第137話 完全暗殺開始。
魔糸で街中をターザンしながら偶に建物の壁を走り、標的が乗った車を追いかけて約10分後、ようやく標的が家に到着。
奴の家の前に建つ一軒家の屋根にしゃがんで様子を伺う。
この辺りは、大きな家が多いな。
奴の家は、広い敷地に建つ3階建ての大きな一軒家。
庭にはプールがあり、バーベキューをするための設備まである。
門を入ってすぐの所は、車が4台は駐車出来る程のスペースがあり、スポーツカーのようなカッコいい車まである。
良い暮らしをしてそうだ。
車が門を潜って中に入り、玄関前に車が停まるとチェンが降りて家に入る。
周囲を魔力感知と空間感知で確かめると家の周りには見張りが6名、家の中にも銃を持った警備が4名、その他にお手伝いの女性が4名。
どうやら結婚はしてないようだな。
式紙の鳥が俺の肩に止まると外の監視を思念で指示を出し、奴の家の屋根へ飛ばす。
俺は空間感知で奴の動きを確認しながら小さな使い魔を家の中に送り込み、奴が1人になるのを待つ。
奴は家に入ると上着と鞄をお手伝いさんに渡し、ダイニングテーブルの席に着いて休憩すると、食事が運ばれて来たのでゆっくり食事を始めた。
食事を終えた奴は風呂に入り、出て来るとリビングでテレビを見ながらワインを飲み、少しすると2階の寝室へ行き扉を閉める前、お手伝いさんに「朝まで誰も通すな」と言って扉を閉め、鍵を掛ける。
そのまますぐ寝るのかと思ったら奴は、ベッドに腰掛けスマホで誰かに連絡をし始めた。
「そっちの様子はどうだ? ……分かった。準備ができ次第動け……大丈夫だ。この国の奴らは馬鹿だから気付かないさ。ああ、裏から手を回しておく。明日は女と会う約束があるんで連絡はするなよ……国の為に」
そう言ってスマホを切ると部屋の明かりを消し、ベッドで眠りに就く。
さて、こいつには行方不明になってもらおうかね。
と、影に潜ると奴の部屋に影渡りで移動し、ベッドの影から出て奴が目を瞑って寝ている横に立つ。
隠密を発動させてる俺に気付く事なく、体内で印を書いて発動させると眠りに入ろうとしてる奴を特殊空間へご案内する。
「ん? なんだ?」
ベッドから急に硬い地面になったら気付くよね?
「っ!? ここは……夢か?」
俺は奴の首に隠密で隠した魔糸を巻き付け、いつでも始末出来るようにすると奴の影から出て背後に立ち、耳元に近付いて告げる。
「死ね」
「っ!?」
振り向こうとした奴は、驚いた表情をしたままの頭が身体から離れ、首から血を噴き出しならがドサッと倒れ、頭部が地面に落ちると少し転がって止まった。
うむ、物凄くあっけない。
まあ、完全暗殺だしこんなもんか。
ちょっと戦ってみたかったが、暗殺だしな。
先程の電話は、裏で何かやってるようだったけど、アマネに任せておけば良いか。
俺は暗殺だけすれば良い。
死体を収納し、血をクリーンで綺麗にすると奴の部屋に戻り、次の標的の下へ向かおうかと思ったけど、部屋の中を少し物色する。
すると、高級そうなワインを発見したので収納。
最後に空間感知で部屋の中をくまなく調べると、本棚の裏に金庫を発見。
本棚にびっしり入ってる1冊の本が、仕掛けのスイッチになってるようで手前に倒すと『カチ』と鳴って本棚が扉のように少し手間へ開く。
手を掛けて引くと重さは無く、軽く開くと壁に40センチ程の正方形の形をした金庫が壁に埋まっていた。
さて、どうやって開けよう。
ダイヤル式だしなぁ。
鍵も付いてる。
まあ、やってみるか。
俺は空間感知で中を見ながらダイヤルを回し、ロックが1つ開いたのを確認すると同じ要領で続けて、4枚のロックを外す。
空間感知最高!
そして鍵穴に魔糸を突っ込み、鍵の形にすると回して解錠。
俺って盗みも簡単に出来るんだな。
どんな金庫でも開けられそう。
金庫を開けると中は、上下に分かれた造りで上の段には、ファイルや分厚い封筒など、資料のような物が入っており、下の段には大量の札束が入っていた。
何が何か分からないので全部収納する。
当然金も頂いたぞ。
中身は後で調べよう。
金庫を閉めて本棚を元の位置に戻すと影に潜り、次の標的を見張ってる式紙の下へ転移。
次の標的はフェイだ。
シュアンは家族が居て現在家族と食事をしてるので、1人になるのはまだ時間が掛かるだろうと、先にフェイを始末する。
大統領の秘書をしているフェイは、高層マンションの上層に1人で住んでおり、現在帰って来てリビングでテレビを見ながらのんびり食事をしてる最中だ。
高層マンションの隣に建つビルの屋上に転移した俺は、空間感知と魔力感知でマンションを調べると、とんでもない事が判明。
なんだこのマンション。
セキュリティーが半端ない。
センサーのような物があっちこっちに付いてるし、監視カメラも大量で死角がないぞ。
護衛が居ないと思ったら、このマンション自体が護衛って事か。
まあ、部屋の中にはカメラは無いので問題無いけど。
だが使い魔を送り込むとバレる可能性があるので、ここから空間感知で監視するしかないな。
するとフェイは、テレビを見て大笑いをしてる。
秘書をやってる時はお淑やかな印象だったが、プライベートはだいたいこんなもんかと納得。
それから1時間程してようやくリビングのソファでそのまま横になり、眠りに就いた事を確認し、影に潜るとフェイの影に影渡りで移動。
影から出るとソファの上で寝息を立てて寝ているフェイを、特殊空間へご案内する。
ちなみになぜすぐ攫わなかったのかというと、起きてる間に誰かと連絡を取る可能性があったからだ。
なので寝るまで待っていた。
特殊空間へ転移させたが酒を飲んでたからなのか、まったく起きる気配が無い。
……まあ、暗殺だから良いんだけど。
簡単すぎてつまらん。
かといって態々起こして戦うのも、暗殺としてどうなのかという葛藤がある。
数秒悩んだ結果。
このまま始末する事にした。
夢を見ながら死ねるならまだ良い方だろう。
もっと苦しめて殺しても良かったんだがな。
なんて思いながら直刀で寝ているフェイの首を斬り落とそうとした瞬間、魔法陣が現れて何か飛び出し、直刀を弾かれたのですぐさま跳んで距離を空ける。
すると目の前に、軽トラ程ある黒い大きなトラが降り立ち、怒りの形相を浮かべたまま牙を剝き出しにし、唸りながら威嚇。
たしかフェイは、召喚魔導師だったか。
って事は危なくなったら自動で発動する召喚術かな?
それとも、主人の危機に勝手に現れた可能性もあるね。
フェイはまだ寝たままだな。
じっくり戦いたいけど、今回は暗殺なのですぐ終わらせる事にする。
直刀を持った状態で俺は、技を発動。
影明流忍法・
次の瞬間には、黒いトラの身体が6等分に切り分けられ、光の粒子になって消滅。
瞬影殺は、瞬殺と瞬影を合わせた技だ。
一振りで五回の斬撃。
これを防ぐには、同じ速さで動けないと無理だろう。
直刀を持ってフェイに近付き、もう一度振り下ろすと今度は、すんなり首を斬り落とした。
流石にもう一回は出なかったか。
死体を収納し、フェイの部屋に戻ると同じように空間感知で調べると、ワインとチーズがあったので収納。
金庫も変な資料も無いようで、影に潜ると次の標的の下へ転移する。
式紙によるとシュアンは、現在風呂に入ってるらしい。
家族が居るなら寝静まるまで待つしかないかな。
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