第145話 職証管理。

俺の話を聞いてレインと教授は、暫く考え込むとレインが先に口を開く。


「キジ丸さん、職業を得たらどうなるん?」

「ん? GFWの時と同じ、職業スキルを得られる。ついでに言えば、魔力を使えるようになるな」

「「っ!?」」


どうやらこの話の意味を理解したようだ。


「キジ丸氏、それはつまり、一般人でも魔力が使えるようになるという事かな?」

「ああ、その代わり、その人には才能が無いと大変な事になる。鑑定か看破は持ってる?」

「あたしは鑑定を持ってるで」

「私もだ」

「人を鑑定したら才能が見れるよな?」


頷く2人。


「ならその才能にあった職業の証を授けて血を一滴垂らせば、その職業に就ける」

「才能が無い職業には就けないのかい?」

「就けるけど成長が遅くなるね」

「なるほど、適正が無いから成長も遅いと……しかし、私とレイン氏だと『魔法使い』と『死霊術師』の職業しか与えられないぞ?」


魔女は魔法使いの上位職だもんな。

だが、その辺りは考えてある。


「俺が他の職業の証を幾つか創って2人に渡しておく、インベントリに入れとけば大丈夫だ」

「なあなあ、その証ってあたしらも使えるん?」

「クラスを最高まで上げてるなら使える。ゲームの時と同じだな」

「クラスアップは? ゲームの時みたいにクエストを受けるのかい?」

「『普通の』クラスアップならスキルレベルを上げて条件を満たせば、証に何をすれば良いのか現れるようになってる」

「普通じゃないのがあんの?」

「まあ、その時になれば分かるよ」


例えば忍者でいう、影忍になるクエストだな。

あれは特別な印が必要だ。

なので証にも何をすれば良いのかは、表示されない。

条件を満たせば表示されるようになってる。

っていうか、忍者の証はばら撒かないけどね。


「女王であるレインには、これをどうするのか決めてほしい、一般人にも職業を与えるのかそれとも、軍と警察の者だけに絞るのか」

「ん~、国民に与えればこれまで以上に、国民は安全に暮らせるやろうけど、犯罪に走る人もおるからなぁ……めちゃ悩むわこれ」

「キジ丸氏、私は誰に与えれば良いんだい?」

「教授は、レインの方針に合わせて与えてくれれば良い」


もしレインだけか教授だけにこのスキルと証を渡せば、ある意味女王とは違う権力が集中してしまう。

なので教授とレインに渡す事にした。


「って訳だ」

「レイン氏なら既に権力を持ってるのでは?」

「そこに職業の証が加われば、また新たな戦争の引き金になりかねないだろ? そのための教授だ」

「ふむ……なら私が証を与えられる事は、まだ公表しない方が良いな」

「何でなん? 公開した方がええんちゃうん?」

「レイン氏だけ公表して人が集まり、これまで以上に権力が集中した場合だけ公表しよう」


あぁ、そうすれば二極化出来るし、他の人達はレインだけに頼る必要が無くなる。


「まあ、レインがこれで何か悪い事をしない限り、大丈夫だろ。ぼったくりとかしたらダメだぞ?」

「いや、そんなんせえへんよ。これで商売しようなんて思ってへんから」

「じゃあ、後は2人でどうするか考えてくれ」

「えっ? キジ丸さんは手伝ってくれへんの?」

「私達にこんな問題を押し付けるのかい?」

「国の事は国のトップに任せるのが一番。俺は一般の侍だ」

「特別顧問やん」

「シュートとレインが勝手にそうしたんだろ? ……まあ、何かあれば連絡してくれ、古代都市から離れてたらリングでも連絡出来るからな。それに教授は、北へ行くんだろ? それまで手伝ってやってくれ」

「まあ、北へ行くのはまだ先になるが」

「とりあえず……これぐらいあれば少しの間は大丈夫だろ?」


テーブルの上に、基本職業の証をズラッと創る。

魔法使いと死霊術師は創ってない。

そして自分の証に血を一滴垂らしてもらい、ステータスを見れるようにするとかなり驚いていた。


その後、職神で2人に職証創造を与えるとレインは【職証創造・魔・死】を取得し、教授は【職証創造・魔】を取得。

すると2人共、スキルを取得した事で作れる証の種類に驚く。


どうやら魔法使い系は、錬金術師の証も作れるらしい。

住人専用の職業にも就けると分かって少し、テンションが上がる。


「じゃあ、後はよろしく!」


そう言って俺は、ハンゾウの分身を出してギンジと野営をしていた場所へ影渡りで戻った。

2人は、他の者も呼んで今後の事を話し合うらしい。

職業に就く人が多くなれば、安全にもなるが問題も増える。

その辺りは、女王にお任せだな。



転移して土の椅子に座り、インベントリから酒を取り出して1口飲むとギンジも対面に座り、口を開く。


「師匠、僕のクラスアップも出来るんですか?」

「ああ、だがここじゃ……いや、待てよ?」

「はい?」


影を召喚する印のある特殊空間を創れば出来るか?

…………出来るな。


「これから影忍になる試練を受ける?」

「今からですか!? ……死ぬ可能性もあるんですよね?」

「あぁ~、ちょっと待ってくれ」


俺は、得た知識の中からどうにか出来ないか情報を引っ張り出し、いろいろ試行錯誤する。

訓練空間に設置すれば、死んでも問題……あるな。

それだと試練にならない。

……いや、ゲームの時みたいにデスペナを設ければ……ギリギリいけそう?


デスペナは、ゲームの時と同じで良いかな?

ステータスの半分を失う。

それぐらいじゃないとバランスが取れないようだ。

クラスアップクエストは、いわば魂の修行のようなもの。

いくらでも死ねる試練だと、修行にならないらしい。


俺はギンジに、ゲームの時のように死んでも復活するがデスペナが有る事を説明する。


「なるほど、ゲームの時と同じですか……そうなるとやっぱり死んだら、人斬りに会うのが遅れますね」

「そうなったら鍛えれば良い。ちなみにクラスアップすれば、確実に今より強くなれるぞ」


HPとMPも増えるからな。

スキルもより成長する。

強くなりたいならクラスアップは、絶対した方が良い。


「……分かりました。受けます」

「分かった。あっ、休んで明日の朝からでも良いぞ?」

「すみません、それでお願いします」


今日はずっと移動だったからね。

心の準備も必要だろうし。


「明日の朝、試練の前に練習するか?」


訓練はしたが、試練の練習はしてない。

やる前に一度試した方が良いだろう。


「練習ですか? どのような?」

「デスペナが無い影との戦い」


本番前の練習だ。


「お願いします」

「よし、じゃあさっさと寝るか」

「はい! ……あの、何を?」


地面に穴を空けて入ろうとすると聞かれたので、寝床だと返す。


「テントとか張るより楽だし、寝やすいぞ?」

「はあ……では、僕も……」


いそいそと穴を空けて入るギンジに、土の中で寝る方法を伝授する。

これで快適な土中睡眠が出来るぞ!

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