第136話 東の国。
道場を後にした俺達は、レバックの運転でホテルへ戻る。
その車内でレバックに、仁皇国の東はどうなっているのか聞くと。
「首都トウリンから東に車で2日程行くと、セイリュウ砦があって更に東へ行くと『ボルケン地方』があるな。元は王国で今は仁皇国の一部だが、その東は海だけだったはず」
「何とかの里っていうのは、聞いた事無い?」
「里? いや無いなぁ」
影の里は無いのか。
サスケさん達は来てないのかな?
それとも別の場所?
「そのボルケンってどんなところ?」
ゲームには無かった国だ。
「ボルケンは、トウリンよりかなり古い街並みばかりで、爺さん達によると昔の仁皇国みたいな国だって言ってたな」
仁の国みたいな街並みって事は、和風だよな?
ボルケンも仁の国に関係する国か?
でも王国って言ってたし、元からこの世界にある国かも?
ただ和風の街並みってのが気になる。
依頼が終わったら行ってみようかな。
その後、ホテルに到着してレバックと別れるとシュートと俺の部屋に戻り、今後どうするのか話し合う。
シュートの身分証は明日貰える事になってるし、シュートがどう動くのか。
「シュートはどうする?」
「俺は情報を集める」
「何の?」
「帝国が無いならクランのメンバーは、この国か北の国に居るはず。あいつらの事だ、何か目立つ事をしてると思うんだよな」
「アルティメットって戦闘専門のクランだよな?」
「いや、生産もしてるし店もやってたぞ。一部のメンバーだけだが」
「それなら店を探してみれば良いんじゃないか? ちなみに何を売ってた?」
「武具だな」
「あぁ、それなら冒険者が買うかもしれないから明日ギルドで聞いてみたら何か分かるかも?」
そう言いながらデパートで見た武具店を思い出す。
「そうだな。ギルドで聞いてみるか、キジ丸はどうするんだ?」
「そうだなぁ~……」
今晩暗殺して朝までには終わるだろうし、実験と研究かな?
「依頼があるからそれを終わらせてから、いろいろ実験だな」
「実験……俺は数日こっちで情報を集めてからあっちへ帰る」
「このまま探しには行かないんだな」
「レインとも約束したし、すぐ見つかるとは思ってねぇよ」
「じゃあ後は、別行動という事で」
「おう、何かあれば連絡する」
そう言ってシュートは部屋に戻ったので俺は、さっそく式紙の鳥と感覚共有し、標的がどんな様子か教えてもらう。
するとイメージが伝わってくる。
分身や使い魔と違って式紙は、自我があるから監視にピッタリだな。
式紙によると現在標的は、全員仁皇堂で仕事をしてるらしい。これまでの行動を式紙に教えてもらい、姿を消してもすぐバレない位置を探す。
「ん~……」
どいつもこいつも隙が無いな。
……いや、家に帰ってからなら大丈夫か。
護衛や警備は居るみたいだが、自室に入ったら朝まで誰も来ない。
客が来たらその限りじゃないけど、狙うとしたら家に帰ってからだね。
俺は感覚共有を切ってお茶を飲む。
式紙には標的が家に帰ったら連絡するように指示を出してある。
それまでのんびりさせてもらおう。
少しするとギンジから念話が届く。
『師匠、今良いですか?』
『どうした? 何か分かった?』
『リュウゲンについては、北へ向かった事しか分かりませんでした』
『じゃあ、ギンジはこのまま北へ追うか?』
『いえ、まだ弱いのでもっと鍛えてからですね』
『分かった。依頼が終わったら訓練しようか』
『はい! あっ、それから道場都市オウレンについてですが』
『おっ、何か分かった?』
ギンジの話しによるとオウレンは、ここから北西に車で約3日の位置にあるそうで、今でもかなりの数の道場があるらしい。
『その中でも、理源流というのは、かなり強いらしいです』
ソウライさんの道場!
理源流が残ってるって事は、ソウライさんかキテツがこの世界に来てる。
もしくは来ていた。
『現当主が誰か分かるか?』
『いえ、そこまでは……それとオウレンには現在、プレイヤーも結構居るようです』
『それってどこ情報?』
『街で見つけたプレイヤーからの情報です』
トウリンにも居るんだ。
まあ、当然か。
『その人の話しだと、この国がもうすぐ終わるんじゃないかって言ってましたね』
『あぁ、移民問題か?』
『はい、その人いわくですが裏では、レジスタンスが既に出来てるそうです。僕も誘われました』
レジスタンスか、そりゃ今の政府なら出来るだろうなぁ。
政府の人間を全員始末する気かも?
まあ、依頼を達成したら後は、アマネが何とかするって言ってたし、問題無いだろ。
『あっ、ちなみにですが、次の大統領選挙が来月行われるらしいです』
『へ~、って俺達には関係ない話だな』
ん?
そう言えばアマネが一週間以内に暗殺を完遂してほしいって言ってたな。
その選挙が関係してるのかも?
『引き続き情報収集を頼む、あっ、東にあるボルケン地方の情報も探ってくれる?』
『ボルケン? 確か仁の国みたいな所ですよね?』
『知ってるのか?』
『はい、情報収集する過程でその話も聞きました。何でも、大昔からある国で昔、仁皇国に戦争を仕掛け敗れた国だとか、ですが、敗れた後もボルケンは、仁皇と交渉して支配はされなかったと聞いてます。かなり小さい国だったらしいですよ?』
『小さい国なら負けて納得だな』
『いえ、それがボルケンは、かなり強かったらしいです。仁皇国側にも多大な被害があったとか』
小さい国なのにスゲーな。
これは益々気になる。
『じゃあ、もっと詳しい情報を頼む』
『分かりました』
そう言って念話を終了し、標的が家に帰るまでのんびり過ごす。
そうして数時間後、標的が順番に帰路につきだしたので忍換装し忍者になると、まず初めに狙う標的の近くへ転移する。
ビルの屋上に止まっている式紙の背後に転移すると式紙は、バサバサと飛んで俺の肩に乗った。
「お疲れ、ありがとうな」
すると頭を俺の顔にこすり付ける鳥。
可愛い。
なんて思いながら見下ろすと、夜の街を走る車を見る。
あの車にチェンが乗ってるんだな。
他の標的は……もうすぐしたら帰りそうだ。
その前にチェンを始末しよう。
俺はビルの屋上から式紙の鳥を羽ばたかせると同時に倒れるように飛び降り、物凄い速さで落下していく途中で右手から魔糸を出し、ビルに張り付けるとターザンのようにして車を追いかける。
一度はやってみたかったクモ男の真似!!
最高に気持ち良い!!
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