第129話 現在の治安。

街並みに驚いたシュートを連れ、レバックの会社に寄ってレインの訪問が1月後と伝え、身分証の手配を済ませるとホテルへ行き、俺の隣の部屋、シズキが入っていた部屋を取るとシュートが冒険者ギルドに登録したいというので行く事に。


シズキの時と同じようにシュートと俺も登録を済ませ、現在レバックの運転で街中をドライブ中。


「パッと見るとマジで日本だな」

「だよな? まあ、プレイヤーが関わってるんだろうけど、ここまで似せるとはね」

「政府にプレイヤーが居るんだろ」


確かに居る。

チャルドム共和国の奴が。

日本のプレイヤーも居るのかな?


後部座席でシュートとそんな話をしてると車が急に停まる。

信号かと思ったがどうやら違うようだ。

道路の50メートル程先に人だかりが出来ていた。


「あれは?」

「たぶん住民だ……っ!? 悪い、ちょっと待っててくれ」

「どうした?」

「殺しだ」


レバックはちょっと走らせて近づくと、人だかりから10メートル程離れた場所で車を停め、エンジンを切らず車を降りて近づいて行く。

シュートと顔を見合わせ、待つように言われたので同時に背もたれにもたれ掛かり、人だかりを眺める。


「なあキジ丸」

「ん?」

「あれ、なにやってると思う?」

「……3人、死んでるな」


空間感知と魔力感知で調べると分かった。


「殺人事件か」


しかし、どうも妙だ。

倒れてる3人を囲むように人だかりが出来てるが、誰一人近づいてない。

普通状態を確認する人が1人ぐらい居ると思うんだけど。

だれ1人近づこうとせず見てるだけ。


すると少ししてレバックが戻って来ると運転席に乗り込み、振り向いて話し始める。


「悪い待たせた」

「殺人事件だろ? 大丈夫か?」


シュートの問いに少し驚いた表情をしながら苦笑いを浮かべ、人だかりを見て言う。


「まあ、殺人事件と言えばそうなんだが、ありゃ事故として片づけられるな」

「隠蔽か?」


俺の問いに首を横に振る。


「いや、証拠が何も見つからないだろう」

「あんなに人が居て目撃者も居ないと?」

「ああ、死んでたのは移民の3人で殺したのはおそらく……あの中に居る『人達』だ」


なるほど、政府が何もしないから国民が動いたって訳ね。

下手したらあそこに居る全員で殺したのかも?

まあ、移民が増えて治安が悪くなると、自分達で治安を守るためにはこうなるよな。

警察も証拠が無いので、住民の逮捕も出来ない。

移民が多いと言っても国民に比べたら圧倒的に数は少ないし、移民が調子に乗り過ぎたんだろ。

俺なら死体も発見出来ないように始末するけど。



レバックが車を走らせ、人だかりの横を通り過ぎ、少し走ると対向車線からパトカーが3台すれ違う。

レバックが通報したのかな?


その後、暫く走ってると道路沿いに『移民街』という看板が見えた。

レバックに聞くとあの看板の先に住んでるのは、全員移民らしい。

かなり治安が悪く、元々住んでいた住民は、全員他に移ったとの事。

その後、勝手に移民があの看板を掲げたという。

するとシュートが。


「政府は何も言わないのか?」

「完全に放置だな。警察も上から手出しするなと言われてるらしい」


上が外人だもんね。

そりゃそうなる。

このまま行けばこの国は『外人の国』になるだろう。

と言っても、暗殺すればそれも終わりだけどな。


レバックの案内で街中を見て回り、昼になったので飯屋に入って昼食を食べる事にし、オシャレなカフェのような店に入った。

席に案内されてメニューを見ると、どうやらイタリアン系らしい。


「おっ、ビールがあるじゃねぇか、俺はビールとこれはなんだ?」

「あぁ、それは煮込んだ肉料理だ」

「じゃあこれとパンとビールで」


うむ、俺は……。


「この『ロックバット』ていう酒とピザで」

「かなり強い酒だぞ?」

「問題無い」


レバックが店員を呼んで注文し、料理が来るまでの間、この後の見学について聞くとシュートが。


「見学って何の見学だ?」

「仁皇流の道場を見学するんだ。シュートも行くか?」

「仁皇流って言えば、仁の国で最強の流派だったよな?」

「そう、その道場の見学が出来るらしい」


ゲームの時は、部外者は入れないし、門下生になるにはかなり厳しい試験があったらしいからな。

ちなみに俺は、受けてない。


「マジか、絶対俺も行くぞ」

「だよな? 気になるよな?」

「ああ、どんな強い奴が居るのか楽しみだ」

「何か気を付ける事は?」

「見学は、案内係が付くから従っていれば問題無い」

「技を見れたりするのか?」


シュートの問に頷くレバック。


「門下生が稽古してる風景を見学できるから、見れると思う」

「師範代が戦ってるとこ見てぇな」

「くれぐれも、勝負を挑まないようにしろよ?」


レバックの言葉に俺とシュートはニヤっと笑う。


「向こうが言って来たら受けても良いんだよな?」

「俺も当然受けるぞ」

「いや、見学しに来てる者に勝負は挑まないだろ」


フッフッフッフッ、甘いなレバック。

強さを追求する者にとって目の前に強い奴が居れば、自然と戦いたくなるものなのだ。


「師範代は全員覚醒者だよな?」

「ああ、そう聞いてる」

「実際見た事は無いのか」

「1人だけ、見学した時に見た事がある。他の道場の人と試合をしていたが、動きがまったく見えなかった」


魔力が使える人なら強化してるだろうし、魔力が使えない人からしたら別次元だろう。

なんて考えてるとシュートが言う。


「道場破りとか居るのか?」

「ここ数年は増えたらしい」

「それはもしや移民?」


俺の言葉に頷くと続けて話す。


「小さい道場は、移民の門下生も受け入れてるからな。ただ仁皇流は、決して移民の門下生は取らない」


そりゃ仁皇国最強の流派だからね。

他国に流れる事を考えたら当然の処置だろ。


「で、道場破りをして技術を盗もうと?」

「どうだろうな? 勝ったら道場に入れろとかじゃないか?」


まあ勝てないだろうけど、移民ってバカなの?

ちなみに強い道場破りは居たのか聞くと、一応覚醒者が居たらしいが誰も勝てなかったらしい。


仁皇流の師範代は強いからな。

ゲームの時に戦ったオウカだっけ?

今の時代に居るかは分からんが、居たら是非また戦ってみたいね。

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