第138話 おかしな大統領。

シュアンの監視をしてる式紙の横に転移し、高級住宅街の中で3階建ての屋根の上に立つ。

この辺りは、金持ちの家族が住む住宅街のようで、大きな家が並んでいる。

シュアンの家はその中でも大きく、広い敷地に4階建てのぱっと見マンションのような形をしてる家だ。

庭にはプールや子供用の遊具。

良い暮らしをしてるようだな。


空間感知と魔力感知で周囲を探ると、護衛も防犯カメラやセンサーの類も無いようだ。

家族が居るのに不用心だねぇ。

まあ、やりやすいから良いけど。


虫の使い魔を送り込み、中の様子を伺う。

シュアンの家族は、奥さんと子供が1人だけ。

子供は2階にある自分のベッドで寝てるな。


シュアンは風呂から上がったようでバスローブを着て寝室へ向かい、部屋に入るとベッドに近付き、シーツを捲ると裸の奥さんが既に寝転んでいた。


使い魔で観察してるとシュアンは、奥さんと激しくハッスルして1時間程してようやく眠りに入る。

忍者の精神力は凄いね。

いつ行為が終わるのか見ていたが、平常心で居られるとは。

まあ、依頼の最中って事もあるけどな。

これがゲームなら撮影したのに残念だ。



さて、眠りに入ったのでさっそく影に潜り、影渡りでベッドの影に移動し、影から出ようとした瞬間、シュアンが目を覚ましてベッドから降りるとバスローブを着て部屋を出て行く。

トイレか?


シュアンの影に移動し、どこに行くのか確認するが部屋を出た所で立ち止まり、扉を閉めて周囲をキョロキョロ見回す。

何をしてるんだこいつは?


「……誰だ?」


他に誰か居る?

すぐさま空間感知と魔力感知で周囲を探るが、誰も居ない。

勘違いかよ。


「出て来ないつもりか? 狙いは何だ? ……返事も無しか」


シュアンはインベントリから剣を取り出し、周囲を警戒する

……もしかして俺の存在に気付いてる?

隠密を発動してるからどこに居るかはバレていない様子。

よく隠密を発動させてる俺の存在に気付いたな。

流石剣聖ってところか?

このままやりすごしても寝ないだろうし、このままご案内しよう。


魔糸を伸ばし、天井を叩いて音を出すとシュアンが見上げた瞬間、印を発動させ特殊空間へ転移させる。


「っ!? ……何者だ?」


シュアンは剣を抜いて鞘を捨てると剣を両手で持ち、腰を落として構えた。

バスローブを着てるのを忘れるな。

見たくないモノが見えるじゃねぇか。


うむ、このまま姿を現して戦いところだけど、今は任務中。

暗殺が最優先だ。

なので俺は、シュアンの影に入ったまま体内に印を書き、隠密で隠した魔糸を首に巻き付けると印を発動。


その瞬間、シュアンの身体は動かなくなると同時に魔糸で首を斬り落とす、はずだったが魔糸が弾けて消滅。

不動金剛術が効かないとはね。


「そんな小細工が私に効くと思ったか? どこだ? 姿を見せろ!!」


不動金剛術は、なぜ効かなかったんだ?

…………なるほど、アイテムか。

壊れたネックレスが落ちてるのを発見。

おそらく身代わり系のアイテムっぽい。


シュアンはインベントリから指輪を取り出すと、左手の指全てに嵌める。

どんだけ身代わりのアイテムを持ってるんだよ。

でも、これがあるからセキュリティーが甘かったんだな。

馬鹿だねぇ。


「正々堂々と戦ったらどうだ? それとも私が怖いのか?」


安い挑発だな。

なんて思いながら俺は、体内に印を書いて奴の身体に魔糸を巻き付けていく。

戦ってやりたいがまだ後があるんでね。

それに、アイテムで身を固めてるビビリが、調子に乗り過ぎだ。


次の瞬間、魔糸で奴の左手を切断し、続けて不動金剛術で奴の動きを止めると影から出て奴の目の前に姿を現す。

あっ、左腕を落としたので指輪の効果は発動しないぞ。


「っ!?」


目を見開くシュアン。

不動金剛術で喋る事も出来ない。


「アイテムを使って強くなった気でいたのか? 愚かだな」


そう言って奴の首を魔糸で斬り落とした。

指輪ではなくネックレスなら、まだ生きていただろうね。

まあ、それでも始末してたけど。


死体を収納し、シュアンの部屋に戻ると気持ちよさそうに眠る奥さん。

まあまあ綺麗な人だ。

今後は、未亡人として頑張れ。


部屋を漁ろうかと思ったけど奥さんが居るので、止めて最後の標的の下へ転移する。

転移した場所は、大きな一軒家で警備が厳重な豪邸。

3階建ての白い家で庭にはプールがあり、一部は日本庭園っぽく造られている。


隣の豪邸の屋根に転移した俺は、体勢を低くして周囲を探りながら目の前に居る式紙の鳥に、周囲の監視の指示を出し、大統領の家の屋根に飛んで行く式紙を見送り、空間感知と魔力感知で周囲を調べると、おかしな事に気付く。


家の中には大統領とお手伝いさんが5名。

4名の護衛が銃を持ちながら家の中をウロウロ見張り、大統領の奥さんと思われる女が1人寝室のベッドで寝ている。

子供は居ないようだな。


それよりもあいつは何をやってる?

奥さんとは違う部屋の中で大統領は、ベッドに腰掛けてジーっとしてるのだ。

パジャマ姿で微動だにしない。

何かの罠?

いや、俺が来る事は誰にも知られていないはず。

じゃあ……あれがいつもの行動?

ベッドに座って人形のように動かないって、気持ち悪いんですけど?

本当に人形だったりして……まさかな。


うむ、これは困ったな。

寝る気配がまったく無いぞ?

……仕方ない。

起きたまま転移させるか。

声を出されないようにと他に気付かれないようにしないと。


影に潜るとベッドの影に影渡りで移動し、体内に印を書いて転移させようとした瞬間、大統領がスッと立ち上がり、周囲をキョロキョロ見回す。

もしかして大統領もプレイヤーなのか?


無表情で部屋の中を見回す大統領。

こいつ……マジで人形っぽいな。

もしかして誰かに操られてるのかも?

まさか偽者?


俺はもう一度空間感知で敷地内を探るが、大統領はこいつ以外居ない。

別の所に監禁されてる可能性もあるけど……ん?


「ん?」


大統領はいきなり人間らしい動きで周囲を見回し、首を傾げるとベッドに戻って横になる。

えっ、まさかの夢遊病?

……まあ良いか。


印を発動させ大統領を特殊空間へ移動させると突然、目を開けて物凄い勢いで跳んで立ち上がり、周囲を見回す。


マジで何者なんだよこいつ。

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