第147話 若者の実戦訓練。

魔物と戦ってる人達の魔力を感知し、ギンジを先に行かせて俺は、のんびり歩いて行く事約5分後。

カーブになってる街道を歩いて行くと前方、約100メートル程先に、戦闘しているのを視認。

空間感知で確かめると、そろそろ戦闘は終了する頃だ。


魔物は、ゴブリンとウルフ系で数は12体。

既に倒れて動かない魔物を居れると全部で22体居る。

街道なのに数が多いな。


なんて思いながら進んでいると、ギンジも参戦して次々と数を減らしていく。

3分も経たない内に魔物を仕留めると、1人が指示を出して他の者が死体の片付けを始め、指示を出していた黒髪の男は、ギンジと並んで立ち、俺が来るのを待つ。

そこへ俺が到着し、挨拶をする。


「どうも、お疲れさん」


戦ってたのは、若い男が3人と女が2人。

全員、黒いズボンに黒い服で、全身にプロテクターを着けて腰には、刀をぶら下げている。

特殊部隊っぽい。

俺の声を聞き指示を出していた黒髪の男が、刀に手を添えながら口を開く。


「ギンジさんに聞きました。この人の師匠だとか?」

「まあ、一応そうだな」

「ですがあなたは、刀を持ってるようですが?」

「はい、僕は武術家ですが師匠は、侍です」

「侍のキジ丸だ。で? 魔物の数が多いけど、街道にはいつもこんな数の魔物が?」

「たまに出ます。だからこうして我々が掃除をするんです」

「君達は、冒険者?」

「これは失礼、俺は『牙天流』道場の『ロウタ』です」

「全員牙天流の人?」

「いえ、全員違う道場の者です」


ロウタの話しによると、道場都市オウレンにある道場に通う者が集まったパーティーで、街道に出る魔物を討伐するのが仕事らしい。

別に道場の指示でしている訳ではなく、道場に通う若い者達が集まり、自然と出来たパーティーとの事。


20年程前から始まり、年齢を重ねると若い世代に譲る事になってるという。

彼らが5代目なんだとさ。

若い者の実戦経験を積ませるため、それぞれの道場も公認してるそうだ。

討伐証明をギルドに提出する事で、金を貰える仕組みだね。


「なるほど、君達みたいなパーティーは他にも?」

「あります。街の周辺や他の街道の見回りなどもやってるので」


そりゃ1パーティーじゃ無理だな。

てっきり特殊部隊かと思ったよ。

ってかもう着物は着てないのか、ちょっと残念。


「オウレンはここから近い?」

「はい、歩いて1時間程です」

「ありがとう。じゃあ……」

「師匠?」

「ん~、魔物が集まって来てるな」

「「っ!?」」

「たぶん血の臭いに釣られて来たんだろ」

「全員、戦闘態勢!!」


片付けをしていた者達が抜刀し、刀を構える。

が、まだ早い。

到着まで約3分程だ。

北東と西側から挟むように、林の中を通って向かって来てるな。

数は……全部で30ぐらいだ。

多いねぇ。


空間感知では、ウルフ系と知らない魔物。

形は、人型だがゴブリンでもオークでもない。

筋肉質な細い身体に、長い耳。

髪は無く、長い手足。


その特徴をロウタに話すと。


「レグス!? それは本当ですか?」

「特徴は間違いない。あと1分もしない内に見えるはず……ほら」


林の中を素早く走るウルフと全長2メートル程ある、レグスと呼ばれる魔物。

全身赤茶色の肌。


「……マナミとシナ! 街に戻ってギルドに報告だ! あとは時間稼ぎだ!」

「分かったわ」

「了解!」


ロウタの指示に従い、長い茶髪を後ろで縛った女の子と金髪ショートヘアの女の子が走り出す。


「俺がぶっ殺してやるよ」

「僕が後ろを!」


青い髪の男の子と赤い髪の男の子がそう言って構える。


「ギンジさん、キジ丸さん、手伝ってもらえますか?」

「そんなにマズい魔物なんですか?」

「レグスだとしたら全員殺されます。ですが、力を合わせれば、街から応援が来るまで持ちこたえられるはず」

「分かりました、僕が突撃し攪乱します。師匠は……」


そんなに強い魔物なのか……全部俺が戦いたいがここは、若い者達に経験を積ませるためにも、あまり手を出さない方が良いかな?


「よし、丁度良い。ギンジ、お前は最低でも10匹は仕留めろ、それが訓練だ。後はロウタ達が仕留めれば良い。実戦は最高の訓練だぞ?」


そう言ってニヤっと笑う。


「えっと、師匠? 助けないんですか?」

「助ける? 実戦経験を積むために来てるんだろ? 丁度良いじゃん。大量の魔物が来てくれたなら、訓練に使うのが常識だろ」

「あなたは手を出さないと?」

「いや、危なくなったら手を出すよ。それまでは見物してる」

「この状況で……もういい。俺達でやるぞ!!」

「「おう!!」」


ギンジは、北東から20メートル程の位置まで来ていた魔物の群れに素早く突っ込み、ウルフを一撃で仕留めるとレグスと言われる魔物に肉薄し、腹に拳を打ち込むと続けて回し蹴りで頭を蹴って吹っ飛ばす。


しかしレグスは、身体を捻って回転し、木に足を着くと蹴ってギンジに突撃し、長い右手を鞭のようにしならせて振り下ろすとギンジが跳んで避け、奴の攻撃が地面に当たると衝撃波が数メートル走りながら土を抉り、小石や土などを周囲に弾き飛ばす。


するとレグスは、地面を蹴って離れた場所に着地したギンジを追いかけるとギンジが、地面を蹴って距離を詰め、拳を胸に打ち込んだ瞬間、レグスが弾丸のように吹っ飛んで行き、動かなくなる。

今のは、俺が教えた溜気を使った攻撃だ。



林からウルフが飛び出し、ロウタに襲い掛かる。

上手く噛み付きを避けながら首を斬り、続くレグスに刀を振り下ろすが避けられ、長い腕がロウタの頭に迫るがギリギリ屈んで避け、腕に向かって斬り上げると腕に当たった瞬間、刀が少しだけ食い込んで止まった。

ロウタはすぐさま刀を引き、後方に跳んで距離を空けると構え直す。


ロウタ達は、魔力を使ってるが制御がまだまだ甘い。

そのせいでレグスに刃が通らないのだ。


「もっと魔力をスムーズに流せ」

「くっ」


他の2人もロウタと似たようなものだな。

なんて思いながら俺に襲い掛かるウルフとレグスの攻撃を躱す。


なるほど、レグスの魔力制御は中々のもんだ。

弱肉強食の世界で生きてる魔物は、いつも生存競争の中で戦ってるから戦闘に関する成長が早いんだろう。


少し数を減らすか。


と、迫るウルフの噛み付きを避けながら腹に拳を打ち込み、溜気で弾くと身体が真っ二つに弾け、レグスの腕による鞭攻撃を避けながら踏み込み、脇差しを抜きざまに振り抜きレグスの首を斬り落とし、前屈みの状態から瞬殺を発動させ、周囲に居る5匹のウルフとレグスを計10匹、斬り殺すと俺の周りに居た魔物は居なくなった。


脇差しを振って血を掃うと納刀し、ロウタ達の戦いを見守る。

頑張れよ~。

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