へ戻る。



2人で通りに出るとギンジが向き直り、頭を下げて言う。


「キジ丸さん、ありがとうございました。必ずあいつを仕留めます」

「とにかく訓練を怠るな。俺が言えるのはそれだけだ」

「はい!」

「あっ、戦う時は連絡してくれ、立ち合いをするから」

「了解です。ありがとうございました!」


そう言って去っていくギンジに最後の言葉を贈る。


「ギンジ」


立ち止まって振り返るギンジ。


「また酒でも飲もう」

「はい!」


去っていくギンジを見送り俺は、周囲の景色を眺めてふと何か忘れてるような気がした。

なんだろ?

首都トウリンにまだ何かあったっけ?


ゲームの頃を思い返す。

首都トウリンに到着して飯を……あっ。


「和道」


クラン和道の皆が首都トウリンで食堂をやっていたはず。

もうこっちに来てるのかな?

食堂『和の和風』がこっちにもあれば居る。

どうやって探そう。


そこでスマホを使って検索してみるが、一件も出て来ない。

やっぱりこの世界には来てないのかも?

それか大昔に来て既に死んでる可能性もある。


「うむ……」


とりあえずタクシーの運ちゃんに聞いてみるかと思い、道路沿いを歩いているとタクシーが来たので手を上げて停め、ドアが開いたので後部座席に乗り込み、おそらく50代くらいの運ちゃんに、食堂和の和風があるのか聞いてみると。


「あちゃ~、お客さんも残念だね。その店は去年無くなったよ」

「去年まで有ったんですか?」

「ずっと閉店してて去年2ヶ月程やってたんだけど、すぐ終わっちゃったね。結構美味いって評判だったのに残念だよ。お客さんも噂を聞いて探してたのかい?」

「いや……その店主がどこ行ったのかは?」

「さあ? あっ、でも、同僚の奴が言ってたんだけどね。店主が『和風を探して旅に出る』とかなんとか、そんな感じの事を言ってたらしいよ?」


和風を探して旅に?

うん、間違いなく和道の連中だ。

和風を探してって……あぁ、現代化したトウリンが嫌だったのか。

まあ、こっちに居て生きてるなら良いかな?


クラン和道は、俺のクラン異界の里と同盟を結んでるクランで、くノ一だけのクランである。

旅に出たなら態々探す必要も無いし、次の目的地へ向かうかと、運転手に東のゲートへ向かってもらい、支払いを済ませてゲートから街の外へ出ると街道を少し進んで、街道から見えないくらい離れるとカゲを口寄せした。


長い事ギンジと一緒だったからな。

久しぶりの1人旅なので、カゲを呼ぶ事にしたのだ。


俺の影から出て来た軽トラより少し大きなカゲは、目の前でお座りして尻尾を振る。


『主、お久しぶりです! 狩りですか?』

「そうだな。久しぶりに狩りをしながら東のボルケン地方を目指そう」

『はっ! 乗りますか?』


背中を向けてこちらを向くカゲ、尻尾をブンブン振ってるのは、相変わらず可愛い奴だね。


「よし、久しぶりに乗せてもらおうかな」

『はい!』


カゲが立ったので跳んで乗ると、背中に抱き着く。

ん~、モフモフ最高。

堪能したので普通に座る。


「じゃあ、あっちに向かってまずは地上を行ってくれ」

『了解です!』


その瞬間、ブワッと物凄い加速で一気に走り出し、草原を駆け抜けるカゲ。

風が気持ち良い。

カゲが走るとすぐ草原が終わり、林に入ると木々の隙間を縫うように素早く走り抜けて行く、するとカゲが。


『主、右前方に魔物が居ます』

『よし、やれ』

『はっ!』


林の中を暫く走って行くと前方に、トラのような番の魔物が寝転がってるのを発見。

そのまま走って急接近し、魔物がこちらに気付いて立ち上がった瞬間、カゲが縮地を使って一瞬で魔物を通り過ぎて止まると、2匹の魔物の頭が落ちて血を噴き出しながら倒れる。

再生持ちの魔物でも余裕か、流石カゲ。



カゲが尻尾を振りながら軽い足取りで魔物の死体に近付いたので、俺が収納するとまた出発。


移動中カゲに、俺が呼んでいない間どうしてるのか聞くと、今までと同じように夜叉と訓練をしてるとの事。

場所は、ゲームの時と同じような世界だが以前とはまったく異なり、魔物が多いらしい。

その他は、神との繋がりが消えた以外、特に変わった事は無いという。


そんな話をしながらカゲが通りすがりに魔物を仕留め、俺が収納しながら進む事約1時間後。

ゲームの時にも来た事がある『セイリュウ砦』に到着。


だがしかし、ゲームの時と違って砦は、ボロボロになって既に廃墟と化していた。

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