第144話 課金アイテムの行方。

狼を仕留めた後、日が沈むまでのんびり歩く間、3回の襲撃に遭遇。

狼とゴブリンのような人型をした青い身体の魔物。

全部ギンジが仕留めたので強さは、よく分からない。


道を進んで小さな川を渡り、日が沈む頃には林の手前に到着。

このまま入っても良いけど夜になるし、林の手前で今日は野営をする事に。


街道から外れて少し広い草の生えていない場所があったので、とりあえずいつもの訓練をし、訓練空間(訓練モードの空間)で分身と戦闘訓練をした後、ギンジとも戦闘訓練を行い、3時間程で訓練が終わると野営の場所へ戻り、椅子とテーブルを土で作ると晩飯を食う。


「どれくらいインベントリに料理を入れてるんですか?」


俺が出したステーキとご飯を食いながら聞いて来るギンジ。


「ん~、1人なら1年分ってところかな?」

「そんなに……あっ、もしかして課金済み?」


頷く俺。

課金してインベントリは無限である。


「僕もやろうと思ったんですけど、流石に高すぎて」


まあ、10万円だもんな。

普通はやらないだろう。

俺も宝くじが当たってなけりゃやってないだろうね。


インベントリが使えるのは、元プレイヤーだからだと思うが現実になった今、その仕組みがよく分からん。

キジ丸の記憶でも『亜空間収納と繋がってる』という認識だ。

亜空間って事は時空属性だよな?

つまり、時空属性を取得する前から時空属性を使ってた事になるけど、それとは別なのか?


何か分かれば無限収納を教えられるんだけど……あっ、課金で『時空の宝玉』を使ったんだった。

あれが無いと無理か。

課金アイテムはこの世界に存在しないのかな?

……あっ。


「この世界にもダンジョンってある?」

「はい、アバッテ王国にもありますよ」

「攻略はされてる?」

「いえ、ゲームの時ならガンガン進めますが現実になれば、死んだら終わりですからね」

「まあ、そりゃそうか」


死んだら終わりのゲームだと、殆どの人はクリア出来ないだろうしな。


「この世界で課金アイテムって見た事ある? 聞いた話でも良いけど」

「ありませんね。あぁ、それでダンジョンですか、確かにダンジョンならありそうですけど、課金アイテムが発見された話は聞かないですね」


うむ、流石に課金アイテムは無いか。

有ったとしても人が見つけられる場所にあるかは、分からないもんね。


ちなみにダンジョン内で見つかったアイテムは、魔道具や金銀財宝ぐらいしか発見されてないらしい。


「ダンジョンは軍が潜るのか?」

「はい、一般人で潜れる人は居ませんから、軍でもせいぜい5階層あたりです。あっ、そう言えば、ダンジョン内の魔物は再生能力を持たないらしいですよ」

「ほう……」


再生能力は地上の魔物のみって事か。

それでも5階層止まりって……魔力を使えないならそんなもんかな?

いずれいろんな人が職業を得たら……。


「あっ」

「何ですか?」

「いや……今何時だっけ?」

「夜の9時26分です」

「教授起きてるかな?」

「スズカさんですか? どうでしょう? あの人不規則な生活をしてるので、連絡してみては? でもここからじゃ流石に繋がりませんね」


教授にも使い魔を渡しとけば良かったな。

試しにリングではなく、スキルの念話を送ってみる。


『おお、キジ丸氏かビックリしたぞ』

『繋がった。今どこに居る?』

『今はカリムス王国の大学に居るが?』

『もう移ったのか?』

『ああ、専用の部屋を頂いたのでゆっくりさせてもらってる』

『じゃあ、すぐには会えないな』

『ん? 会う必要があるなら転移で移動するが? どこが良い?』

『良いのか? ならレインの部屋で』

『待ち合わせに女王の部屋を使うとはな。いきなり行って大丈夫かい?』

『大丈夫、レインにも聞かせたい話だし』

『そうか、では今から転移するよ』

『了解、俺もすぐ転移する』


そう言って念話を終了。

古代都市を挟んでるのに念が届くんだな。

試しにリングでレインに念話を送ってみる。


『こんな時間にどないしたん? 夜のお誘い?』


繋がった。

なぜ?

……まあ、今は良いか。


『今からレインの部屋に行く』

『えっ、夜這い? どないっウヒャッ!?』

『どうした?』


少し間を空けて答える。


『いきなりスズカちゃんが来たからビックリしただけや……なんや、あたしの部屋を待ち合わせ場所にしたん? ホテルにでも行きや。あたしの部屋でナニするつもりや?』


俺はリングを切ってギンジを連れて直接転移すると、ソファに教授とレインが向かい合って座っていた。


「あれ? 返事がこうへんな」

「話があるだけだ」

「ヒャッ!? なんやもう!! ビックリさせんといてや!!」

「すまんすまん」


そう言いながらソファに向かい、空いてるソファに俺とギンジが座る。


「初めまして、師匠の弟子でギンジと申します。元プレイヤーで武術家です」

「どうも、カリムス王国の女王をしてるレインや、よろしく~」

「師匠、いきなり女王の部屋に連れてる来るとは、前もって言って下さい」

「まあ、ここに居るのは、全員元プレイヤーだ。立場なんか気にするな」

「それをキジ丸さんが言うか?」

「まあまあ、それで話ってのは、職業についてなんだが」

「職業?」


レインが首を傾げ、ギンジと教授は黙って聞く体勢になる。

俺は、職証創造スキルの話をし、そのスキルを人に与える事が出来る事を説明した。


「それで、才能ある者に職業の証を授けてほしいんだけど……どうかな?」

「キジ丸氏、そんなスキル、どうやって取得したんだい?」

「それは当然秘密だ。ただしこれは、その専門職の証しか創れないんだよね。俺はどの職業でも作れるけど」

「ん? どういう事? あたしやったら霊源師の証しか創られへんって事かな?」

「霊源師の初期職業って魔法使い?」

「霊源師は、魔法使いと死霊術師の派生職業やね」


うむ、その場合どうなるんだ?

……たぶんどっちも創れるかな?

その職業の系譜の証は創れるはず。


「魔法使いと死霊術師の他には?」


レインの話しによると、魔法使いから魔術師を経て魔導師になり、死霊術師から死霊魔術師から死霊魔導師になると転職出来るらしい。


「なら魔法使いと死霊術師の証を創れるはず」

「魔術師とかは創られへんの?」

「それはクラスアップして成長させれば良い」

「あっ、そっか」


そこで教授が口を開く。


「つまり、私達が辿った最初の職業の証を創れて、魔女になるなら私と同じように成長しないと就けないという訳だな?」

「ああ、そのとおり」


二次職などは、クラスアップして転職すれば成れる。

そこはゲームと同じだ。

いきなり魔術師にはなれません。

ズルは出来ないぞ。


さて、今後人類の在り方が変わるこの話、2人はどうするかな?

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