第160話 布職?

マナミの逮捕から3日間、マナミ以外の犯人が居ないか調べた結果。

居ない事が判明した。

まさか本当に1人だったとはなぁ。


4日目の朝、キテツ達と朝食を食っているとキテツがマナミについて聞かせてくれた。

マナミは、いじめの対象の好きな男や父親と自らの身体を使って関係を持っていたらしい。

嫌がらせをするために好きでもない男と寝るとは、流石ビッチだね。


「それが生甲斐なんだろ。つまらん人生だよな」

「本人が良いなら良いんじゃねぇか? まあ、周りに迷惑を掛けるのは違うが」

「ですね。自分だけで完結するなら好きに生きれば良いと思います」


ギンジは敵討ちをしたいもんな。


「俺ならああいう奴は、甚振って苦しめて始末したいけどね」

「何かあったのか?」

「いや? クズはいくら甚振っても罪悪感を抱く事が無いだろ?」

「あぁ、なるほど」

「そんな事より……キテツの職業って今、四次職くらい?」

「四次職? あぁ、転職の数か、俺は……」


キテツに聞くと、侍→武将→侍大将→侍王将→侍王将・魔、侍王将・斬→???

となってるらしく、キテツは現在『侍王将・斬』らしい。

なら大丈夫だな。


以前は『魔の侍』や『技の侍』という職業があったが、アップデートで変わったのだ。

変わってからの侍については、殆ど知らなかったのです。


それから俺はキテツに職証創造について話し、証を創って誰に与えるかは、キテツに任せる事も伝える。


「それがあれば、門下生も侍になれるか……分かった。その役目、引き受けよう」


キテツが了承したので、早速職神で職証創造を与えると、すぐ侍の証を1つ手の中に創るキテツ。

ちなみに侍の証は短刀だ。


「それに血を垂らせば良いから」

「分かった。これって成人前でも良いのか?」

「いや、ちゃんと成人してからだ」


成人前に与えると魂が耐えられず、死ぬ恐れがある。


「なるほど、そこはちゃんと守った方が良いな」

「頼むぞ?」

「任せろ」


その後、キテツと少し話をしてから俺とギンジは、次の街へ向かうため、家を後にする。

ケンゾウや門下生達が来る前に家を出たかったのだ。

キテツと奥さんが見送ってくれたので十分。

キテツとは、ソウライさんを探す約束もしてるので、いずれまた来る事になるだろう。



俺とギンジは、入って来た時と同じゲートから出て暫く街道を進むと、街道から離れて林に入り、影に潜ると影渡りで首都へ戻る。

次の目的地は、首都から東にあるボルケン地方だ。

位置的にゲームでは、影の里があった場所だからな。

里の者がこちらに来てるのか確かめないと。

その前に、ホムラの所へ寄る。


仁皇流道場に到着し、奥の道場へ向かう途中、ホムラの子供のジンクが掃き掃除をしてたので声を掛け、ホムラは居るか聞くと。


「あっ、キジ丸さん、案内します」

「悪いな」

「いえ、暇なので大丈夫です」

「稽古はしないのか?」

「してますよ? ですが私に才能は無いようで、中々上達しないんです」


ほう、ホムラの息子なのに?

と思い、そっと看破で見るとちゃんと才能に、侍があった。

やっぱり職業に就いた方が成長しやすいのかな?


「妹は?」

「妹は、まだ成人してないのでなんとも言えませんが父と母は、才能があると言ってました」


ただの親バカじゃないのか?


「ジンクの事はなんて?」

「才能はあると言ってくれてます。今は壁に当たってるだけで、いずれ伸びるから稽古はしっかりやるようにと」


ちゃんと分かってるのか。

もしかして鑑定持ちかな?


道場に到着し、門下生達の稽古をしてるホムラが俺に気付き、すぐ近づいて来ると挨拶を交わす。


「キジ丸さん、どうしたんです?」

「ちょっと話があってな。人が居ない所で話せるか?」

「分かりました」


そうして以前話をした個室へ向かい、ギンジと俺がソファに座り、対面にホムラが座るとすぐ職業を聞く。


「僕の職業ですか? ずっと『侍大将・魔』ですけど、それが何か?」

「フッフッフッフッ、なら大丈夫だな」


ニヤっと笑いながら言うと苦笑いを浮かべてホムラが引く。


「何ですか?」

「あぁ、ジンクやレイカに職業の証を譲るとか言ってたよな?」

「はい、ジンクは既にこの世界では成人してるので譲りたいんですが、師範代としての立場があるので中々……」

「そこでとっておきの提案があるんだが、実は……」


キテツの時と同じように説明すると。


「本当ですか!?」

「まあ落ち着け、それでホムラには、その役目を任せたいんだが……あとオウカにもやらせるか?」

「是非! 他の師範代達は?」


他の師範代達か、一応戦ってどんな奴らか分かってるし……ホムラとオウカが居れば下手な事はしないかな?

もしやれば、ハンゾウが始末しに行くと言っとけば大丈夫だろう。


「良いぞ」

「ありがとうございます。ジンクもこれでやっと侍に……」


息子が悩んでる事は知ってたみたいだな。

良い親をやってるようだ。



という訳で、道場へ移動して師範代達を集めてもらい説明して納得してもらうと、さくっと職証創造を4人に与えた。

するとさっそくホムラが。


「ジンク!」

「はい!」


素振りをしていたジンクが走って来ると、さっそく右手に侍の証である短刀を作り、ジンクに差し出す。


「これは……」

「これに血を一滴垂らせば分かる」


ジンクはホムラの目をジッと見てから静かに受け取り、短刀を抜いて親指を少し斬ると短刀が光の粒子になり、ジンクの身体へと吸い込まれた。


そしてジンクは、目をパチクリさせホムラを見た後、すぐ自分の中にある事に気付き、目の前におそらくステータス画面を開いてるんだろう、嬉しそうな表情からすぐ真剣な表情に切り替え口を開く。


「父さん……ありがとうございます!!」


そう言って頭を下げるジンクに対しホムラは、笑顔で答える。


「はは、ジンク、それは僕のではなく、ジンクのだぞ」

「? 父さんの証を頂けたのでは?」

「それは新しい侍の証だ。キジ丸さんのお陰で創れるようになったんだ」


ジンクが俺を見るので頷く。


「じゃあ、父さんは引退しなくて済むって事ですか?」


頷くホムラを見てジンクは、パッと明るい表情になり、俺に深々と頭を下げる。


「キジ丸様、本当にありがとうございます!」

「しっかり鍛えろよ?」


ジンクは顔を上げて答えた。


「はい! いつか父さんを超えてみせます!!」

「ほう、私を超えるか、それは楽しみだな」

「その時は、俺と勝負しようか」

「是非!」

「次はレンカが成人したらだね」

「ああ、楽しみだ」


これで仁皇国には、更に侍が増えるだろう。

ゲームの時みたいに。

どんな強い奴が生まれるのか、楽しみだねぇ。

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