第157話 シナのトラウマ?
式紙から送られて来たリアルタイムの映像には、丁度シナが屋上から飛び降りたところだった。
すぐさまケルスと共に特殊空間から路地裏へ転移する。
「っ!? さっきの路地裏?」
「ハンゾウ」
「はっ」
「行くぞ」
「承知」
「えっ? あの、その人は……」
ケルスが何か言ってるが無視してケルスを放置し、分身と影に潜ると式紙の影に移り外に出ると人が通っていない道路にシナが倒れてるのを発見。
縮地でシナの横へ瞬時に移動し、魔力感知で既にシナが死んでいる事は分かっている。
空間感知で周囲を探るが、誰かが突き落としたという事は無いようだ。
シナ本人が飛び降りた。
それが事実なんだろうが……。
周囲に誰もおらず見られている気配は無い事を確認し、両手で印を結ぶと術を発動。
その瞬間、死体の上に円を描くように幾つも光る印が現れ、真ん中に見た事ない印が出現すると強く光り、シナの死体に光の粒子が降り注ぎ、死体を強い光りが包むと数秒程で光りが治まる。
蘇生術。
ゲームで1度も使ってないがまさか、異世界に来て使う事になるとはな。
それにしても、凄い魔力を食うなこれ。
ステータスを確認するとMPの半分を失っていた。
これはあれか、どれだけMPが多くても半分消費する術って感じか?
…………なるほど、必ず半分消費だけどMPが多いと蘇生した時、瀕死ではなくHPが全快の状態で生き返らせられるようだ。
忍者・神の知識にあった。
しかも調整出来るらしい。
次からは抑えめで使おう。
地面に広がっている血とシナを水遁で綺麗にしてから乾かし、もう一度クリーンで綺麗にするとシナを担ぎ、使わせてもらってる部屋へ転移する。
シナを布団に寝かせ俺は、部屋の隅の畳の上で寝る事に。
すると朝方、日が昇る少し前に気配がして目を覚ますと、シナが身体を起こし部屋の中をキョロキョロ見回してるのが空間感知で分かり、俺も身体を起こし声を掛けた。
「調子はどうだ?」
「っ!? キ、ジ丸さん、ここは……」
「理源流道場の母屋で俺が借りてる部屋だ」
「どうして私は、ここで寝てるんですか?」
「何も覚えてないか? 最後の記憶は?」
シナは少し考えると。
「えーっと……あっ」
一気に顔色を悪くするシナ。
飛び降りた時の事を思い出したか?
「どうした?」
「あ、あの……いえ……なんでもありません」
「飛び降りた時の事を思い出したのかな?」
「えっ……私が飛び降り?」
「違うのか? それで顔色を悪くしたのかと思ったが……じゃあ、何を思い出した?」
「……別に何も」
『ロウタが、他の女と……』
そう言って涙を流し、布団に顔を埋め静かに泣くシナ。
やっぱりロウタと付き合ってたのか?
それでロウタが他の女と……浮気? それとも寝た?
まあ、それで裏切られたと思い、飛び降りたってところか……俺には分からん感情だな。
「お前はロウタと付き合ってるのか?」
「……はい」
顔を埋めたまま答えるシナを見ながら告げる。
「浮気されて飛び降り自殺をしたって事か」
「私……もう死んでるんですかね?」
「生きてるよ。ちゃんとここに存在してる」
「……死にたい」
「何で?」
「……もう裏切られるのは嫌です」
「以前にもロウタに裏切られた?」
すると少し顔を上げて首を横に振る。
「……私は親に捨てられたんです」
それからシナの話をじっくり聞くと、5歳の頃親に捨てられて孤児院で暮らす事になり、12歳になって理源流道場に通い始めたそうだ。
そして2年前、複数の道場の門下生が集まっての仕事が始まり、そこでロウタと出会い付き合う事になったと。
シナがいう裏切られるとは、親に捨てられる事から来てる。
浮気をされたのはシナにとって、親に捨てられるのと同じって事だな。
ん~、話しを聞くと何かおかしいんだよなぁ。
あのまじめで素直なロウタが浮気をするか?
シナに手を出すと言われて、ケルスの勝負を受けたロウタだぞ?
まさかロウタ、女たらしなのかな?
それとも超女好き?
将来ハーレムを築きたいと思っててもおかしくはないけど。
「なあ、ロウタが浮気をしたってなぜそう思う?」
「? 浮気したって言いましたっけ?」
「それよりどうなんだ?」
心眼で視たとは言えないよね。
「……メールが送られて来たんです。画像付きの」
「見せてくれるか?」
シナはポケットからスマホを取り出し、少し操作して手渡して来たので受け取り、画面を見るとそこには、顔は映ってないがロウタと女が裸でベッドに入ってる画像が映っていた。
「ほう……」
「一緒に映ってる女は、私じゃありません。そんな写真撮った事ありませんから」
「なるほど……」
ん?
写真は、寝てるロウタの顔にシーツで隠した胸を引っ付け、女が自撮りしてる様子だ。
ロウタは完全に寝てるがロウタの身体は、完全にシーツで隠れている。
それにシーツの皺を見る限り、ロウタは服を着てるのでは? と思えるのだが……。
「これがどこで撮られてるか分かるか?」
「ロウタの部屋です。そのシーツはロウタの部屋の物です。女を連れ込んで……」
三角座りして顔を隠すシナ。
ロウタに直接問いただしたのか聞くと首を横に振り、聞くまでもなく完全にこの画像を信じてるようだ。
「これは直接ロウタに聞かないと分からないぞ」
「いえ、私は捨てられたんです」
聞くのが怖いか。
言われて傷つくより、自分でそう思い込んだ方が傷が浅いからな。
だがこれは、本人に聞くのが一番早い。
「自分だけで答えを出すな。お前ら付き合ってんだろ? ならちゃんと話して相手の話を聞け」
じゃないと、何も成長しない。
まあ、捨てられるのは、シナにとってトラウマになってるんだろうけど。
とりあえず話しをしないとな。
これが戦闘なら、戦って相手を倒せば良いだけなので楽なんだけどなぁ。
本当恋愛は、面倒臭い。
「直接聞くのが怖いだろうが、そうしないと何も成長出来ないぞ?」
「成長……しなくても良いです」
「はっ? シナは強くなりたくないと? ならなぜ道場に通ってる?」
「いえ、侍として強くはなりたいです。けど……」
「直接話を聞くのを怖がってる奴が、本当に強くなれると思ってるのか?」
「うっ……」
「朝飯食ったら牙天流道場に行くぞ」
「えっ、でも稽古と仕事が……」
「ケンゾウには俺が言っておく、キテツにもな」
とにかくこの画像が本当かどうか確かめ、誰が態々こんな事をしたのか確かめる。
ちなみに誰がこれを送って来たのか聞くと、知らない連絡先らしい。
誰かがシナをターゲットにしたって事だ。
犯人を見つけ出し、今まで犠牲になった者の恨みを晴らしてやろう。
クックックッ、クズを甚振るのは楽しみだねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます