第130話 道場見学。

食堂で飯を食った後、車で仁皇流の道場へと向かう。

あっ、飯も酒も美味かったよ。

酒は辛口の日本酒みたいでかなり美味かったので、瓶で1本買わせて頂きました。


30分程して大きな門の前に到着。

武家の立派な門を一回り大きくしたような和風の門。

数百メートル続く漆喰っぽい白い壁。

壁の高さは約5メートル。

敷地は約東京ドーム1.5個分程の広さがあるらしい。


門の前に停まって少しすると門が開き、藍色の着物に黒い袴を履いた若い男が出て来た。


「見学の方ですね?」

「はい」

「どうぞ、そのまま入って右手に駐車場があるのでそこに停めてください」

「ありがとうございます」


レバックがそう言ってゆっくり走らせ、言われたとおりの所に車を停める。

地面は白い砂利で、他には一台も車は無い。

見学は俺達だけかな?


門から石畳の道がまっすぐ伸びており、右手には6台程止められる駐車場とその奥は、小さな林のようになってる。

左手には、和風建築の2階建てが数軒建ち並び、駐車場から石畳を進むと右手には立派な瓦屋根の御堂のような建物が1つ。

左は小さな林があり、更に進んで木々の間を抜けるとそこには、和風のお城が建っていた。


「城だ」

「仁の国にもあったな」


あぁ、仁の国で王が居た城か。

って事は、ここに仁皇が?

仁皇流の道場じゃなくて仁皇の敷地?


城の手前で左へ続く石畳の道を進むと、80メートル程先に大きな和風の建物が、正面と右手に2つ。

あれが道場かな?


正面奥が2階建てで幅約70メートル。

右手の建物は1階建てで幅は正面の建物と同じくらいだ。

すると右手の建物の前で止まり、開いたままの両扉から中が見える。


「おお、広い」

「こんな広い道場は初めて見たな」


奥行きが100メートルはある。

左右の端に幅約20メートルの範囲で畳が敷かれ、真ん中は板張りになっていた。

畳の上では何十人もの人が並んで正座し、瞑想をしてるような感じだ。

板張りの方では、何十人もの人が木刀を持って素振りをしたり打ち合いの稽古をしている。


靴を脱いで案内の人に付いて中に入った所で立ち止まり、並んで立って見回す。


「あの、何人居るんですか?」

「今日は、総勢115名の門下生が鍛錬を行ってます」

「あっちの道場でも?」

「はい、こうして打ち合いや素振り、畳の上では神気を活性化させる稽古を行ってます」


なるほど、瞑想はマナを使って核を破り、魔力を使えるようにしてるのか。


「どれくらいで覚醒者に?」

「おや? あの稽古で覚醒者になるとよく分かりましたね?」


そう言って鋭い目つきになる。


「神気で核を破って魔力を使えるようにするんですよね?」

「それをどこで?」

「いや、俺も覚醒者なので神気を活性化させてると言えば、分かりますよ」

「っ!? 既に覚醒者とは気付きませんでした」

「ちなみにこっちの男も覚醒者です。あっ、自己紹介がまだでしたね。俺は侍のキジ丸です」

「魔法剣士のシュートです」

「キジ丸殿にシュート殿、あっ、私は『ジンク』と言います。覚醒者になられてどれくらい?」

「俺は約100年以上だな」

「100年!? 相当な腕のようですね。キジ丸殿は?」


俺はどれくらいだろ?

ゲームの時から入れて……約2年くらい?

適当で良いか。


「2年くらいですね」

「でしたら私と同じくらいですね。そちらの方は……」

「俺は特殊警備部の一般人ですよ」


レバックが苦笑いを浮かべて言うとジンクは、ニッコリ笑って頭を下げる。

ちなみにジンクの見た目は、茶髪で整った顔をしており、年齢はたぶん20代前半だ。


「ジンク殿は、この道場は長いんですか?」

「はい、生まれて物心が付いた頃には、木刀を振らされてました」

「もしかして仁皇流の血筋の方かな?」

「血筋と言いますか、両親がどちらも師範代をしておりまして」

「あぁ、それで自然と小さい頃から」


頷くジンク。

エリートじゃん。


「仁皇流に入るためには試験が必要と聞いた事があるんですが、今も?」

「はい、あります」


ジンクの話しによると試験は、実力は二の次で重要なのは人格でその次に出身らしい。

言葉遣いや態度も見られるとの事。


「俺達にそんな細かい事言って良いのか?」


シュートが心配して聞くと。


「はい、お二人がもし受けるなら文句なしで合格ですから」

「なぜ?」

「言葉遣いも丁寧で、人格的にも問題ありません」

「俺はともかくシュートはどうだろう?」

「それを言うならキジ丸だろ。訓練狂のくせに」

「訓練狂?」

「訓練は大事だからな」

「俺は大丈夫なのか?」


レバックの問いにジンクは「公務員の方は入れませんので」と答えると、肩を落とすレバック。


「ん? あの子、かなり筋が良いな」


稽古風景を見ながら話してるとシュートがそんな事言うので、視線の先を追うと薄いピンク色の長い髪を後ろで縛ってる女の子が木刀を振っていた。


「……確かに、筋は良い」


身体のブレも無く、ちゃんと身体で振ってる。

まだ10代っぽいけど、相当鍛えられてるな。


「ありがとうございます」


ジンクがいきなりお礼を言うので、シュートと2人で首を傾げる。


「あの子は妹のレンカです」

「へ~、妹も仁皇流なんですね」

「まあ、両親が師範代なら自然とそうなるだろうな」


それにしても……師範代っぽい人が居ない。

門下生の訓練を見なくて良いのか?

せっかく師範代の動きを見れるかと思ったのに。


「あの、師範代は?」

「師範代はあちらの道場で、上級の者を見ています」


それで居なかったのか。


「では、少しだけあちらも見学してみますか?」

「良いんですか?」

「はい、見学する許可は頂いてますから」


よしよし、師範代の戦いが見れるチャンス!

もしくは、威圧を放ってあちらから勝負を持ち掛けてもらうか、楽しみだな!


人格的に問題があるんじゃないかって?

大丈夫、仁の侍とはそういう人種のはず!

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