第149話 懐かしの道場都市オウレン。

まえがき


『ゲンゾウ』となっていましたが『ケンゾウ』に変更しました。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ケンゾウと話をしながらロウタ達の戦いを見てると、ようやく最後のレグスを倒した。


「お疲れさん」

「はあはあはあ……」

「はあ、はあ……」

「ケンゾウさんも手を貸してくれてもよかったのに」


ロウタとカンジロウは、かなり疲れたようで息を荒くしてその場に座り込む。

エイタは、上手く退きながら戦っていたのでそれ程体力の消耗は無いようだな。


「こいつがお前らの訓練だった言うからよ」

「良い訓練になったろ? じゃあ、オウレンに向おうか」

「あれ? 魔物の死体が消えてる」


カンジロウは今頃気付いたのか、周囲を見回しながら言う彼にギンジが収納してある事を伝えた。


「収納……覚醒者か」

「じゃあ、俺とギンジは先に行ってるから後は任せる」


ケンゾウの肩を軽く叩いて歩いて行こうとすると。


「ほらお前ら、さっさと立て! 行くぞ!!」

「ちょっとだけ、休憩させて下さいよ」

「ロウタ、お前リーダーだろ? しっかりしろ」

「はぁ~……了解です! よし、街に帰るぞ!」

「おう!」

「やっと帰れる」


俺とギンジが先頭を歩き、街道を進んでいると前方から複数人の魔力を感知し、空間感知で調べると街に向かった女の子2人と3人の男が走って来るのが分かった。

増援かな?

それにしては来るのが遅い。



俺達は足を止め、走って来る者達を待つ間、ケンゾウが俺の横に来て前を見ながら言う。


「今頃来たのかよ」

「あれは誰だ?」


一番前を走ってる男の事を聞く。

黒髪をオールバックにした男で、ロウタ達と同じような格好をしてる。


「一番前の男は、冒険者ギルドのサブマスターだな。右側の男がロウタ達と同じ仕事をしてるパーティーのリーダーで左側の男は、ロウタの同じ門下生だ」


右側の男は、銀髪を後ろで縛ってるイケメンで左側の男は、短髪の金髪でロウタより少し年上の若い男って感じだな。

それにしてもサブマスが来るとはね。


なんて話をしてると近くまで来て、途中から歩きながらサブマスが口を開く。


「ケンゾウ殿、魔物は?」

「もう終わったよ」

「ロウタ! カンジロウ! エイタ!」

「皆大丈夫!?」


マナミとシナが後ろに居る3人に駆け寄る。


「大丈夫、ケンゾウさんを呼んで来てくれたんだな」

「街に着いたら門の所に居たから、それより、よくあの状態で助かったね?」

「はは……」


苦笑いを浮かべて俺を見るロウタ。

それを無視して前に向き直ると、銀髪の男がケンゾウに話し掛ける。


「ケンゾウ殿、皆を護って頂き感謝します」

「いや、俺が着いた時には残り1体になってたし、俺は何もしてねぇよ」

「は? 30体程のレグスをロウタ達が倒したと?」


そこでケンゾウが俺を見る。


「君は?」

「俺は侍のキジ丸だ。あんたは?」

「これは失礼、オウレン支部冒険者ギルドのサブマスターをしてる『ガレン』だ」

「自分は蛇九じゃく流の『ラスラン』と申します」


銀髪がラスランね。


「俺は、牙天流の『ケルス』だ。ロウタがレグスを倒したって本当か?」


この金髪、ロウタと同じ門下生のくせに、言葉遣いが悪いな。


「まあ、あの3人で力を合わせて5体のレグスを倒してたよ」

「残りは?」

「俺とギンジで仕留めたが?」

「どうも、武術家のギンジです」

「ふん、素手でレグスを倒したとは思えねぇな」


ほう、これは面白い。

ニヤっと笑みを浮かべ、口を開こうとしたらケンゾウが先に言う。


「なら一戦やってみるか? お前のような未熟者だと一瞬で終わるぞ?」

「へ~、それは面白い。是非やってみたいねぇ?」


そう言ってギンジを見るケルスとケンゾウ。

目を向けられたギンジは、苦笑いを浮かべて引く。

俺なら受けるのに。

仕方ない、ここは俺がフォローして戦わせよう。

と口を開こうとしたらサブマスが先に言う。


「そんな時間は無い。血の臭いで他の魔物が寄って来る可能性がある。さっさと街に戻るぞ」


くそ、面白そうだったのに。


「チッ、おいロウタ! さっさと街に戻るぞ!!」

「まあ、確かにのんびりは出来ねぇわな」


そう言って全員、周辺を警戒しながら歩いて街へ向かう事に。

その道中。

不機嫌になっているケルスを見てケンゾウが口を開く。


「街に戻ってから勝負すれば良いだろ」

「おっ、それもそうだな。おいあんた、街に戻ったら勝負だ」


そう言ってズカズカ歩いて行くケルス。

言われたギンジは、苦笑いを浮かべて俺を見るので、頷き返す。


「えっ、やるんですか?」

「これも手加減の訓練になる」

「あぁ、なるほど」


手加減というのは、ただ相手を倒す事に比べてかなり難しい技術だ。

力や動きのコントロールが求められるので、良い訓練になる。

まあ、相手が素人や弱すぎると訓練にならないけど。

その面ケルスは、動きでだいたい分かる。

道場に通う門下生でそれなりに戦闘経験もあるようなので、手加減の訓練には丁度良い。



その後、ケンゾウと雑談をしながら歩く事約30分。

林を抜けてようやく道場都市オウレンが見えて来た。


ゲームの時とは大きさも見た目も全然違う。

外壁の高さが約20メートル程あり、所々高い建物の頭が見える。

門と言うかゲートは全長6メートル程で幅が約5メートル程。

しかもゲームの時と違ってツルっとした鉄製のゲートだ。


俺達が近づいて行くとゲートがウィーンと上がっていき、街中が見えた。


「おお……」

「凄いですね」

「ああ」


ゲートから続く通りは、ゲームの時のように広く、両サイドに和風の建物が建ち、所々にビルが建っている。

少し時代が進んでるが、この雰囲気が残ってるのは、なんだかテンションが上がるな。


ゲートに到着するとプロテクターを付け、ライフルと刀を腰にぶら下げてた兵士が2人立っており、何の反応もせずジッとしている。

その間を通って俺達が中に入るとゲートが閉まった。


サブマス達は、何も気にせずそのまま歩いて行くので俺達も後を付いて行き、暫く進むとゲームの時、決闘をした広場に到着。

懐かしい。


「あれ? 闘技台が無い」


以前あった闘技台の広場は、噴水や屋台など憩いの場になっている。


「そんな昔の事を知ってるのか? 闘技台があったのは、300年程前だぞ?」

「今は決闘が禁止になったのか?」

「いや、決闘はあるが殺しは無しだ。殺した場合そいつは捕まる」


平和な街になったんだな。

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