第158話 犯人は……。
朝食の時間になり、シナを連れて居間へ行くとキテツが既に居て奥さんが朝食を運んでいた。
「おは~」
「おう……シナを連れ込んだのか? 門下生に手を出すとはな。しかもまだ子供だぞ?」
「おはようございます当主様」
「昨日こいつが飛び降り自殺をしたんだよ」
そう答えながらキテツの対面に座り、俺の横に申し訳なさそうにキテツへ頭を下げシナが座る。
キテツは鋭い目つきをしてシナを見た後、俺をジッと見るので簡単に説明した。
「飛び降り自殺をしたところを俺が助けたんだ。で、気絶してたから部屋で寝かせてた。それだけだ。あっ、この後シナを少し借りるぞ」
「…………何をするつもりだ?」
「牙天流のロウタに話があってな」
そこでシナを見て何か察したのか、ニヤっと笑い答える。
「フッ、好きにしろ。犯人を見つけたら知らせろよ?」
「あぁ~……了解」
その後、ギンジも顔を出したので奥さんも座ると、皆で一緒に朝食を食べてから、食後の一服をし、シナを連れて牙天流道場へ向かう。
ギンジは、情報収集と観光をするらしい。
街中を歩いて牙天流の道場までは約10分程の距離にあり、不安そうなシナを励ましてると到着。
理源流の道場と同じ和風建築で結構大きい。
キテツの所と同じくらいかな?
門は既に開いてるので中に入り、右側にある建物に大量の気配と魔力を感知したのでそちらへ向かうと、両開きの扉が開いた状態でその前に、若い男が立っていた。
「ん? シナさん? こんな早くにどうしたんですか? 仕事にはまだ早いと思いますが?」
シナが答える前に俺が言う。
「すまんな。俺は理源流道場で世話になってるキジ丸だ。ロウタは居るか?」
「ロウタ君が何かしました?」
「いや、ちょっと聞きたい事があってな。居ないなら出直すが?」
「あっ、いえ、ちょっと待て下さい」
そう言って中へ入って行き、暫くするとロウタが木刀を持ったまま姿を現す。
どうやら朝の稽古中だったらしい。
「キジ丸さん? とシナ、こんな朝早くにどうしたんですか? シナもまだ仕事まで時間あるよ?」
「うん、あの……キジ丸さん」
シナが助けを求めるように俺を見るので、代わりに聞く事にした。
ここで時間を掛けたくない。
本当は、自分で聞かせるべきなんだろうけどね。
「ロウタ、お前が浮気をしたらしいんだが本当か?」
「はっ? 俺が? いやいやいや、そんな訳無いじゃないですか!? シナ、どういう事? 何か証拠でもあるの? 俺のスマホを調べてくれても良いよ? 浮気なんて絶対してないから!」
するとシナは、スマホを取り出し画像を見せる。
「ん? 何これ? ……はっ? 誰これ? どういう事? こんなの俺知らないぞ!? これ誰だよ!?」
スマホを手に取り、じっくり見るロウタ。
「それが知らない相手から送られて来たんだとさ」
「……このシーツ……誰だ? ……いつ? ……あっ」
「どうした? 心当たりでもあった?」
「いえ、俺が浮気したとかじゃなく……実は数日前、俺が寝てる間に人が訪ねて来たんです。でも俺が寝てると母さんが言うとすぐ帰って行ったらしいんですが、その尋ねて来たのが女性だったと、名前は言ってませんでした。俺の友達としか」
「なるほど、その時、部屋に侵入されてそれを撮られたと?」
「はい、シーツで隠れてますがこの日俺、暑くて袖なしのシャツを着て寝てたんです」
つまり、寝てるロウタに裸になって添い寝をし、シーツで隠してロウタも裸のように見せ、自撮りをしたという事か。
手の込んだ嫌がらせだな。
「そんな事をする奴に心当たりは?」
「いえ、まったく」
「シナは?」
「……マナミ」
「マナミ? って確かお前らと同じパーティーメンバーの子だよな?」
「シナ、何でマナミがそんな事をするんだよ? それにこの画像の女は、青い髪をしてるぞ?」
そう、マナミは茶髪で画像の女は、微かに垂らしてある青い髪が映ってる。
まさかカツラ?
そこまでやる?
「マナミが他の子に嫌がらせをしてるのを見た事があるの」
「マナミが? 何かの間違いじゃ……」
シナは首を横に振って答える。
「マナミは、男の子や先輩、知らない人の前ではいつも良い子のフリをしてるの、女の子だけになるといつも……嫌な事を言うんだよ。後輩の子に向かって才能が無いんだから早く辞めたら? とか言ってるのも聞いた事ある」
「あのマナミが?」
ほう、ザ・猫かぶりか。
これは面倒だな。
……よし。
「シナとロウタ、ちょっと手を貸してもらえるか?」
「俺が? 何をするんですか?」
「私に出来る事なら」
「今日の仕事中にさ……」
俺は2人にやってもらいたい事を伝え、2人が了承してくれたので一旦別れる事にする。
シナは、ロウタと一緒に牙天流道場で仕事まで訓練をするらしい。
そして俺は、2人の影に分身を忍ばせ一旦帰り、その時が来るまで自分の訓練と研究をしながら待ち続け、ロウタ達がその日の仕事をそろそろ終わりそうな時間になった頃、街から少し離れた街道でロウタが、カンジロウとエイタを連れてトイレに行ってもらい、シナとマナミから一旦離れてもらう。
マナミとシナだけになると少しして、マナミが口を開く。
「ねえ、シナ、ロウタとさっさと別れた方が良いんじゃない? あいつ浮気してるらしいよ? 友達が他の女の子と手を繋いで歩いてるの見たんだって」
「ロウタが?」
「うん、だからあんなのとはさっさと別れた方が良いよ。シナからフッてやったら?」
「ん~……それでも私はロウタを信じる」
「浮気されても? 遊ばれてるのに?」
「戻って来たら聞いてみるよ」
するとマナミの態度が変わる。
「はぁ~、親切に言ってあげてるのに本当、あんたってのろまね」
身体をビクッとさせるシナ。
マナミは、シナに近付くと耳元で囁く。
「別れないなら、あんたをイジメて追い込んであげようか? どれくらいで死ぬか楽しみだね」
顔を青くして身体を震わせ、涙を流すシナ。
なるほどねぇ。
これがこいつの正体か。
つまらん人間だな。
俺は忍者姿の分身で影からマナミの背後に出ると告げる。
「お前が自殺に追い込んだ犯人か」
「っ!? だ、だれ?」
バッと振り返るマナミは、見た事ない近未来的な忍者に驚き固まる。
さて、ここからは地獄を見てもらおうかなぁ。
とその前に、キテツに伝えないとね。
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