第150話 何年ぶりの再会?

オウレンに到着した俺達は、サブマスに付いてギルドへ向かった。

ロウタ達が今日の報告をするついでに、俺とギンジが倒した魔物の素材を買い取ってもらうためだ。


ギルドの場所は、ゲームの時と同じだが建物はビルになっており、裏に解体場があるというのでそっちへ向かう。


「じゃあ、魔物は全てここに出してくれるかな?」


サブマスの指示どおりに収納した魔物の死体を全て出し、解体は従業員に任せて解体場を後にすると俺達は、会議室へ案内される。


長机と椅子がロの字に並べられており、サブマスが奥の席に座ると左側にロウタ達とギンジ、そして俺がサブマスから一番遠い席に座り、右側に助けに来た人達が席に着くとロウタが今日の報告を始める。


朝から見回りをした後、街道を回ってあの街道でウルフとゴブリンに遭遇。

その後、ウルフとレグスの襲撃があって今に至る。


「なるほど、最初はウルフとゴブリン、その後にウルフとレグスがやって来たと……近くに隠れていたのか?」


最後、ボソッと呟いた声は、俺にだけ聞こえたようだ。

街道には、たまにあれぐらいの魔物が出るって言ってたし、近くに巣でもあるんじゃね?


そして俺達が合流した後の説明に入ると、サブマスが話しを止める。


「ちょっと待て」

「はい?」

「キジ丸殿は、レグスとウルフに囲まれている子供達が居るのに、手を貸さなかったのか?」

「いや? 俺とギンジで20体程間引いて後は、ロウタ達の訓練として戦わせたが?」


それが何か?


「はは、それが何か? といった顔をしてやがる」


ケンゾウが笑いながらそんな事を言う。

俺の心を読めるらしい。


「普通そんな状況なら助けるのが当然だと思うが?」

「普通? 別に死ぬ訳でもないのに、若者から成長するチャンスを奪うのか? ちなみに俺の中身は、40歳だからな?」


そう言うと銀髪のラスランが口を開く。


「っ!? 不老か……って、レグスが10体以上居る時点で、助けるのは当然だと思うのですが?」

「成長のチャンスか……ロウタ、彼の言う事に間違いは無いか?」


サブマスに問われたロウタは、少し考えて答える。


「……はい、間違いありません。戦闘中、キジ丸さんは俺達に、いろんなアドバイスをくれました。そのお陰でレグスを倒せたと思います」

「ふむ、そういう事ならキジ丸殿に問題は無かったと認めよう。だが、下手をしていたら死んでいた可能性もある。そうなっていたらどうするつもりだったんだ?」

「危なくなったら手を出すつもりだったさ。その結果、3人は生きてる。それが答えだろ?」

「……まあ良いだろう。それでロウタ、その後は?」

「はい……」


ロウタ、カンジロウ、エイタが説明をし、途中から見ていたケンゾウも説明し、無事報告は終わった。



ギルドのロビーに戻ると買い取り金の受け取りがあると言われたが、口座に全額振り込んでもらい、ケンゾウの案内で理源流の道場へ向かう事に。

シナとケルス以外の者達はそれぞれ道場へ戻るため別れ、ケンゾウ、シナ、ケルス、俺とギンジの5人で道場へ向かって歩きながら雑談をしてると、金髪ショートヘアのシナが口を開く。


「あの、キジ丸さんは、当主の知り合いなんですか?」

「ああ、友達だ」

「ケンゾウさんに聞きました。昔の当主ってどんな感じでした? 今みたいに怖い感じでしたか?」

「えっ、今のあいつ、怖い感じなの?」

「私達門下生は、ちょっと近寄りがたい存在です。でも、優しい事は知ってます。ですが普段は、師範代に教えてもらってるので、話す機会は殆どありません」

「そうなの?」


前を歩くケンゾウに聞くと少し考えて答える。


「ん~、俺は直弟子だからなぁ。鍛錬の時と戦いの時はおっかねぇけど、普段はシナが言ったとおり優しい人だな」

「ほう、俺が会った時のキテツは、ただの浪人かと思ったぞ」

「浪人……」

「師匠がか?」


ソウライさんを探して旅をしてたからな。

それに、キジ丸として初めて会った時も、ギルドで声を掛けられたが酒を持ち歩いてたし、浪人に見えたのは間違い無い。


「あと、いつも酒を持ち歩いて飲んでたぞ」

「あぁ、それは今も変わらねぇな」

「未だに酒飲みかよ」


良い歳して何やってんだか。

まあ、変わらずって感じかな?

ソウライさんはどうなったのか、いろいろ聞きたい。



雑談をしながら歩いて行き、通りに出てふと思い出す。

ゲームの時とは周囲の建物は、ちらほら変わってるし、通りもアスファルトのように舗装されてるが、理源流道場の場所は変わっていなかった。

建物は綺麗になってるが、相変わらずの和風建築だ。


門を潜り、中に入ると正面の建物へ進み、ケンゾウがガラガラと玄関を開ける。


「ただいま戻りました! 師匠! お客さんです!! よし、上げってくれ。シナとケルスは道場に行ってろ」

「はい!」

「分かったよ」


そう言ってケルスとシナは、母屋の隣に建つ道場へ向かった。

あの時と殆ど変わってない道場。

母屋に入るのは初めてなのでよく分からないが、靴を脱いでケンゾウの案内でギンジと奥へ通される。


辿り着いたのは、障子が閉まっている縁側の廊下。

ケンゾウが「お連れしました」と声を掛けると「入れ」と言われ、ケンゾウがスッと障子を開けると畳の部屋のど真ん中に、木製の立派なテーブルが置かれており、上座に座ってお茶を飲みながら新聞を読んでるおっさんが1人居た。


新聞から目を離してこちらに目を向けた瞬間おっさんは、目を見開いて固まる。


「ようキテツ、久しぶりだな」


ケンゾウは頭を下げ、俺とギンジが中に入ると障子を閉めて、俺達だけを残す。

固まって動かないキテツを放置し、俺とギンジはキテツの対面に座り、何も言わないキテツに告げる。


「お茶ぐらいだせよ」


そう言ってニヤっと笑う。


「……キジ丸?」

「ああ、キジ丸だ。キテツ……老けたなぁ」


以前より皺が少し目立ち、白髪が少し混じってゲームの時よりもオッサンになっていた。

これまでキテツに何があったのか、色々聞かせてもらおうかね。


「……あっ、すまん、おい! 誰か2人に茶を持って来てくれ!!」

「偉くなったなぁ。今じゃ当主だって?」

「あ、ああ……それよりキジ丸、あの頃とまったく変わってないんだが?」

「俺は不老だからな。そんな事より聞きたい事がある……ソウライさんは死んだのか?」


俺の問にキテツは、一瞬驚いた顔をしたが目を伏せ、首をゆっくり横に振った。

やっぱり死んだのか……。


「師匠が死んだのか生きてるのか、何も分からん」


どういう事?

ソウライさんは、ずっと道場に居たはずだよな?

いったい何があった?

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