第154話 死の原因。
キテツの前に座り込み、何が起きてるのか詳しく話を聞く事に、他の者達も近くに座り、話しを聞いている。
そして話しを聞いて分かったのは、2年程前からこの街で、ちょくちょく自殺者が出るようになったらしい。
警察も詳しく調べたが自殺以外の証拠が何も出ないようで、街の人達も不安を抱えてるという。
更に自殺してるのは、殆どが女の子。
それも道場に通う門下生ばかり、たまに道場とは関係無い子まで自殺をするそうな。
「全員女の子?」
「いや、2人だけ男の子だ。他は全員女の子だな」
約2年間で自殺者は計11人。
その内男が2人。
地球なら少ないほうだろうけど、魔物が居るこの世界でしかもこの街だけで11人は、ちょっとおかしい。
しかも、強くなるため道場に通ってる子が自殺を選ぶか?
これはもしや、以前あったような呪術の仕業?
「自殺者に他の共通点は?」
「後は……歳の近い子ばかりが自殺をしてる」
思春期の悩み?
あっ、まさか男女のいざこざ!?
いや、それだけで自殺はしないか。
する人は居るだろうけど11人は流石に多い。
そこで、暗い表情をしてるシナを見て、ふと違和感を覚える。
「自殺してる子ってシナぐらいの子?」
「そうだな。シナの1つ上か同い年か、1つ下くらいだな」
「シナ」
「はい?」
「何か知ってる事があるなら教えてくれるか?」
「えっ、あの……何も知らないです」
『話したら私がターゲットにされる』
シナの心の声が心眼で視えた。
話したらシナがターゲットになる?
まさか暗殺の標的にされるって事か?
一連の自殺は、全部自殺に見せかけた暗殺?
うむ、シナにどう聞けば確信が視えるか……何か知ってるのは確かだ。
それを視るには……。
「例えば、殺しの現場を見たり、取引現場を見たとか無いかな?」
「? いえ、無いです」
本当の事を言ってるか。
殺しや怪しい現場を見た訳じゃないと……いや待てよ?
地球だと中学生か高校生ぐらいの子供達が、ターゲットにされると言えば……いじめ?
「見た事ないか……誰かが嫌がらせをしてる現場とかは?」
「っ!? あ、ありません」
『話したら私がいじめられる』
ビンゴ!
それにしてもいじめか、ダサい事してんだなぁ。
でも、11人全員いじめられてたのか?
通う道場もバラバラで、男の子まで居るのに。
いじめてる奴はどんなガキ大将だよ。
……いや違うな。
ガキ大将なら男の子の標的が多いはず。
女の子の自殺者が多いって事は、犯人は女。
それもシナと同年代。
まあ、男の可能性もあるけど。
とにかく、自殺に追い込む程陰湿ないじめをするような奴だ。
見つけたら俺がいじめてやろう。
クズには何をしても良いが俺のモットー。
むしろそういうクズを追い込むのが、物凄く楽しい!
「キジ丸、何を笑ってるんだ?」
「ん? 笑ってた? いや、この事件の犯人がどんな奴か分かったからさ」
「事件って事は、自殺じゃないって事か?」
「俺の推測が正しければ半分正解」
「半分? どういう事だ?」
追い込んだのは犯人だが、死を選んだのは本人だ。
なので半分正解。
死を選ぶくらいなら、道連れにすれば良いのに。
いじめて来るクズの事を思って出来ないなら、他の被害者のためにも道連れにするべきだったな。
悲しみを怒りに変えて、そいつに全部ぶつければ良いのにね。
まあ、そんな簡単には出来ないか。
「ちょっと調べてみるよ。確証が持てたら教えてやる」
「分かった」
「という訳で、ちょっとの間泊めてくれ」
「良いぞ。母屋に空いてる部屋があるから使え、ギンジもな」
「ありがとうございます」
「あいつは、まだ寝てるのか?」
「いや、起きてるよ」
「……あぁ、おい! いつまで寝てるフリをしてるんだ? さっさと帰れ!」
キテツが横になってるケルスの方を見て言うと、ビクッと身体を震わし身体を起こし、立ち上がると何も言わず頭を下げ、道場を出て行った。
実は話の途中でケルスは、意識が戻っていたがジッと寝たフリをしていたのだ。
気配察知で丸わかりである。
「何だあいつ?」
「恥ずかしいんだろ。素手相手に手も足も出なかったから」
「ハンゾウと戦わせたらもっと面白いかもな」
悪い顔をしてそんな事を呟くキテツ。
ハンゾウでやると、軽く手足を斬り落とす事になるぞ?
そして再生させてまた斬るという稽古になる。
その後、キテツとの試合は調査が終わったらという事になり、良い時間なので皆で昼飯を食べる事になった。
あっ、シナと報せに来たロクセは帰ったよ。
母屋でキテツ、ケンゾウ、俺とギンジの4人で居間に集まり、座って待ってるとお茶を持って来てくれた女性が料理を運んで来る。
「どうもいらっしゃいませ」
「どうも」
「あっ、ありがとうございます」
「久しぶりの女将さんの手料理」
ケンゾウが嬉しそうに言う。
「ありがとう。エミリも一緒に食うか?」
「いえ、まだやる事があるので後で頂きます」
キテツの誘いを笑顔で断り、部屋を出て行くエミリさん。
何者だろう?
この2人のやりとり……やっぱりお手伝いさん?
「なあ、今の人は?」
「俺の奥さんのエミリだ」
「はっ? キテツの妻って事?」
「当然だろ。それ以外に何がある?」
「あれ? お前不老だよな?」
「あぁ、実はあいつも一緒に不老にしてもらったんだ」
おう、不老の夫婦とはな。
「子供は?」
「居ない。不老になると中々子供が出来ないらしいんだ」
「へ~、そうなんだ」
出来にくいだけで、完全に出来ない訳じゃないんだな。
まあ、サイオウとラメリも子供が居るしね。
あのキテツが結婚かぁ。
人って変わるもんだな。
「よし、冷めない内に食ってくれ」
「「「「頂きます」」」
手を合わせてからさっそく食べ始める。
ちなみにメニューは、野菜炒めと焼き肉にスープだ。
これは、家庭の味がする!
普通に美味い。
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