第155話 エーテルの性質。
道場都市オウレンで度々起こっている自殺。
その原因は、いじめによるものと判明。
ただし、主犯はまだ分かってない。
数人なのかまたは単独なのか。
それを調べるため、キテツの家に泊めてもらい、調べる事にした。
キテツの家に泊った翌日からギンジには、街中で情報収集をしてもらい、俺はネズミや鳥の式紙を街中へ大量に放ち、式紙達にいじめらしき現場を探してもらう。
式紙は、自我を持っているので感覚共有をして自分で探る必要が無いので、かなり楽だ。
そして俺はというと、特殊空間で訓練である。
中央で座禅を組み、全身から虹色の光を放ちながらジッとしていると徐々に光は、俺を包むように綺麗な球体へと姿を変えていく。
エーテルの制御訓練。
これは、魔力、マナでもやる制御訓練で、体外に出たエネルギーをコントロールし、綺麗な球体を維持するという俺が編み出した訓練法だ。
身体の外に出たエネルギーをコントロールするのは、かなり集中力が必要になる。
意識を広げながらも一点に集中するような感覚だな。
地味な訓練だが結構神経を使うんだよね。
乱れるとガンガンHPとMPが減っていくのが分かる。
そう、制御をしっかり出来れば、HPとMPの消費が抑えられるのだ。
ここ最近訓練をして気付いた。
ゲームの時は、問答無用で消費されると思ってたからあまり使わなかったのに、制御を高めれば抑えられるとは、もっと早くやれば良かったよ。
エーテルの訓練を本格的に始めて、エーテルの性質に気付いた事がある。
それは、今までエーテルを使う際、HPとMPを消費してその分をすぐ使うか長くて2分か3分程制御して使っていたがエーテルは、例えばHPとMPを100ずつ消費してエーテルにした後、時間が経てば経つ程『増幅』するようだ。
30分もすれば、HPとMPを1000程消費した時と同じくらいにまでなった。
なのでエーテルは、魔力やマナに比べて制御が難しい。
常に水が湧いて来る器を持っているようなもんだな。
止める事は出来ず、溢れたら自分に反動が返ってきてダメージを受ける。
しかし、受け入れる器を余裕を持たせようと制御を強めてしまうと、エーテルが一気に増幅して制御を弾かれ、一気に溢れて大きなダメージをくらうのだ。
そういう理由からエーテルの制御は、溢れるギリギリを保たないといけない。
これが物凄く疲れるんだよ。
エーテルを使った時に感じる高揚感は、増幅が原因なのかも?
とにかく、エーテルの制御をもっと完璧にしないとな。
エーテルの制御訓練、次元エネルギーの研究、そしていつもの訓練をしながら過ごし、たまにギンジの訓練に付き合い、キテツの家に泊って約3日が経った頃。
キテツ達と晩飯を食って使わせてもらってる部屋に戻ると、その日得た式紙達からの情報を送ってもらい、情報を整理して精査する。
昨日までは特に何も無かったが送られて来た情報を精査してると、いきなり式紙から新たな映像が送られて来た。
それは、路地裏でロウタとケルスが歩いてる映像だ。
式紙の鳥が建物の屋上から見下ろしている。
遠すぎて話し声は聞こえないが、雰囲気がおかしい。
暫くすると2人は、人がまったく来ない路地裏の少し広くなった場所に到着。
そこで何やら話をした後、ロウタが刀を抜き構えるとケルスも刀を抜いて構えた。
これは、決闘?
っていうかこれリアルタイムの映像か。
なんて思ってると戦いが始まる。
……ほう、ロウタも良い動きをするな。
ケルスは、ロウタより年上で先輩なだけあって余裕で攻撃を躱してる。
実力に差があり過ぎだ。
秘密の特訓か?
とりあえず見に行くかな。
ベッドから降りて影に潜ると、影渡りで式紙の影に移動して外に出た。
「ごくろうさん、他の所を頼む」
そう言いながら鳥を撫でると、バサバサと夜の空へと消えていく。
さて、あいつらは何をしてるのやら。
すると強化されている聴覚が会話を拾う。
『おら! どうした!? そんなもんか!?』
『クッ……この……』
『ハハハハハ!! 俺は強いぜ!? ほれほれ、死んじまうぞ?』
『何で、こんな……』
『お前が調子に乗ってるからだよ!』
そう言ってケルスは、ロウタの腹を浅く斬る。
いや、ロウタが自分で後ろに跳んで躱したな。
ほうほう……ロウタは結構筋が良い。
俺のアドバイスをちゃんと自分のものにしてるね。
だがケルスは、俺が言った事を何1つ出来てない。
こりゃ徐々にロウタが押して勝つな。
うむ……これはいじめになるのか?
侍なら普通の稽古にも見えるし、決闘にも見える。
果たして止めて良いのか悩むぞ。
するとケルスの斬撃を受け流し、ロウタが流れるような踏み込みでケルスの顔目掛けて突きを放つが、ギリギリ躱されケルスの頬を浅く斬るだけに終わる。
『てめぇ……殺す』
『うぐっ!』
突然ケルスの雰囲気が変わり、ロウタを見下すような目で見て腹を蹴り吹っ飛ばすと地面に倒れたロウタに向かってゆっくり歩いて行き、倒れたロウタを目掛けて刀を振り下ろした。
が、刃によって受け止められ火花が散る。
「なっ!?」
「ようケルス。何やってんだ?」
そう、俺が間に入り、脇差しで受け止めたのだ。
ケルスはすぐさま後方に跳び距離を空けると、構える事なく口を開く。
「な、なんであんたがここに?」
「いやぁ、秘密の特訓でもしてるのかと黙って見てたけどお前……ロウタを殺そうとしたな?」
「っ!? い、いや、そんな事は、これはそう、特訓だ! 後輩のためを思って実戦形式の特訓をしてたんだよ」
「最近いじめで自殺する子が多いらしいけど……お前か?」
「はっ!? 何言って、いやいや違う、俺じゃないぞ!?」
うむ、混乱し過ぎて心眼で視えないな。
俺は脇差を納刀しながら問う。
「ちょっと落ち着け……お前がいじめて自殺に追い込んでるんじゃないのか?」
「……はっ? いやいやいや、そんなだせぇ事しねぇよ!」
「じゃあ今やってる事は?」
「だからこれは、特訓だって……」
「いや、さっき明らかに殺気を込めて刀を振り下ろしたよな? 俺の目はごまかせないぞ?」
「あれは……ついカッとなって」
「ほう、お前はカッとなって人を斬り殺すのか……」
「っ!? いやちが……」
侍として感情まかせに刀振るのは、未熟者の証。
そして『人斬り』への第一歩である。
このままいけばケルスは、いずれ人斬りになるかもな。
まあ、まだ若いので修正は出来るだろうが、さて……どうしてやろうか。
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